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違法奴隷を扱う裏組織⑥

「逮捕! 逮捕! 逮捕ォ!」


 その場に居た組織の幹部連中が軒並み逮捕されていく。

 ルクスの死亡により、連中は完全に意気消沈していた。

 組織が崩壊するのは確実だろう。


「これでよし」


 悪党が逮捕されている間、俺は幼女の救済に励む。

 魔力をもって薬を抜き、改竄された記憶も戻していく。


 更に彼女らの両親を元に戻す為の術を授ける。

 解毒作用を持つ我が魔力を幼女達に纏わせておいたのだ。

 あとは幼女達が両親のところへ帰れば、両親も回復するだろう。


「問題はこいつらだな……」


 ただし、ミイナとローナだけは例外だ。

 彼女らは長い時間をかけて薬漬けにされ、記憶を改竄された。

 さらには洗脳もされていた為、元通りにするのが困難な状況だ。


 俺の救済方法は、パズルに似ている。

 バラバラになった記憶のピースを繋げていく作業。

 しかし、彼女らには記憶が残っていなかった。


 忘れているのではない。

 完全に消失してしまっているのだ。

 それを復旧することは、何人(なんぴと)にも不可能である。


 つまり、目を覚ましたミイナとローナは――。


「ここはどこなのですか?」


「私、自分の名前、覚えていない……」


 ――完全な記憶喪失に陥っていた。


 ◇


 俺はミイナとローナを連れ帰ることにした。

 記憶がない以上、その場に放置しておくわけにもいかない。

 かといって、国王の小隊に任せるのも心許なかった。


「ミイナ……たしかになんだか、聞き覚えがあるなのです」


「ローナ。そう呼ばれると、しっくりくる」


「名前の記憶が死ななかったのは不幸中の幸いだな」


 ミイナとローナが覚えているのは、自分達の名前だけだ。

 両親の名前や顔、生まれ育った故郷のことは何一つ覚えていない。

 流石の俺でも可哀想に思った。


「パパ、これからどこに行くなのです?」


「お父さん、ローナ、眠い」


「まずは城に報告だ。それと俺はお前達の父親ではない」


 2人は俺のことを父親と信じて疑わない。

 別に俺がそう教え込んだわけでも、誤解させる行動をとったわけでもない。

 最初に接したのが俺だったから、そう誤解しているのだ。

 鳥の雛と同じである。

 ま、時間が経てば血の繋がりがないことを悟るだろう。


 ◇


 国王は深夜にもかかわらず対応してくれた。

 謁見の間に、国王や国の重鎮達が集まっている。

 そんな中、俺はミイナとローナを連れて顛末の報告を行った。


「まさかルクス牧師が裏組織を仕切っていたとは……」


 国王が信じられないといった表情で呟く。

 周囲の人間に至っては「信じられん」と口々に言っていた。


「細かいことは小隊長の報告を受けてくれ。それで報酬のことだが」


 今回はこちらから報酬を切り出す。


「そうじゃった! ジーク殿、我が国にできることであれば言ってほしい」


 そう言う国王の表情は、よく見るととても疲れているようだった。


「大丈夫か? お疲れなら別に明日以降でもかまわないぞ。老体にこの時間の活動は響くだろう。無理しないほうがいい」


「いや、しばらくはそうも言ってられん状況でな」


「というと?」


 話が脱線しているが、気になったので尋ねる。


「国の英雄と言えども、国に仕えているわけではないそなたに詳細を言うことはできないのだが」


 国王はそう前置きしてから、言葉を選ぶようにしてゆっくりと話す。


「西の友好国〈ラーカム公国〉で少し問題が起きていてな」


「ほう」


「今は錯綜する情報を整理している段階だが、中々に困っておる」


「俺の助けは必要か?」


「分からぬが……出来れば不要であってほしいものじゃ」


「そうか。なら必要になったら呼んでくれ」


「ありがとう。そなたは誠の英雄じゃな。ところで、どうしてそこまで国に尽くしてくれる?」


「ただの暇つぶしさ。気まぐれと言ってもかまわない。だから、気分が変われば手伝わなくなる。そういう人間なのさ、俺は」


「謙虚じゃな」


 正直に話しただけだが、なぜか謙虚扱いを受ける。


「パパ、カッコイイなのです」


「ジーク、英雄、すごい」


 ミイナとローナが目をキラキラさせて俺を見てくる。

 俺は「そんなことないさ」と受け流し、国王に言った。


「俺のことなんざどうでもいいさ。報酬の話に戻ろう」


「そうじゃった。何か希望はあるか?」


 ミイナとローナの頭に手を置く。


「こいつらを冒険者学校に入学させてほしい」


「ほう、学校とな?」


「未成年は学費さえ払えば好きな学校に通えるはずだ」


 前にアリサからそんな話を聞いた覚えがある。

 リリィを仲間に加えてすぐの頃だ。


 ちなみに、リリィが学校に通わないのは安全の為だ。

 王家の人間は、いつどこで命を狙われるかわからない。

 だから、基本的には学校に通わないものだ。

 専属の講師を城に招いて英才教育を受ける。


「いかにも。入学に際しては完全に平等である」


 国王も認めた。


「だから、ミイナとローナを学校に通わせてやってほしい。こいつらには身寄りがないから、自分の身は自分で守れるほうがいいだろう。だから冒険者学校が適切だと考える。それに、どちらも潜在的な戦闘能力は高い」


 潜在的な戦闘能力とは、洗脳されていた時の強さを言っている。

 あの時は強引に強化されていたが、今でもそれなの強さになるはずだ。

 もちろん鍛えればの話である。


「つまり、国のお金でその子らを学校に通わせるだけでいいのか? そなたの希望する報酬は」


「あとは住居だな。城だと窮屈な思いをさせるかもしれないから、適当に良さそうな家を見繕ってやってくれ。一等地じゃなくてもいい。とにかく普通の生活を送らせてやりたいんだ」


「入学と住居……」


「少し要求が過ぎたか?」


「そんなことない! むしろその逆じゃ!」


 国王が声を大にする。


「これほどまでの成果に対して、たったそれだけの見返りで本当に良いのか?」


「かまわないさ」


「ジーク殿、そなたという男は本当に器が大きいものじゃな……」


 国王が感動の涙を流している。

 周囲の官吏にしたって同様に感動していた。


「オッケーということでいいのかな? 報酬は」


「もちろんじゃ! 直ちにそなたの希望を叶えよう!」


 疲れ切った国王の顔が微かに明るくなる。

 ――が、しかし。


「いやなのです!」


「ローナも、いや」


 ミイナとローナが首を横に振った。


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