押すな押すなは押せ理論
説明回です。
話しほとんど進んでない…
今日も朝からぐーるぐるっと。
何を回してるかって、体内魔力を循環させてるのだよ。
全ての魔法は魔力操作から始まるのだ。どんな高度な魔法を覚えても魔力操作が疎かでは意味を成さない。
魔力というのは生命から自然発生するエネルギーの様なものだ。全ての生き物は動物も植物も魔力を発していて、食事や呼吸などを通して体内に摂取する事によって生命を維持しているらしい。
そういう世界規模の魔力循環と別に、体内の魔力を循環させるのは、血管が主な役割を果たしているそうだ。
じゃあ体内の魔力を動かすには血流をコントロールするのかというと、そんな訳では無い。
そんな事やったら心臓に負荷掛かりすぎて死ぬる。
単に魔力と血液の親和性の問題で、血に宿った魔力を意思によって乖離させて集めたい所、放出したい所に合わせて動かすのを魔力操作と言うのだ。
わかったかねチミぃ。
全部爺ちゃんの受け売りだけど。
まだ坊ちゃんには理解出来んだろうがと言いつつ律儀に全部説明してくれる所に愛情を感じるね。
気を付けなきゃいけないのは、魔力を体内から乖離させた状態でコントロールを失う事。
魔力を動かすのは意思の力が必要なのだが、体内から乖離した魔力というのは身体の表面に浮きやすい性質を持っている。体内から乖離する指向性と、血液への親和性による引力が引き合って膜を貼る様になるんだ。
その状態を続けると通常放出されていく魔力が膜の中で膨張していき、そのまま個人のキャパをオーバーしてしまうと、暴発を起こし大惨事になる。
所謂魔力暴走ってやつだね。人間風船爆弾みたいだな。
ちなみに昨日外壁をぶっ壊す暴れっぷりを披露した俺だけど、別に魔法が使える様になった訳では無い。
あれはあくまで爺ちゃんの魔剣の力であって、俺が魔法の才能を開花して俺TUEEEEになったんじゃ無かった。
試しに同じ要領で魔力を手のひらに集めてはぁっ!ってやってみたけどそよ風も起こらなかった。
爺ちゃんとマイヤが生暖かい目で見てたな…
それでも魔力量はかなりのもんらしい。あの魔剣であれだけ魔力を吸われて放出したのにケロッとしているのは、普通に考えるとありえないんだとか。
特殊属性なのも含め、しっかり学べば宮廷魔導師にも確実になれる素質を持ってると褒められた。
そんなもんになりたいとは思わないけど、楽に生きて死なない程度の能力は持っておきたいからね。
せっかく生まれ変わったんだ、前世の様にヘコヘコ頭下げて、毎日空気読んで、それでもカツカツな生活なんてもう願い下げだ。
自由に、自分の思う通りに生きて行きたい!
まぁ目下意味の分からない軟禁生活なんだけどさ…
ところで昨日の罰なのか知らないが、マイヤから今日は屋敷で謹慎を言い付けられている。
てか普段から出るなと言われてるのに改めてそう言われると、じゃあいつもは別に出ても良いんだなって思っちゃうのはひねくれ過ぎ?
さすがに今日くらいは言い付けを守ってやろうかと思って、自分の部屋から窓の外を眺めながら魔力操作の練習に勤しんでるという訳。
ナルヴァは温暖で気候も良い土地柄なんだが、今は晩夏というのもあってめちゃくちゃ暑い。
丘の上の離宮だからまだ風通しも良く日陰は過ごし易いけど、出来るならまた湖に行って水浴びしたいところだ。
溺死の恐怖が若干トラウマになって居るが、この猛暑ではそれも気にならない程だ。
「暑っついなぁー」
日が高く昇るにつれて南向きの窓から陽射しが射し込んで来る。
いい加減魔力操作を止めて窓から離れようとした時、視界の隅の何かが気になった。
方角的には湖へ向かう小路だ。
白い物が走って行く姿が見える。あれ?なんだこの既視感。
「シロ!?」
思わず叫んで部屋を飛び出した。
魔法の設定ちゃんとして無かったのでとりあえず魔力の定義から。