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違法奴隷を扱う裏組織②

 違法奴隷業者をとっちめる。

 その為には、奴隷について詳しくなる必要があった。

 王城を出た俺は、その足で合法奴隷の売買を行う奴隷商館に足を運んだ。


「こちらが当店で取り扱っている奴隷となります」


「全て合法奴隷なんだよな?」


「もちろんでございます! 国の認可を受けて営業しておりますので!」


「なるほど」


 奴隷商館の中では、首輪を付けた奴隷達が自由に生活していた。

 奴隷という言葉から小汚い格好を連想していたが、実際のところは大違い。

 品のある服を来て、そこらの一般庶民よりも立派な暮らしを送っている。


 奴隷の性別や年齢、それに種族は色々だ。

 比率は男のほうが圧倒的に多くて、男8割の女2割といったところ。

 奴隷達には、奴隷であることを示す〈隷属の首輪〉が付いていた。


「価格は奴隷の種類によって異なりまして、若い者ほど高額です。また、種族は人間が最も安く、別の種族になるとグッと跳ね上がります」


 奴隷商が一目で分かる価格表を見せてくれた。

 安い部類に入る奴隷でさえ、目玉が飛び出そうな程の価格だ。


「よく分かった。実際に適当な奴隷を呼んでくれ。近くで見てみたい」


「かしこまりました」


 奴隷商が付近にいた奴隷を呼び寄せる。

 20代半ばと思しき男女の奴隷が目の前にやってきた。


「この首輪が〈隷属の首輪〉なんだよな?」


 奴隷の首輪を指して尋ねる。


「さようでございます。この首輪の効果により、この者共は奴隷として行動しています。〈隷属の首輪〉に関する詳細な説明をお求めですか?」


「いや、それはいい。それより気に成るのは、この首輪は強引に外すことができないのか? 見た感じ、それほど強固な素材を使っているようには見えないが」


 〈隷属の首輪〉は、一見すると容易に外せそうだ。


「強引に外すことは不可能ですよ。この首輪は特殊な魔法によって繋がっている為、魔法を解除しない限りは外れません。力尽くで千切ることなどもってのほかです」


「本当に? 試してもいい?」


「かまいませんが、奴隷に傷を付けた場合は買い取っていただきますよ」


「分かっているさ」


 俺は女奴隷の首輪に右手で触れ、ほんの少しだけ魔力を流し込んだ。

 すると、首輪はパキンッと音を立てながら粉々に砕け散った。


「ほら、外せたぞ」


「そんな……!? どうして……!?」


 驚愕する奴隷商。

 奴隷の女も「えっ? えっ?」と困惑している。

 それに気づいた他の奴隷達も驚いた様子でこちらを見ていた。


「どうしようか、首輪が壊れてしまったようだが」


「ひ、ひぃいいいいいいいい!」


 奴隷商が小便を漏らしながら逃げていく。

 俺のことを化け物でも見るかのように恐れて。


「ま、いいや。俺の知ったことじゃないな」


 奴隷についての理解が深まったので、俺は奴隷商館を後にした。


 ◇


「良い奴隷は見つからなかったようだな」


 奴隷商館を出てすぐ、知らない男が声を掛けてきた。

 フードを深く被って、周囲から顔が見えないようにしている。

 見るからに怪しい。


「あんたは?」


「良質な奴隷の売り手を知っている者さ」


 違法奴隷の売り手だな、とすぐに分かった。


(やはり奴隷商館で張っていたか)


 違法奴隷の売り手と接触する術について、俺は事前に考えていた。

 俺が売り手だったら、どうやって買い手を見つけるのか、と。

 その結果、合法奴隷を扱う奴隷商館で張るのが最良、との答えに至った。

 奴隷商館に訪れる客は、間違いなく奴隷に興味がある。


 だからもともと、この後も何店舗が奴隷商館を回る予定でいた。

 そうすれば相手のほうから接触してくるに違いない。


(まさか最初の商館を出たところで話しかけられるとはな)


 願ったり叶ったりとはまさにこのこと。

 この機を逃すことはできない。


「良質な奴隷……興味があるな」


 俺は前向きな姿勢をアピール。

 男はニヤリと笑った。


「ならこのカードが役に立つぜ」


 そう言って、男が手のひらサイズのカードを渡してきた。

 地球の日本で暮らしていた頃に見た〈名刺〉なる物を彷彿とさせる。

 カードには、4桁の数字と場所、それに日時が書いていた。


「書かれている日時に、書かれている場所に行き、このカードを渡すといい。そうすれば、こんな店とは比較にならない良い奴隷と巡り会えるだろう」


 男はこちらの返事を待たず、近くの路地裏へ消えていった。


「面白いことになってきたな」


 空を見上げながら呟く。

 折角なので、もらったカードの情報に乗っかってみよう。


 ◇


 数日が経過し、カードに記載されている日がやってきた。

 指定時刻の深夜になると、俺はカードの場所に1人で向かった。


 そこは、王都の富裕層が集まる区画にある酒場だった。

 小さな酒場で、多くの客がカウンターで酒を飲んでいる。

 奥には個室があって、その扉の前に屈強な男が1人。


「いらっしゃい! 何にしやす?」


 店に入ると、店主が威勢の良い声で話しかけてきた。

 本当にここで合っているのか、と不安になる俺。

 アリサから教わった話だと、この場所で間違いないはずだが。


「このカードに書かれている場所はここだよな?」


 分からないので店主に尋ねる。

 カードを出した瞬間、店主の顔付きが変わった。

 優しそうな笑みが消え、威圧感の溢れる真顔になる。


「奥へ行きな」


 店主はそれだけを言うと、俺が目を逸らした。

 俺は言われた通りに奥に向かい、個室の前の男にカードを見せる。

 男はカードを確認すると、「どうぞ」と個室へ入るよう促した。


(こんなところで売買が行われるのか? それとも今日は顔見せだけか?)


 そんなことを思いながら個室の扉を開く。

 すると扉の向こうにあったのは、個室ではなく階段だった。

 真っ暗な地下に向かって螺旋階段が伸びている。


 俺はゆっくりと階段を下りていく。

 しばらくは真っ暗だったが、次第に下から明かりが入ってきた。


(なるほど、店は入口の1つってことか)


 階段を下った先は、巨大な闘技場の観客席に繋がっていた。

 観客席に繋がる階段は無数にあり、他の階段からも人が下りてきている。


 闘技場のグラウンド中央には、台が用意されていた。

 その台に向けて、全方位から無数のスポットライトが照射されている。


「今日こそ奴隷を買うぞ」


「エルフこねぇかな、エルフ」


「あー、待ち遠しい!」


 観客席の大半が既に埋まっている。

 俺も適当な席に腰を下ろした。


「皆様、大変お待たせいたしました!」


 司会の男が台の横で話す。

 顔面に白いドーランを塗りたくった不気味な男だ。


「「「「待ってました!」」」」


 司会の声に反応して、観客席から歓声が起こった。


「それではこれより、奴隷オークションを始めさせていただきます!」


「「「「うおおおおおおおお!」」」」


 ここで奴隷の販売を始めるようだ。

 この時点で、扱っている奴隷が違法奴隷であると確定する。

 奴隷商館以外で奴隷の売買を行うことが違法だからだ。


「ロットナンバー1番! 両親を失った5歳の女の子!」


 司会の声に合わせて、1人の奴隷がグラウンドに顔を出した。

 布キレのようなボロ服を身に纏う幼女だ。

 幼女は虚ろな目で、中央にある台の上に立った。


「合法奴隷とはまるで扱いが違うな」


 奴隷は満15歳以上という法律がある。

 この世界だと15歳から成年として扱われるからだ。

 5歳の時点で奴隷化していることも、違法奴隷であることを裏付けていた。


「こちらの幼女、100万ゴールドからスタートです!」


「200!」「400!」「800!」


 オークションが始まるやいなや、怒濤の勢いで価格が上がっていく。

 その間も、台の上に立つ奴隷幼女は無表情だ。


「洗脳されてるな」


 幼女はどう見ても洗脳状態にある。

 そういえば違法奴隷は洗脳して奴隷化する、と国王が言っていたな。

 まさにその通りだ。


 その後も、主に未成年の女児ばかりが競りに出された。

 出品された奴隷幼女は、例外なく目がうつろの洗脳状態だった。


「以上で本日のオークションは終了となります!」


 全ての競りが終わると、司会がオークションの終了を告げる。

 多くの観客が興奮冷めやらぬ様子で螺旋階段を上っていく。

 落札した者だけが、螺旋階段とは別の場所へ案内されていった。


 俺は落札者の1人に、マーカーを付けておく。

 俺にしか見えない魔力のマーカーで、これがあれば居場所を特定できる。

 今は事を荒立てたくないので、大人しく螺旋階段を上がって外に向かう。


 その1時間後、俺はとある路地裏にいる落札者へ接近した。

頑張って更新していきます!


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