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毒の王、囚われた姫①

 俺はアリサと共に街をぶらついた。

 腹が減ったので適当な酒場に入ることにした。


 店に入ると、客や店員の視線がアリサに釘付けとなる。

 彼女が有名人であることを再認識する瞬間だった。


「仲間になると言ったって、何するんだ? 俺はお金に困らない限りクエストなんか受けないぞ。強さを追い求める生活も飽きたし」


「んー、一緒に行動できればそれでいいかなって? なんか今のまま稽古を続けていても強くなれないと思うんだよね。だからジークの傍で活動して、次の段階へ進めるような発見をしたい、みたいな」


「アリサはいわゆる壁にぶちあたっているわけか。そういう時は何がきっかけで壁を破れるか分からないからな。悪くないと思うぜ。でも、お金は大丈夫なのか?」


「誰に言ってるの? 私、これでもS級冒険者だよ? そんじょそこらの貴族にだって負けないくらいの資産があるから」


「そうなんだ」


「そうなの。だからここは私が払うわ」


「サンキュー」


 アリサがメシを奢ってくれた。

 会計が済むと店を出る。

 その頃には日が暮れており、早くも解散モードだ。


「それじゃ、俺は適当な宿屋に泊まるから」


「えっ、家を持ってないの?」


「まぁね」


「意外。じゃあ、ウチに泊まっていけば?」


 ひょうひょうとした様子で誘ってくるアリサ。

 俺に襲われたらどうしよう、とか考えないのだろうか。


「アリサの家に泊まる?」


「私の家、かなり広いんだよね。なのに私しか住んでいないの」


「使用人とか両親は?」


「両親は数年前に死んじゃってね。その時に使用人も解雇したの。冒険者ってあんまり家に帰らないし」


「なるほど」


「そんなわけで広い家に一人だから寂しいんだよね。部屋はたくさん余ってるし、良かったらジークも使ってよ。他に人がいると私も楽しいし」


「そういうことなら」


 こうしてアリサの家で泊まることが決定した。


 ◇


 王都内は大きな区画に分かれていて、彼女の家は富裕層の区画にある。

 その為か、建ち並ぶ家々はご立派な館ばかりで、庭も無駄に広い。


 そんな中でも目を引くくらいに、アリサの家は大きかった。

 文句なしの大豪邸だ。

 二階建てとのことだが、大きすぎて四階建てに見えた。


「ね、広いでしょ?」


「たしかに」


 アリサが家の中を案内してくれた。


「これで紹介は終わり。好きな客室を選んで」


「折角だしアリサの部屋の隣にするよ」


「オーケー」


 アリサの部屋は二階にある。

 ちらりと中を見たが、あまり女っ気がなかった。

 客室との違いと言えば、ベッドが天蓋付きだったことくらいだ。


「じゃ、俺はシャワーを浴びて寝させてもらうよ」


「りょーかい」


 俺は自分の部屋に入り、部屋に備え付けのシャワーを浴びる。

 この世界のシャワーは、魔力を動力源にしているようだ。

 シャワーヘッドから魔力の漏れを感じる。


 シャワーが終わると、寝ることにした。

 まだ夕方と夜の間みたいな時間帯だが、それでもベッドに入る。


「やっぱり邪魔だな……」


 俺はベッドの中で服を脱いで全裸になった。

 1兆年以上前から、ベッドで寝る時は全裸じゃないと落ち着かない。


「ふぅ」


 服を脱ぐと、一気にリラックスできた。

 シーツのひんやりした感触が心地よい。


「宿屋の1000倍は立派な場所だな」


 アリサを仲間にしたのは正解だったな、と思いながら眠りに就いた。


 ◇


 早く寝すぎたせいで、夜中に目が覚めた。

 外は静まり返っていて、草木も眠りに耽っている。


「たしかにこれは寂しいな……」


 ベッドの上で身体を起こして、アリサの気持ちが分かった。

 これだけ広い家の中を一人で暮らすのはたしかに寂しいものがある。

 隣の部屋にアリサがいると分かっていても寂しい。


「そうだ!」


 いいことを閃いた。

 俺はベッドを出て服を着ると、その足でアリサの部屋に向かう。

 そして、ゆっくりとドアを開き、アリサの部屋に入った。


「んー……?」


 俺の気配に気づいてアリサが起きる。

 もっとも気づいたというより、意図して気づかせたのだが。


「どうしたの? ジーク」


「たまには人肌を感じたいと思ってさ」


「人肌?」


「一緒に寝ようぜ、アリサ」


「ええ!?」


 驚くアリサ。


「いいだろ? ダメか?」


「ま、まぁ、いいけど……言いなりになるって言っちゃったし」


「そうこなくっちゃな」


 俺は速やかに服を脱ぎ、ベッドに入る。

 全裸になった俺を見て、アリサはこれまた驚いた。

 慌てた様子でベッドから飛び出て、こちらを見ながら言う。


「ちょ、なんで脱ぐの!?」


「俺は全裸じゃないと眠れないんだよね。安心しろ、何もしないさ」


 アリサが恐る恐るとベッドに入ってくる。

 薄手のゆったりした寝間着は、なかなかにそそられるものがあった。


「本当になにもしないんだよね?」


 アリサが俺に背を向ける。


「さぁ、それはどうかな」


 俺は背後から抱きつき、アリサの胸を鷲掴みにする。


「ちょっ」


「本当に何もしないなら、それはそれで嫌だろ?」


「そ、それは、そうだけど……」


 ベッドの中で、俺はおもむろにアリサの服を剥ぎ取った。


 ◇


 翌朝、目を覚ますと、隣にアリサの姿はなかった。

 ベッドの傍に投げ捨てた彼女の衣服も消えている。

 また、乱雑に脱ぎ散らかした俺の衣服は綺麗に畳まれていた。

 どうやらアリサは、俺より先に目を覚ましたようだ。


「朝食でも作っているのかな」


 一階のキッチンからアリサの気配を感じる。

 俺は顔を洗ってから服を着て、キッチンに向かった。


「あ、おはよ、ジーク」


「おう」


 案の定、アリサは朝食を調理に励んでいた。

 こちらに背を向けた状態で、目玉焼きを作っている。


 彼女は既に外用の服に着替えていた。

 つまり白のノースリーブに、グリーンレザーの胸当てとミニスカートだ。

 黒のニーハイソックスを穿き、靴はそれと同系色のブーツ。

 調理中なのでエプロンも着用していた。


「家の中にいるときは全裸になれよ」


「もー、変態」


「でも言いなりになるんだろ?」


「むぅ。見返りは要らないって言っていたのに」


「今は気が変わってノリノリだ。ほら、早く脱げよ」


「もう……でも、エプロンはつけたままだからね」


「いいぜ。なんだったらソックスもそのままでいいぞ」


 アリサが調理を中断し、渋々と服を脱ぐ。

 ニーハイを穿いた裸エプロンという、変態な格好になった。


「ずっと眺めていたいなぁ」


「はいはい。分かったから食堂に行って新聞でも読んでおいで」


「新聞あるんだ?」


「あるよ。食堂のテーブルに置いてあるから」


「見てこよう」


 新聞のある世界は少ない。

 多くの世界において、紙は貴重品だからだ。

 この世界は紙の量産化に成功しているということ。


 俺は食堂へ移動し、適当な椅子に座った。

 そしてテーブルに置かれている新聞を手に取って確認する。


「今日は国王陛下の話題で持ちきりだねー」


「たしかにそのようだな」


 裸エプロンのアリサが、テーブルの上に朝食を並べていく。

 朝ご飯は米に目玉焼き、それにタコさんウインナーにサラダと味噌汁だ。

 まさかの日本食である。


 料理を並べ終えると、アリサは俺の向かい側に座った。

 二人して手を合わせ、「いただきます」で食事を始める。


「物騒な事件だけど、私達には関係ないね」


 サラダを食べながら言うアリサ。

 俺は「そうだな」と頷いてタコさんウインナーを食べる。

 美味しい。


「毒に拉致とは本当に物騒な事件だぜ」


 昨夜、王城のパーティーで、国王が毒を盛られた。

 それによって場が騒然としている間に、王女が拉致された。

 現場には革命軍からの犯行声明文が残されていた。

 解毒剤及び王女を解放してほしければこちらの要求を呑め、と。

 ――これが、今日の新聞を埋め尽くす話題の要約だ。


「どの世界も人間同士で争うものなんだなぁ」


 ぼんやりとご飯を平らげていく。

 半分ほど食べた時に、ふと思った。

 これまでの人生、この手の問題には一貫して無関心だったな、と。


「決めた! やっぱり国王を助けてやろう!」


 そんなわけで、俺は問題を解決してあげることに決めた。

頑張って更新していきます!


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