復讐の犯罪者
「う~ん」
「どうしたんですか? 難しい顔して」
登校中、セーユの顔を見てシフールは言う。
「いや……ガクラさん達って一応英雄よね。魔王を倒した」
「はい。世間ではそう言われていますけど」
「……なのに、英雄らしさを感じないのよね」
セーユは不満そうな顔で言う。
そんなセーユを見てシフールは困り顔になる。
「大丈夫ですよ」
二人が校門に着くと、そこには学園長ジュリエがいた。
「学園長。大丈夫とは?」
セーユの言葉に、ジュリエはニコッと笑う。
「あの人達は恐らく、英雄になりたくて魔王を倒したのではないと思います」
「それは……なんとなくですけど、話してる内にそうだと思いました。ですが、もう少し普段からシャキッとした方が良いと思うんです」
怒り気味のセーユを見て、ジュリエは少し笑う。
「あの人達は、光族の時の方がしっかり見えるんですよ」
セーユは首を傾げる。
「それってどういう意味ですか?」
「私もなんとなく言ったので分かりません」
セーユは呆れ顔になり、シフールは微笑する。
「おはよう」
「はよー」
そこへ、ガネンとクラカが登校してやって来た。
「おはよ……う」
セーユは振り向いて挨拶をすると、二人がガクラの足を引っ張っていた。
その光景を見て思わず顔がひきつった。
「何やってんの?」
「父さん二日酔いだからさ、引っ張ってきた」
セーユはジト目でガクラを見た。
「私、学園長が今言ったこと分かんなくなってきた」
ガネンとクラカが首を傾げると、その場にアスレルがやって来た。
「全くこのバカは。早く起きろっつーの」
「ほがっ!?」
アスレルはガクラの頭をゴンッと蹴った。
「痛ででで。あ~頭痛てぇ」
ガクラは頭を押さえながら立ち上がる。
「なんで二日酔いになるまで飲んだんですか」
「なんかねー、昨日セーユに言われたこと気にしてたみたい」
「昨日? ……あ」
セーユは思い出した。
昨日言った、「ガクラさんの説明が下手」という言葉を。
「あれ、気にしてたんですね」
「うるせーよ。あんなこと言われて自棄酒飲まずにいられるか」
ガクラは頭を掻いて校門を通ろうとすると足を止めた。
「どうしたんですか、ガクラさん?」
「お前等。少し離れろ」
「え?」
訳も分からず、言われたとおりにセーユ達は少し離れると、何処からか魔力弾がガクラに向かって飛んできた。
ガクラはその魔力弾を掴むと、そのまま握りつぶした。
「熱っ!」
「熱いんですね。それより大丈夫ですか!?」
「ああ。これぐらい平気だ」
周りにいた生徒は、突然のことで騒ぎ出す。
ガクラは魔力弾が飛んできた方を見ると、そこに三人の男が立っていた。
「見つけたぞ、ガクラァ!!」
真ん中に立っている竜人族の男がガクラに向かって叫ぶ。
「っ! お前は!?」
ガクラはその男を見て目を見開き……。
「……誰だっけ?」
ガクラがそう言うと、竜人族の男は表情が怒りに満ちていく。
「テメェ!! 俺を忘れたってのか!!?」
「んっと~……」
ガクラが腕を組んで思い出そうとしていると、アスレルがガクラの肩を叩く。
「ガクラ。アイツ、『死の笛事件』の首謀者じゃない?」
「死の笛? ……あっ、思い出した。あの事件の犯罪者共のリーダーだった男!」
「やっと思い出したかテメェ」
死の笛は音色を聞いた者の命を奪う呪いの笛。
あの男はそれを使い王の命を狙おうとした犯罪者達のリーダーだ。だがガクラ達が全員倒して笛を破壊。全員投獄されたはずだったが……。
「お前も魔王騒動の時脱獄したのか」
「ああ、そうだ。それに関しちゃあ魔王に感謝だ」
魔王が本格に攻めてきた時に、その騒ぎに生じて殆どの犯罪者が脱獄してしまった。奴もその一人のようだ。
「オメェがここに来た理由は、なんとなく分かるが一応聞こう」
「決まってるだろ。テメェへの復讐だ!!」
「だろうな。お仲間が減ってるのに、随分の自信だな」
たった二人しかいないのに自信満々の態度に、ガクラは何かあるなと推測する。
「その通りさ。テメェを倒すのに手に入れたとっておきがある。それを使って今度こそテメェを倒す!!」
竜人族の男が叫び部下の二人の男が武器を手に取ると、二人の男は後ろから後頭部をガシッと掴まられる。
「なに朝っぱらから学園の前で、騒いでんだ!?」
後ろから掴んだエスティーに二人の男は顔を地面に叩きつけられて気を失った。
「なっ!?」
竜人族の男はとっさに距離を取るが、ガクラとエスティーに挟み撃ちにされているため表情に焦りが出ている。
「おいガクラ。何だコイツ等? お前の知り合いか?」
「まぁ、そんなところだ。すぐ終わらせる」
ガクラは指をポキポキと鳴らして男に近寄る。
男は悔しそうに歯を食いしばるが、何故かその後余裕の表情を見せた。
「やっぱ、『コレ』使うしかないか」
そう言うと男は、ズボンのポケットから三つの小さな黒い球を取り出した。
「何だ、あれは?」
男は風の魔法で黒い球を浮かせると、ガクラとは全く逆の方向に飛ばした。
「なんか全然違う方に飛ばしたよ」
「……ああ」
クラカが言うとガクラは少し嫌な予感をしながら返事をした。
飛ばされた黒い球はそれぞれ離れた場所で、ほぼ同時に地面に落ちると大きな爆発を起こした。
「うおっ!?」
「え? い、今のって爆弾!?」
セーユは驚きながら言うが、爆弾ならガクラに向かって飛ばすはず、あれは爆弾じゃないのは間違いない。
「となるとあれは……」
ガクラは目を凝らして爆発の煙を見ると、爆煙の中で何かが動いた。
爆煙が晴れ姿を見せたのは、30メートル程の巨大な生物だった。
「父さん、あれは!」
「ああ。界獣だ」
界獣。それは異世界の外の空間で生まれる生物の名称だ。
そのため色んな世界に現れるため、”界”獣と呼ばれている。
界獣の殆どは戦闘力が高く大きい為、よく闇取引などで生物兵器として売買されている。
「テメェ。闇取引で買い取ったな」
「ああ、そうだ。テメェを倒すには界獣を使うのが一番良いって言われたからな」
男は風の魔法で跳ぶと、その場から逃げ出した。
「せいぜいあの怪物共と遊んでな!」
「あ、待ちやがれ!!」
ガクラは逃げた男を追いかけようとするが、現れた三体の界獣が町で暴れるのが見え、足を止めてしまう。
「チッ。あれもどうにかしねえと」
今は朝だが人も大分いる。このまま界獣を放置するのは危険だった。
「学園長。生徒達を急いで校舎に避難させろ。あと授業は二限目からにしてくれ」
「分かりました」
「アスレルとエスティーはあいつを追ってくれ。界獣は俺達で何とかする」
「お前に指図されるのは癪だが状況が状況だ。任せろ」
「じゃ、界獣の方任せたわよ」
アスレルとエスティーは逃げた男を追った。
「ガクラさん。何とかするってどうするんですか?」
「は? 決まってんだろ」
セーユが不安そうに言うと、ガクラは界獣の方を向いた。
「あれを倒すに決まってんだろ。俺達、光族の力で!!」




