勉強会場所
「月末テスト?」
対抗戦が終わり、帰りのホームルームが終わった後、ガネンはルーヤからそんなことを聞いた。
「うん。月の最後の月曜日に行う学力テストだよ」
『テスト』という言葉を聞いて、ガネンとクラカは嫌な顔になる。
「テストって……俺とクラカ、まだ学園に入って一ヶ月も経ってないぞ。絶対点取れないじゃん」
「だから、多分そんな難しい問題は出さないと思うよ、多分」
それでもまだ不安気な表情のガネンとクラカ。
すると、一緒に聞いていたカーシュが何かを閃いたような顔をする。
「じゃあさぁ、明日と明後日、土日で休日だから勉強会しない?」
「あー」
「確かにそれ良いね」
皆はその案にかなり賛成みたいだ。
「でも何処でやるの?」
「んー、やっぱり図書館かな?」
「でも、この島図書館少ないし、そんなに大きくないから席すぐに埋まりそうじゃない?」
「確かにそうだね」
皆は勉強場所で悩んでいた。
(図書館……つまり本が沢山あれば良いのか?)
「なぁクラカ」
「何?」
ガネンはクラカに耳打ちで話すと、クラカはうんうんと頷くと「おぉー」と言う。
「じゃあさ、俺等ん家ならどう?」
『え?』
ガネンの発案に、皆が驚く。
「家の敷地内に、メイトが作った本が沢山ある建物があるから、そこならどうかなぁって思たんだけど」
「えっとー……俺達行っていいの? だって家って、この島じゃなくて島の外にある方だろ?」
「ああ。そりゃあもちろん。なら父さんに聞いてみるか?」
ガネンがそう言うと、左腕にある小さな青い宝石が付いたブレスレットを前に出した。
「前から気になってたんだけど、そのブレスレットは? 光の兄弟皆着けてるけど」
「これは昔、父さんがライテストの開発局に頼んで作ってもらった光の兄弟の証。これで通話も出来る」
「へぇー凄いね」
ガネンは青い宝石に触れると、そこから不思議な文字が沢山出てくると、その中の一つに触れる。
『何だ、ガネン?』
青い宝石から、小さな光の画面の様なものが現れ、そこにガクラが映っていた。
「父さん、実はさぁ……」
ガネンは勉強会の事や、皆が来ていいかどうかを聞いた。
『はぁ? それぐらい別に問題ねぇよ。自由に来ていいぞ』
ガクラが言い終わると画面が消えた。
「……だってさ」
「何か、軽くない?」
――――――――――――――――――――
「……」
「シフール……シフール!」
「え? あっ、はい!」
「何ボーっとしてるの?」
「い、いえ。なんでもありません」
呆然としていたシフールを、セーユは腰に手を当てて呼ぶ。
(本当はさっきのガネンに大胆な事をしてしまったからなんですけど)
「明日からの土日が終わったら月末テストよ。しっかり勉強しとかないと」
セーユがそう言うと、髪を一つ結びをした狐の獣人族の女子生徒のソシュが「うげっ」と声を出した。
「何? アンタ、また勉強してないの?」
「だって勉強苦手~」
そんなソシュに一人の女子生徒が背中をポンポンと叩いた。
「ほら。私が見てやるから、勉強しとこうな」
そう言ったのは、青いショートヘアーの人間の女子生徒のイセナだ。
「何だ? 月末テストの話か?」
「リーカ。えぇ、そうよ。リーカは授業中よくノート取ってるから大丈夫よね」
「え? ……あ、ああ大丈夫だ」
「あれ、実は新作の武器を考えてるだけよ」
割り込んできたフースに暴露されて、リーカは焦る。
「おい! 余計なことを言うな!」
「はい、リーカも勉強しましょうね」
セーユに肩を叩かれ、リーカは肩を落とす。
「でも、何処で勉強をするんですか?」
「そうねぇ……」
セーユが悩んでいると、ソシュが耳と尻尾をピンッと立てた。
「実はさっき、三組の前を通った時に光の兄弟の家で勉強会をしようって話を聞いたんだ!」
「へぇー。まぁガネン君とクラカさんがいるから可能と言えば可能ね」
「それに私達も一緒なんてどうかな?」
ソシュの提案に、皆は目を丸くする。
「いや、それはダメでしょう。流石に迷惑でしょ」
「ん~……あ」
ソシュは、一瞬だが廊下にガクラが歩いているのを見つけた。
「ちょっと聞いてくる」
「ちょっと、ソシュ!」
ソシュは教室を出て少しすると戻ってきた。
「『別にいいぞ~』っだって」
「あの人らしい反応ね」
セーユが呆れ顔で言う一方で、シフールは固まっていた。
――――――――――――――――――――
「おはようシフール」
「おはようございます」
シフールが家を出ると、門の前には、勉強会に参加する一組のクラスメイトがいた。
勉強会に参加するのは、セーユ、シフール、リーカ、フース、イセナ、ソシュ、マーチャの七人だ。
「……アンタ、寝不足でしょ」
「え!? な、何でですか!?」
「隈……出来てるわよ」
シフールは体をビクッと震わせた。
セーユの言う通り、昨晩は緊張であまり寝られていなかった。
「ところで、何故モリンがいるんですか?」
セーユ達の中に、何故か二組のモリンが混ざっていた。
「そりゃあ、皆さんが光の兄弟の家にお邪魔すると耳にしたので。光族ファンクラブ副会長としては是非ともお伺いしたいと思っていましたので」
モリンの眼鏡がキランと光る。
「随分熱心ね。もう少し見習ったらどう、会長さん?」
「からかわないで下さい」
ニヤつきながら言うセーユに、シフールは恥ずかしがる。
「ねぇ。どうして私も勉強会に参加?」
マーチャが首を傾げて聞いてくる。
「だって貴女も学力そんな高くないでしょ。ちょっとでも点数上げなきゃ」
「う~ん」
マーチャはけだるげそうに返事をする。
「それにしても驚いたわね。光の兄弟がこの島で借りた家が、まさかシフールの家の隣だなんて」
「はい。私もお父様から聞かされた時は驚きました」
シフールの家は二階建ての大きな家。
その隣の二階建ての少し小さい家が、光の兄弟が借りている家だ。
「やっぱりシフールの家を集合場所にして正解ね。さっ、行きましょ」
出発して数十秒で、家に到着した。
「もう着いちゃったわね」
「あれ? セーユさん達」
声を掛けてきたのは、三組の生徒達だった。
メンバーは、フウケ、カーシュ、キシュウ、ビアト、サイル、ルメ、レーア、ミトンの八人だ。
「なんでセーユさん達がここにいるの?」
「実は昨日、ソシュがあなた達が光の兄弟の家で勉強会をするって聞いたらしくって、それでどうせなら私達も一緒にってことになって」
「あっ、ちゃんとガクラさんから許可は取ってるよー」
セーユの後ろからソシュがひょこっと顔を出して説明した。
「そうなんだ」
「確かにガクラさんなら許可だしそう。じゃあ一緒に行きましょう」
「ええ」
よって、合計15人が行動を共にすることになった。
「なぁなぁ。ルーヤはいないのか? 昨日、勉強会の話をしたときにいたって聞いたんだが」
リーカが三組の女子に小さな声で訊ねる。
「ルーヤ君なら、妹の勉強を見るからって来てないよ」
「あ……そうか……」
リーカはガクッと落ち込む。
「何これ?」
セーユが家の前に立つと、ドアの横にあるものに目を向ける。
『用がある人は下のボタンを押してください』
そう書かれた紙の下には、ボタンがある。
「押してみるわね」
セーユはボタンを押すとピンポーンと鳴った。
一分ぐらいすると、ドアが開いた。
「あ、いらっしゃーい」
中からエスティーの妹、アールが出てきた。
「こんにちはアールさん」
「話は聞いてるよ。さぁ入って入って」
アールに案内されてセーユ達は家の中に入った。
案内されたのは小さな個室。
その中には一つの魔方陣が敷かれていた。
「これに乗れば行けるよ」
「転移魔方陣ですか。初めて見ます」
セーユは恐る恐る魔方陣に乗ると、ヒュンっと消えた。
「うわっ! ホントに消えた」
「ほら。他の皆も行った行った」
アールに言われて、他の皆も次々と魔方陣に乗った。




