考えるんじゃない!感じるんだ!
屋敷の庭に出て向かい合う。
魔法の練習だと言うのに何故か爺ちゃんはごつい剣を持って来ていた。
まぁ見てくれからして元剣士と言われた方が納得行くくらいイカついんだけどね。
剣を腰に下げた姿はまるでどこぞの騎士様の様だ。
「昔は魔剣士という異名を持って、マール公騎士団にその人ありと恐れられてましてね」
短く刈り上げた銀髪を恥ずかしそうに撫でてながら爺ちゃんが説明してくれた。
てかまた心の声漏れてました?
「それでこの剣はマリオン様より頂いた貴重な魔剣なんですよ」
へぇ、そうなんだ。爺ちゃんはマリオン様の騎士団に居たのか。なんか納得だわ。
てか魔剣かっけー!俺も欲しい!
「あげませんぞ…」
爺ちゃんがジト目で睨んでくる。めんごめんご。
「とりあえず、持ってみてくだされ」
警戒しつつも鞘から抜き放った魔剣を渡して来る。
恐る恐る受け取って、剣先を上へ向けて刃をしげしげと眺めた。
不思議な色を湛えている。ゆっくりと淡く明滅している様な、じっと見てると何か吸い込まれそうだ。
「その剣は魔力を吸い取る力がありましてな、吸い取った魔力を属性に変えて威力を底上げしてくれるという優れものです。坊ちゃんは魔力の流れを感じた事は?」
ブンブンと首を振る。そんなの分かってたら自力で何とかなりそうだよな。
「では手本を見せますぞ」
俺の手からまた取り上げると爺ちゃんは、むんと唸って剣を上に掲げた。
ブワッと噴き上げる様に、赤い炎の様なものが剣から迸る。
「この剣が面白いのは、持ち主の得意属性に合わせた力を発揮する所です。儂は火属性が得意じゃから火焔剣になる。婆さんだと流水剣ですな」
すごいな。てか何気に婆ちゃんも魔法使えるのか。
そっちのが驚きだわ。
「クレタも天才じゃから…」
天才のバーゲンセールか。てか心読むのやめてください。
「まぁそんな訳で、もう一度持って見て下せえ。先ずは魔力の感覚を掴む為に、剣に身を任せて」
…剣に身を任せるってなんだよ。どうすりゃいいのか全然分からん。
いや、なんか剣が重くなって来たかな?腕がダルい。これが吸われてるって事なの?
「吸われてる感覚が掴めたら、今度はそれに逆らって」
逆らうってなんだよ!
分かんねーよ!
とりあえず息止めて力んでみたが全然ダメだ。止まってる気がしねえ。
「力んだらダメでさ。息も止めないで深呼吸して。息を吸うように魔力も吸い込むイメージで」
すぅーっ
はぁーー
すぅーっ
はぁーーっ
おっ?ちょっと止まったかも。
「今度は逆に魔剣に流し込むイメージ」
よしっ、うぉりゃ!
剣をおもむろに前に突き出すと、気を吐く様に声を上げた。
轟と音を立てて剣先から勢い良くエネルギーが迸る。炸裂音を上げながら庭の外壁が一部弾け飛んだ。
「なっ……」
爺ちゃんは顎が外れそうなくらい大口を開けて固まっている。
俺も突き出した剣をそのままに鼻水垂らしながら動けない。
え……これどうすりゃいいの?
突然の炸裂音に屋敷から皆わらわら出て来た。
「あらあらあら、坊ちゃん派手にやったのね」
口許を隠しながらほほほと婆ちゃんが笑った。
あんたが一番大物だわ。
「…ベン、後で修理をお願いね」
マイヤが頭を抱えながら庭師のオッサンに頼んだ。
「お、おほん。とりあえず坊ちゃんの得意属性なんじゃが…」
爺ちゃんが咳払いしながら気を取り直して続ける。
「あ、うん。僕の得意属性は何だった?」
「実は良く分からん」
なんでやねん!
つい裏拳でツッコミ入れそうになったがグッと我慢する。
「見た事無い魔力の色じゃった。大体属性ってのは基本的が四大属性に分けられるのは分かるかな?」
あー、うん。良く漫画やゲームで出てくるやつね。
四大って事は火、水、風、土ってところかな。
こくりと頷くと爺ちゃんが口を開く。
「大抵はこの四つに分けられるんじゃが、稀に特殊属性を扱う者も居る。しかしこれがほんとに珍しくてな、そうそうお目にかかれるもんじゃ無い。多分ユリアン坊ちゃんはその特殊属性の才能がある」
おおぉ…
俺も含め、皆がどよめく。
なんだかよく分からないがとにかく何だか凄そうだ。
「まぁそれが何かは儂には分からんがの。とりあえず得意属性じゃ無かろうが魔法が使えないって訳じゃない。先ずは魔力操作を念入りに練習する所から始めるぞい」
へーい。何事も基礎が大事ってね。
しかし俄然楽しみが出来た。こりゃ早く書斎の文献漁ってみたいな。文字の勉強も頑張らないと。
皆はマイヤの指示で仕事に戻って行った。
その日は日が暮れるまで爺ちゃんの教えに従ってずっと魔力のコントロールの練習に勤しんだ。
思ったよりPV伸びてて嬉しい。
ぽっと出の続くか分からない作品なんて見向きもされないと思ってた。感謝(*´ω`人)感謝