違法奴隷を扱う裏組織⑦
ミイナとローナが嫌がった理由は予想外のものだった。
「ミイナ、パパと一緒がいいなのです」
「ローナも、同じ。お父さんと一緒じゃないと、いや」
2人は俺との同居を希望しているのだ。
「そういうことなら、お前達もアリサの家で住むか」
「アリサ?」
「それは誰なのですか?」
「俺の仲間さ。俺はそいつの家に住んでいる。部屋には余裕があるし、一緒に住むのは容易だ」
ミイナとローナの顔が輝いていく。
「パパと一緒なのです!」
「嬉しい」
「だったら決まりだな。あ、学校にはちゃんと通えよ?」
「「はーい」」
これで話がまとまった。
「そんなわけで変更だ。この子らを学校に通わせることだけでいい。住居は我が家を使うことにするからさ」
国王が「よかろう」と頷く。
「入学に関する手続きが済み次第、アリサ殿の家に使者を送らせてもらう。もし何か追加で必要な物があればなんなりと申してくれ」
「分かった」
報酬の話が済んだので、俺はミイナとローナを連れて家に帰った。
◇
家に着いた俺達を、アリサが迎えてくれた。
リムノーレとリリィは深夜なので就寝中だ。
「わぁ! 可愛いぃぃぃ!」
ミイナとローナを見て、アリサが興奮する。
「ミイナと申しますなのです」
「ローナ」
2人がペコリと頭を下げる。
「ミイナちゃんとローナちゃんね! これからよろしくねぇ!」
「アリサ、なんだか嬉しそうだな」
「そりゃ嬉しいよ! 我が家が賑やかになるんだから!」
アリサは上機嫌でミイナ達に家を案内する。
俺は一足先にアリサの部屋に行き、シャワーを浴びてベッドに入った。
もちろん全裸で。
「ジーク、あのね」
しばらくして、アリサが戻ってくる。
「さぁ楽しむとしようか!」
声を弾ませる俺。
が、しかし。
「パパー!」
「お父さん!」
アリサの脇を通り抜けて、ミイナとローナが部屋に飛び込んできた。
「どういうことだ?」
「この子達、ジークと一緒の部屋じゃないと嫌なんだって」
この展開には覚えがあった。
リリィの時と同じだ。
だが、ここから先の展開は違う。
「そうか、だったら仕方ないな。部屋を移るよ」
「そうだね」
「俺がいないからって寝る時に服を着るんじゃないぞ」
「もう! 子供達の前でそういうこと言わないでよ!」
「言わないと着そうだったからな」
「そうだけど……。むぅ」
「そんじゃ、また明日な」
「うん、おやすみ」
俺はベッドから出て服を着る。
アリサに軽くキスすると、ミイナとローナを連れて部屋を出る。
その足で、すぐ隣の部屋に入った。
この家に来た当初、俺の自室として使われた部屋だ。
「寝る前にシャワーを浴びておいで」
「はいなのです!」
「分かった」
ミイナとローナが浴室に向かう。
俺はまたしても全裸になり、ベッドに入った。
幼女と同じベッドでも、服を脱いで寝ることに変わりない。
「綺麗にしたなのです」
「肌、サラサラ、する」
ミイナとローナがバスタオルを頭に載せながら出てくる。
どちらも全裸だが、俺は特になんとも思わなかった。
幼女の発情するような人間ではない。
「冷えない内に服を着て寝ろよ」
「パパが裸なので、ミイナ達も裸なのです」
「ミイナの言う通り。ローナも裸がいい」
有言実行。
2人は服を着ることなくベッドに潜り込んできた。
そして、両サイドから俺に抱きついてくる。
我が右腕をミイナが、左腕をローナがぎゅーっと。
「寝るか」
俺は目を瞑る。
リリィの時と違い、2人を魔力で眠らせようとはしない。
洗脳や記憶の改竄を受けてきた2人に、これ以上の魔力を注ぎたくなかった。
「むっ」
異変に気づいたのは、目を瞑った数分後だ。
ミイナとローナは寝息を立てず、俺に抱きついたまま固まっている。
2人が涙を流していることは、気配から察することができた。
「どうかしたのか?」
「ミイナ、身体が、おかしいなのです」
「ローナも……」
2人がおもむろに動き出す。
ゆっくりと我が腕から離れ、俺の下半身に身体を向かわせる。
そして、今度は左右の脚にしがみついてきた。
「このまま寝たら、怒られるなのです」
「ご奉仕、しないと」
どういう訳なのか分かった。
微かに残っている性奴隷時代の記憶が反応しているのだ。
彼女らを性奴隷として使っていたルクスの歪んだ性癖に他ならない。
寝る時は必ずご奉仕をさせていたのだ。
名前以外のほぼ全てを忘れた2人に残る、微かな記憶。
それが性奴隷としてご奉仕してきたものとは、なんと悲しいことか。
こちらまで涙が流れそうになった。
「そんなことするな」
俺は2人を止めて、ベッドの上に座らせる。
「お前達の頭には、忌まわしき記憶の残滓が存在しているだろう。しかし、それらは全て忘れるんだ。ご奉仕をする必要なんかない。自由に生きていいんだ」
「パパ……パパ……!」
「お父さん、ローナ、うぅぅ……!」
ミイナとローナは思いっきり泣いた。
そんな2人を抱きしめながら眠るのだった。
◇
数日後、ミイナとローナは冒険者学校に入学した。
この国でも屈指の名門校らしく、アリサが羨ましがっていた。
ミイナとローナは、ひとときも俺から離れたがらない。
そんな2人が学校へ通えるか不安だったが、問題なかった。
「行ってきますなのです!」
「学校、頑張る」
初日こそ嫌がったものの、2日目以降は普通に通学していた。
学校生活は順調のようで、早くも友達ができたらしい。
俺の生活も順調そのものだ。
「ミイナ達は学校へ向かい、リリィはリムノーレと魔法の特訓。となると……分かってるよな?」
我が家の玄関で、隣に立つアリサの腰へ腕を回す。
「ジーク、たまにはまともにデートとかしようよ」
「デートもいいけど、まずは部屋で楽しもうぜ」
「ほんと、変態なんだから」
「でもアリサだって乗り気じゃねぇか」
「ぐっ……否定できない自分が悲しい」
俺はアリサと共に部屋へ向かった。
◇
そんなこんなで数週間が経過した。
今日もまたのんびりした1日を送ろう、などと思った朝のことだ。
「ジーク様はおられますでしょうか」
国王の使者が家に来た。
「どうした?」
「急ぎ王城までお越し下さい! 国王陛下から緊急のご依頼です!」
「緊急……? いいだろう」
「ありがとうございます! ではこちらの馬車に――」
「いや、馬車には乗らない」
「えっ」
「自分で移動した方が1兆倍は早く着くからな」
皆に「行ってくる」と言い残し、俺は家を出た。
城に到着したのは、家を出たコンマ1秒後のことだ。
「うお!?」
「いきなり人が現れた!?」
周囲の人間が驚愕する中、堂々と城の中に入っていく。
初めて城に来た頃と違い、今の俺は顔パスで入ることができる。
それどころか、城内の者は俺を見ると深々と頭を下げるのだった。
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