中立の町、ネイトラー
勉強会は進み皆は難なく行うが、ガネンとクラカは全く分からない事だらけで、皆に教えられながら進めた。
「沢山本があるお陰で、なんかいつもより捗る気がします」
「確かにそうね。まぁ終始あの二人は頭が爆発しそうになってたけど」
セーユはテーブルに頭を乗せているガネンとクラカを見て言う。
「なぁ。そろそろ昼だし、昼食取らねぇ?」
「でもどうやって? 流石に作ってもらうのは申し訳ないし……」
セーユが悩むと、クラカが一つの提案を言い出した。
「なら町の方に行かない? 町のレストランとかで取るのはどう?」
「町か……確かにそれもいいかもしれないけど」
「私はその方が良いと思います。作ってもらうのが申し訳ないと思うのは私も同じですから」
「……そうね。皆もそれでいい?」
セーユは皆に聞くと、頷いたり「いいよ」と返事をする。
「じゃあ行きましょうか。ガネン君、クラカさん、いい店知ってる?」
「流石に全部の店は知らないけど、知ってる人の店なら」
「じゃあ、そこでお願い」
行き先が決まり図書塔を出ようとすると、外から何やら騒がしい音が聞こえた。
「な、何!?」
「多分……これは」
ドアを開けて外に出た。すると外では。
「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」」
大剣を持ったガクラと、二本の剣を持ったエスティーが、先ほど特訓が行われた場所で戦っていた。勿論周りにはバリアが張られている。
「やっぱりか」
「まただね」
「またって、よくあることなの?」
「「と言うか日常」」
それを聞いて、ほとんどが呆れ顔になる。
「どうしたお前等? 勉強は?」
ガネン達に気付いたエグラルが声を掛けた。
「これから町の方に行って昼食を」
「なんだよ。そんぐらいこっちが用意すんのに」
「いえ、流石にそれは申し訳ないと思ったので」
「遠慮はいらねぇんだがな」
エグラルは頭を掻いた。
「まぁいいじゃん。じゃあ俺達、町の方に行ってくる」
「ああ。戻ってくる頃にはあのバカ共の喧嘩も終わってるだろ」
こうしてガネン達は町に向かった。
――――――――――――――――――――
光の兄弟の屋敷がある町の名はネイトラー。
どの種族の領地にも属さない、言わば中立地にある町だ。
そしてこのネイトラーで最も有名なのは、冒険者ギルド本部。そのため、他の町よりも訪れる冒険者は多い。
「おーい、おじさーん」
「おや、クラカ君。ガネン君もかい」
「こんにちは、店長」
俺達は知り合いの小人族の老人が営業しているレストランにやってきた。
「ん? 見ない顔だらけだね。友達かい?」
「ああ。通ってる……というか通わされた学園の友人と昼食をとりに」
「そうか。んー……」
店長は何やら考え込んでいる。
「どうしたのおじさん?」
「実は今日サービスデーと言って、いつもより安い日なんだ。サービスデーだと客も増えるから光の兄弟に手伝いを頼もうかと思ってたんだけど丁度良かった」
「つまり手伝ってくれと」
「あぁ。手伝ってくれたら料金タダにするけどどうだい?」
「んー、どうするクラカ?」
「私は別にいいよー」
「皆は?」
「私も良いわよ」
「私も構いませんよ」
町のレストランで昼食を取りに来たはずなのに、店長からの頼みで店を手伝うことになった。
「どうだい皆? 着替えは済んだかい?」
「ああ。俺達の方は済んだ」
俺達男子の方は、全員ウェイターの恰好に着替えが済んでいるが、女子の方はまだ全員済んでなさそうだ。
「クラカ、女子の方の着替えは?」
「まだシフールが終わってな……あ、来た」
更衣室からウェイトレスの恰好をしたシフールが慌てて出てきた。
「すみません! 着替えに手間取ってしまって」
「手間取ったって、そんなに着替えるの難しい恰好じゃないでしょ」
先にウェイトレスに着替えていたセーユが言う。
「そうなんですけど……胸の所がキツくて、もう一つ上のサイズを探していました。今もまだ少しキツいですが」
「……アンタ喧嘩売ってんの?」
「何でですか!?」
何でセーユが怒ってるのか分からないけど、とにかく全員着替えが済んだ。
「じゃあ説明するよ」
店長が皆の前に出て説明をした。
「サービスデーと言っても、値段が安くなるのはランチ時の12時から13時までの一時間だけだから、皆はその一時間の間だけ手伝ってもらいたい」
今は大体11時半。あと30分ぐらいか。
「それじゃ、料理が出来る子は厨房に。それ以外の子は注文や会計をお願いするよ」
「分かりました。皆、頑張るわよ!」
『おー!』
――――――――――――――――――――
13時過ぎて、俺達はレストランの手伝いを終えた。
今俺達は店長からのお礼で、無料で昼食を頂いている。
「なんかすいません。私達手伝っただけなのに」
「何を言うんだい。手伝ってくれたからこそじゃないかい」
申し訳なさそうに言うセーユに、店長は笑顔で答えた。
「しかしナンパが多かったですね」
「まぁ働いてた子が殆ど女の子だからね。クラカさんは容赦なく蹴り飛ばしてたけど」
「父さんがナンパには遠慮はいらないって」
クラカは親指をピッと立てた。
「なんかガクラさんらしい」
「はははは。流石ガクラ君の子だ。勇敢だね」
店長は笑いながら言う。
「店長さんはガクラさん達と知り合いなんですか?」
「まぁね。たまに店を手伝ってもらったりしてるから」
「そう言えば、私達が初めてこの世界に来て父さん達と会った時も、おじさんの依頼を受けてたよね」
「あぁ、そうだったな」
店長と知り合ったのもその時だし。
「ところで、皆は冒険者を目指しているのかい?」
「はい。卒業したら」
「魔王がいなくなって脅威は減ったけど、若い冒険者が増えることは良いことだよ」
「なんか店長さんって冒険者に肩入れが強いですよね。お客さんで来た冒険者にも応援の言葉を掛けていましたし」
「そりゃあ、ワシは冒険者ギルド本部の元ギルドマスターだったからね」
「え? そうなんですか?」
それは俺とクラカも初耳だな。
「だから、皆良い冒険者を目指しなさい」
「はい。分かりました」
皆の冒険者を目指す意識が強まった気がする。




