屋敷に住まうもの
「ここかー」
森を進み、俺達は調査する屋敷に来た。
流石に長い間放置されただけあって壁もボロボロで草が所々に絡まっている。
「何か不気味ですね。何か出そう」
「何か出るから誰も帰ってこないんだろ。んじゃ、ごめんくださーい!」
俺は屋敷のドアをバンッと勢いよく開けて中に入った。
続けてガネン、クラカ、数名不安な様子の生徒達が中に入った。
「中暗いねー」
「明かりは点かないだろうな。さて、何処から見るか」
この屋敷は二階まである。
結構広いし、調べるんならまず、誰も帰ってこない原因から調べた方が良いかもな。
「なんかこういう所ってさ、物語とかだと閉じ込められるっていうのがよくあるよね」
「ちょっとソシュ、そういうこと言わな――」
バタン!!
突然ドアが閉まり、皆は一斉に視線を向けた。
「……風だよー風。私のせいじゃないって」
ソシュは焦りながらドアノブを握ると力強く引くが、ドアはピクリとも動かない。
次に思いっきり押すが、勿論一ミリも動かない。
「多分無理だ。何処かに原因があるはずだ。皆で探すぞ」
「でもガクラさん、何処を探すんですか? この屋敷広いですから、時間かかると思います……よ……」
天井を見上げたセーユの顔が青責めている。
俺達も天井を見上げると、女の子の人形が天井をギッシリと埋め尽くしていた。
『アソボ……アソボ……』
何だ、この急なホラー展開。
『アソボ……アソボ……アソボ!!』
「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」
人形が一斉に振ってきて、俺達はその場から走った。
――――――――――――――――――――
「ハァー、何だったんだあの人形は?」
人形から逃げてきたガネンは、シフールと一緒に屋敷の廊下にいた。
「どうしますか?」
「ずっとここで誰かを待つわけにもいかないし、先を進んでみよう」
「はい」
二人は暗い屋敷の廊下を進んだ。
ボロボロのため床が軋む音が響く。
「所々穴が開いて歩きづらいです」
「ああ、気を付けて進もう」
するとガネンは何かに気付き、シフールの肩を掴んで引き寄せた。
「きゃっ!?」
次の瞬間、シフールのいた床が崩れて穴が開いた。
「大丈夫か?」
「は、はい」
「そうか。じゃあ行こう」
シフールは顔を赤くしながら早く鼓動する胸を押さえてガネンの後ろを進む。
「何なんだよこれ!?」
ガネンは昨日出来た剣で、廊下中に張り巡らされている蜘蛛の巣を振り払いながら進んだ。
「う~、絡まってベトベトします」
シフールは嫌がりながら、蜘蛛の糸を払いながらついて行く。
「なぁ、いくら長い間放置されたからってこんなデッカい巣出来るか?」
「いえ、普通の蜘蛛では出来ないと思います」
「だよな。これって……ん?」
ガネンは廊下の奥に、二階に通じる階段を見つけた。
「階段ですね」
「特に何もなかったし、行こう」
二人は階段に向かうと、階段の方から何やらドタバタと音が聞こえた。
「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」
悲鳴が聞こえると、セーユ、ソシュ、イセナ、モリンが階段から転がり落ちてきた。
「ちょっ、大丈夫か?」
「痛ててて。あっ、ガネン君!! 良かったーまともに戦える人と合流出来て」
「ん? どういう――」
「うわぁー、来たー!」
モリンが階段の上を見て叫ぶと、四人は慌ててガネンの後ろに隠れた。
すると階段の上から、何かが勢いよく飛び下りてきた。
それは、二本の前脚が鎌状になっている三メートル程ある巨大な蜘蛛だ。
「何だアレ!?」
「あれは……死神蜘蛛です!!」
死神……それを聞いたガネンは納得した。
骸骨のような顔と二本の鎌はまさしく死神のようだ。
「コイツを倒さないと先は進めないな」
「大丈夫ですか? 死神蜘蛛は三級に指定されている魔物です」
「やってみるだけやってみるさ」
ガネンは剣を持って死神蜘蛛に向かった。
死神蜘蛛は右脚の鎌をガネンに向かって振り下ろすと、ガネンは剣でガードするが、死神蜘蛛はすぐに左脚の鎌を振ってきた。
「気を付けてください! 死神蜘蛛の鎌には毒が!」
「毒か。それは危ないな!」
ガネンは右脚の鎌を弾くと、続けて左脚の鎌を弾いた。
弾かれて後退した死神蜘蛛は口から糸を吐いて、ガネンの剣に巻き付きガネンを引き寄せる。
「うおぉ!?」
死神蜘蛛は右脚の鎌で攻撃すると、ガネンは当たる前に糸が巻かれた剣を投げると、死神蜘蛛の顔に刺さって動きが止まった。
すぐさま剣を抜いて、ガネンは鎌のある脚を剣で斬り落とし、鎌は床に刺さった。
そしてガネンはジャンプして、死神蜘蛛の背中を斬った。
強い一撃を入れられた死神蜘蛛は倒れると、少しして動かなくなった。
ガネンは動かなくなった死神蜘蛛を剣でチョンチョンと突いた。
「よし、大丈夫」
シフール達は倒れた死神蜘蛛を見ながらガネンの元に行く。
「凄いですね。三級の魔物を一撃で」
「良かったー。皆を探してたら襲われちゃって」
「他にもまだいるかもしれないし行こう」
ガネンを先頭にして、六人は二階に上がると周囲を見て警戒した。
「大丈夫そうだね」
ガネンの言葉で、後ろを歩いていた他の五人も二階に上った。
「蜘蛛の巣の量からして、さっきの蜘蛛はまだいると思う」
その場からでも見える多くの巣に、ガネンは先ほどの死神蜘蛛がまだいることを注意して少し進むと、真っ直ぐと左に分かれた廊下に遭遇した。
「どっち進めばいいんだ? セーユ達はどっちから来た?」
「確か私たちは……真っ直ぐね」
「真っ直ぐか。じゃあ左に――」
ガネンが左の廊下の方を見ると、奥の方から何かが壁にぶつかる音が聞こえた。
その音は鳴り続け、どんどん近づいてくる。
「な、何の音?」
「さぁ。でもさっきの蜘蛛とは違う気が……」
すると何かがガネン達の目の前をすごい勢いで通過し、近くの壁に激突した。
ぶつかったのは一メートルぐらいの大きさの死神蜘蛛だ。
「これって?」
「死神蜘蛛の幼体ですね」
壁に激突した幼体は、足がピクピクと動くと、やがて動かなくなった。
「あれ? お前等」
幼体が飛んできた方向から、ガクラが歩いてきた。
「父さん」
「この幼体、ガクラさんが?」
「ああ。さっきから襲ってきて嫌になっちゃう」
そんなガクラに向かって一体の幼体が天井から襲い掛かるが、ガクラが裏拳で殴り飛ばして、幼体は近くの壁を貫通した。
「さっきから小さいのばっかで飽きてきた」
「大きいのならさっきガネン君が倒しましたよ」
「ズリぃぞガネン」
「俺に言うなよ」
――――――――――――――――――――
「はあっ!!」
「ふんっ」
「てやっ!!」
リーカの火の魔法、フースの氷の魔法、フウケの錬金魔法で作ったクナイが死神蜘蛛の幼体に命中していく。
「おい。お前等もちょっとは戦ったらどうだ」
リーカは後ろにいる、キシュウ、カーシュ、マーチャ、ビアト、サイル、ルメ、レーア、ミトンに向かって言う。
「武器も無ぇのに、毒を持ってる死神蜘蛛に立ち向かうのは危ねぇだろ」
「キシュウの言う通りだから、ここは遠距離攻撃が出来る三人に任せるよ」
「情けないな。クラカを見習え」
リーカは前で死神蜘蛛の幼体をズバズバと斬っているクラカを見て言った。
「アイツと俺等を比較するな。最初っから次元が違ぇだろ」
「そうね。ガクラさんが彼女……いえ、彼女達を入学させたのは、この世界の事を学ばせるためでしょ」
「あぁ……」
フースの言葉を聞いてリーカは申し訳なさそうに頬を掻く。
「おーい皆! 蜘蛛もういないよ!」
蜘蛛を倒し終えたクラカがリーカ達の元に来た。
「しかし凄い数の蜘蛛でしたね。調査に来た人達は皆蜘蛛にやられてしまったんでしょうか?」
「いくら何でもそれはないでしょう。冒険者も調べに来たほどなんだから」
「一体、何が原因で誰も帰ってこないんだろうな」
皆は今回の原因は何なのかと頭を捻らせている。
「皆ー、考えるのは後にして、まずは父さん達と合流しようよ」
「確かにそうだな」
「じゃあ行きましょう」
考えるのを一旦やめ、皆は足を進めた。
『…………ボ……』
「今何か聞こえませんでした?」
「え? そうかなぁ」
「特に何も……」
『……ソボ……』
今度はハッキリと何かが背後から聞こえ、皆は後ろを振り向いた。
――――――――――――――――――――
「他の皆は何処にいるんでしょうね?」
「この屋敷思ったより広くてムカつくな」
予想以上に広い屋敷に、俺は少しイライラしている。
「屋敷の広さに文句言っても意味ねぇよ。とにかく進もう」
先が見にくい廊下を俺達はとにかく進んだ。すると……。
「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
突然大きな悲鳴が屋敷に響き渡った。
次の瞬間、前からクラカ達、他の皆が走ってきた。
「おぉークラカ。探したぞ」
俺は声を掛けるが、クラカ達は無視して通り過ぎた。
「あれ? 何で?」
「父さん、アレ」
ガネンがクラカ達が走ってきた方を指差した。
『アソボアソボ……アソボォォォ!!』
その先には、玄関ホールに現れた大量の女の子の人形がこっちに向かってきた。
「「「キャァァァァァァァ!!」」」
「クソ。あれから逃げてたのか」
俺は大剣を鞘から抜くと、剣に火の属性力を溜めて人形に向かって火の斬撃を飛ばすが、すり抜けて当たらない。
「効いてない!?」
「チッ。仕方ねぇ、こうなったら……」
俺は大剣を鞘に戻した。
「ガクラさん?」
(まさか、光族の力で……)
「逃げるぞ!!」
俺はクルッと後ろを向いて走った。
「え?」




