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『shadows』-1

作者: いっしー60

『shadows』-1


七海吾郎は今職が無い。こんな七海がどうなろうと世間の人は知った事ではないだろう。

ある日、新薬の開発をしていると言う製薬会社に忍び込んだ七海は見慣れない薬品の名前を見つけた。

まあ新薬なので見慣れない名前なのは当たり前だろうが『shadow』と名付けられたこの薬品を医薬品倉庫から盗み出すことに成功して七海は有頂天だった。だが七海はそれが何の薬品かを知らなかった。


BEETT警備会社で働く朝倉は、今朝から風邪気味だった。それでも同僚の堀田に起こされながら夜勤の仕事に就いたのはこの不景気の世の中で雇ってくれる所が他に見当たらずつぶしのきかない自分にはこれぐらいの仕事しかないといつも嘆いていたからだ。暗い廊下にLEDライトの懐中電灯を照らしていつ

もの廊下をいつものコースで巡回するがその夜は普通は暗がりになっているはずの部屋の中で薄ぼんやりとパソコンの明かりが漏れていた。急に駆け出す堀田と朝倉「誰だ!出てこい!」二人は常に訓練しているように警棒(警官のとは違う)を出して威嚇した。


七海は我を忘れてパソコンで『shadow』の正体を知ろうとしていたのが原因で警備員の堀田と浅田に見つかってしまう。威嚇されどうにでもなれと二人を突き飛ばして逃げようとする七海。それを逃がすものかと体当たりしてくる堀田。朝倉は手に持った警棒で七海を殴る。だが七海は『shadow』の正体も知らずにそれを飲んでいた。どうせこんな世の中自分なんかどうなっても良いと言う気持ちからだったのだが七海は薬を飲んだとたん次にどう動けば良いか分かっていた。別に超能力とかというものではないようだが、たぶんこの薬の所為だろう。未来に起こる事が影のように自分に映るのだ。だがそれは自分だけにしか見えない。


この能力により自分の未来に起こる事が分かった為に七海はこの場を逃れることが出来た。二人の警備員は後で口々に「あいつは格闘技でもやっているんだろう。それじゃなけりゃ俺たち二人から逃げるなんて出来る訳ない」と言い訳がましく言っていたのを駆けつけた警察関係者に言う二人。それにしても七海

はどこに行ったのだろう。指紋も何もなく足取りの行方はない。だが二人の警備員は薬が何粒かこぼれているのを警察には言わずに自分たちの手にする。


数ヵ月後。七海はその薬のお陰でギャンブルにのめり込んでいた。未来が見えるのだから当たり前だ。それも30秒先の未来が見える。だが30秒では競輪や競艇の類は無理だということ。それでパチンコやスロットマシンに入れ込んだ。どうやらこの新薬は超能力開発のための薬らしいということが分かった。そのお陰で莫大な金を得る事に成功する。もちろん自宅も買った中世ヨーロッパ調の家具やシャンデリア、オーディオ専用部屋に103V8Kテレビと7.1chドルビーアトモスシステムの特注品、キッチンも現代風でなくヨーロッパ調の中にIHクッキングヒーターで無く中華コンロが数十セットがあり専用料理人付き、もちろん暖炉等も統一感があった。


だがビジネスの分野で成功するのは結局闇カジノを始めた事。30秒後に何が出るか必ずわかる。デイトレーダーも上がる寸前の株を買い下がる寸前の株を空売りする。

下がるものなら売ると言う事を繰り返し今では信用取引も100倍ぐらいまでなら売り買いできる。

ますます盛んになるビジネスだが、裏では悪逆な事もしなければならなくなる。七海のビジネスはどんどん広がり闇金までするようになる。どんな手を使っても借金を踏み倒す事のないように七海は組関係者にまで資金を貸すようになる。そうすると自動的に金が集まるような仕組みになって行く。


女にも金を使うようになる七海。気に入った女は必ずと言って良いほど絶対金に糸目をつけずに手に入れた。そうやって金に物を言わせて裏社会でものし上って行った七海を追いかける二人組の警備員がいた。


今日も七海は白鳥遥子という女に上せていた。遥子は背がかなり高くスマートなタイプで今時の何々の感じとかいうギャル風で誰に似ているかと聞かれると歌手の倖田來未とか言ってるし・・・

遥子の仕事といえば良くありがちなそこのキャバクラの2番目のキャバクラ嬢だった。


その日はいつもなら七海の取り巻きの組関係者が居るのだがあいにく遥子に誰もついていない時だった。今夜は二人のサラリーマン風の男が遥子には客としてついた。遥子の源氏名は久実子。倖田來未に似ていると言われるだけあってかなり良い感じなんだがあまり良い人間と言うのは成功出来ないのがこの世の中。だからこそ遥子を気に入った七見だが。


サラリーマン風な男二人は堀田と朝倉だった。堀田も朝倉もただの男。たまには羽目をはずしたくもなるさ。「久実ちゃんって可愛い」「久実ちゃんってモデルでしょう」とただの親父だ。「誰か決まった人いるの?」「いても良いじゃん」と会話の流れで次にも来る事になる。


堀田と朝倉


堀田正治と朝倉智也の二人は警察崩れだった。警察を辞めた人間だ。朝倉が実は警察内部のでっち上げの犯人をかばった為、その朝倉を堀田は助けた為二人は辞職扱いになった。その事で二人は警察自体は恨んではいなかったが信頼しきれない事は確かだった。そんな時自分たち警察崩れよりも強い人間がいる事を知ってあの夜の奴をパクッてやる(実際には刑事ではないので逮捕は出来ないのだが袋にしてやる)と思っていた。だがこの二人を後ろから支えたものがいる。

あの『shadow』を作った製薬会社だ。あの薬は秘密裏に超能力を研究していたものの副産物だった。

だからこそ日のあたる場所に出してはいけない物だったのだ。製薬会社の名前は渡久山製薬という聞いた事のない名前。そこの責任者尾方に頼まれていろいろ聞き回っていたのだ。BEETT警備会社を辞めて製薬会社に勤めているという事になっている。


二人は全国を探し回った。そして七海らしき者がいると聞くとそこに出向いて行った。そしてある時七海がいる住所に近づいている事に気づく。七海は東京ではあしが付くと思って静岡県熱海市にいた。そして地元のヤクザと組んでいるのをやっと見つけたというわけだ。


堀田と朝倉は次の夜も久実子を指名した。キャバクラの名前は気にしていなかったが今日ははっきり見た。「Ripplesって英語でさざなみか?」と朝倉。それには答えずに堀田は今夜も奴を捕まえられなかったな。と独り言。「奴って誰?」と会話に入ってきたのが久実子。奥の方から指名を貰ってやって

来た所だった。朝倉は饒舌に語ったあの夜の事を。「へえ、不思議な事が起きるのねえ」と言う。「じゃあ、あなた達って警備の仕事をしていたの?」と久実子が聞く。「ああ、それでしくじってそこもクビさ。今でもあの夜の相手の顔を思い出すよ」と朝倉。「ついでにもうそろそろ金が無くなって来てね、借金する相手を探してたんだ」と堀田。ついカマをかけたくなるのが性分のようだ。自分たちがここに来たのは七海らしき男がいると聞いていたからだが、それは久実には隠して話す。


久実が「じゃあさ、七海っていう男がいるんだけどその人から借りる?」どこまでもお人よしタイプのようだ。「じゃ、奥に七海の同僚の人がいるからその人たちから借りる?」と言う久実子の話には乗らずに「そうだなあ。七海って人に直に頼みたいんだけど」と言う堀田。すぐに奥に走っていく久実子。

話が着いたようで久実子と共に奥の人達も付いて来るようだ。キャデラックのリムジンに乗せられ着いたのは七海の邸宅。



七海の邸宅


監視カメラが据えられ庭には赤外線探知システムが搭載されハイテクで守られた要塞のようだ。だがここはちゃんとアポイントを取った堀田と朝倉。容易に進入できた。だがこれからだ。ぐっと唾を飲み込む朝倉。前は刑事だったとはいえ平静ではいられない。



「吾郎ちゃん。遥子」とインターフォンで呼び出して本名で言う久実子。自動で門が開き七海に会うまでボディチェックを何度入れられたか分からない。金属探知機まで使って調べる徹底振り。ボディチェックの間に薬瓶が見つかるが「(やく)か?」と聞かれて朝倉は風邪薬ととぼけて答える。いぶかしげにチェックを終わった大広間で待つように言われ10分待たされた末に朝倉が痺れを切らして「いつまで待たせるんだ!」と怒鳴りそうになる所を抑えたのは堀田。「わざと痺れを切らそうと言う魂胆だ」と言う。そこへ七海が組関係者の人間と現れる。

「でいくら貸して欲しいんだ?ここまで来て100万とか言うなよな」と組関係者の一人が脅すように言う。


「10億円だ!」と堀田が言う。七海はいくらなんでも10億円とは思ってもいなかったようだが「未来が読めると言っても声までは聞こえないようだな」と七海に言う朝倉、強気だ。

「何だお前らは?」と言う七海に間髪着かせずに「言うまでも無いこの顔を見忘れたか?」と堀田も頭に血が上っている。「お前らはあの夜の警備員!」と七海がそこまで言うと「やっちまえ!」と言う組関係者の誰ともつかない声に銃撃戦が始まるが二人は何も銃を持っていないにも拘らず銃弾がまるでスローモーションのように行きかうかの様に朝倉は銃弾を跳ね除け、堀田は瞬間的に移動する。家具が壊れシャンデリアは落ちてくる。戸棚に穴が開き扉も吹っ飛ぶ。


実は七海はこれも予測できていたのだが瞬時に移動し過ぎで、二人がどこにいるのか分からない。


組関係者が次々素手で倒されていく中で七海は自分だけは助かろうともがいていた。次にどうすべきかを予測していた。そして自分だけは非常の際に逃げる地下道から逃げ出す。久実子(遥子)は一緒に連れて行かれる。

とっさの判断ミスで取り逃がしたかと朝倉と堀田が気がつくまで数秒。だが危機はそれだけではない。七海は自分が逃げるのと同時に自爆スイッチを入れていた。「全部助けているヒマは無い」と非情な事を言って堀田は朝倉と共に七海の邸宅を脱出するや否や邸宅は大爆発。組関係者を助ける事はできなかったと反省する二人だった。


エピローグ


渡久山製薬で尾方に「ありがとう。これでしばらくは七海も手を出さないだろう」と言われる二人だったがまだ捕まえた訳ではないし気が晴れないようだ。それにあの薬が他の人間に渡ったら他の能力者が出てくる可能性がある。「俺たちの戦いに終わりは無いのかも知れない。力を悪用する人間がいる限り・・・」朝倉と堀田は窓から見える夕日に向けて誓っていた。まるで70年代のヒーロー物のように。


あとがき:これって実はHEROESのようにするつもりはなかったんですが影だけでは話が膨らまないし1話完結にするのも勿体無いと思ってしまってこんな結末になってしまいました。もし気が向いたら続編も書くかもしれません。


※お分かりのように実在の名前は一切使っていませんがもし似た名前の人がいても違うと言う事をお断りしておきます。

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