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転生したのに軟禁生活が待っていた件(仮題)  作者: 百虎
溺れて始まる軟禁生活
2/23

まほうつかいになりたいな

「ステータスオープン」



……


………………


何も出ねぇじゃねーか!


ナルヴァの丘を吹き渡る風の音が良く聴こえる。


とりあえず転生と来たらこれじゃね?と思って言ってみたけど何も起きなかった。

どっから見ても変なおじさんもとい変な子供ですすみません。


念の為誰も居ないところで試して良かったぜ。マイヤ辺りから生暖かい目で見られるところだった。

熱くなった顔を手で扇ぐ。


まさかほんとに魔法が無い世界とか言わないよね?

人差し指を前に出して火が出るイメージを想像する。


「火よ」



……


………………



いやわかってたけどね!


むしろ顔から火が出たんだけど!


んー、とりあえず情報が必要だな。


屋敷の書斎、使って良いか後で聞いてみよう。


丘の小路をとぼとぼと屋敷へ向かって降りて行く。


しっかり人の手で整備された美しい景観が心を慰めてくれる。


このナルヴァ村の丘にある屋敷は、ナルヴァの離宮と呼ばれている。ファリア神国南部を治めるマール大公爵様の領地の南の端っこに位置するらしい。


ナルヴァの離宮は、マール大公爵家がお忍びで利用する避暑地なんだとか。


昨日爺ちゃんに聞いた。


どうりで立派な屋敷だと思った。館の両脇に塔まであるからね。塔の上からだとナルヴァの田園風景が一望出来る。


そんな大身の貴族様の別荘にしちゃ家人が少な過ぎやしないかとも思うが、屋敷の維持管理は村から手伝いが来るので特に困っては無い。


侍女も二人居るが、彼女達は村から通いで来ているそうだ。


部屋余ってるんだから住込みで働けば良いのにと思うのだが、ご当主様のご意向とかでダメなんだと。


べ、別に寂しいとかじゃ無いからね!

夜中トイレに行くのが怖いとか思って無いから!



なんてアホな事考えてるうちに屋敷の裏口に着いた。敷地の周りを頑丈な石壁がぐるりと囲んであるが丘の頂きへ向かう裏口には木戸が付いていて、抜け出すには都合がいい。


裏木戸を潜ると爺ちゃんが薪割りをしてる所に出くわした。


「坊ちゃんまた屋敷抜けてたんですかい?マイヤが勉強の時間なのに帰って来ないって探してましたよ」


呆れ顔の爺ちゃんだが、怒ってはない。男の子は元気な方がいいと思ってるみたいで、よく庇ってくれる。


「マイヤはどこにいるの?僕も用があったんだ」


まぁ怒られるのは覚悟の上、てかあまり気にして無い。ぶっちゃけ前世の記憶を取り戻した今となっては説教オバサンと言っても俺の方が年上な訳で、怖くも何ともない。


「算術の勉強の用意をして二階に居ますよ」


ニッコリしながら爺ちゃんが教えてくれる。そうしながらまた斧を振るって薪割りに戻った。

それにしても爺ちゃん、パワフルだな。もう結構歳なはずなのに背筋もピンとして、まだまだ若いもんには負けんって感じだ。


走って勝手口から屋敷に入ると、厨房で食事の用意をしている婆ちゃんに会った。


「あらあら、そんなに慌ててどうしたんですか?もうすぐお昼ご飯の用意が出来るからちゃんと手を洗って下さいな」


手桶に水を入れて差し出してくれたのでバシャバシャと手を洗う。


「ありがと婆ちゃん!でもマイヤが待ってるみたいだからちょっと行ってくる」


そう言って思いっ切りギュッと婆ちゃんに抱き着くと、また走って二階へ向かった。


婆ちゃんの優しい匂いが弘幸の子供時代を思い出させて切なくなった。



「ユリアン様!また黙って屋敷を抜け出して!まったく…ってどうしました?そんな顔して。何かあったんですか?」


俺を見るなり説教を始めようとして、ふと怪訝そうな顔をしながらマイヤが尋ねる。


その顔が今度は母親に重なった。


そうだよな…俺死んじゃったんだよな。


もう寿命が近い婆ちゃんに最期に顔を見せて、久しぶりに家族三人でのんびりしようと思ったのに。


俺が先に死んじゃって、婆ちゃんまでもし亡くなっちゃったら、母さん独りになるのか…


最悪の親不孝しちまったな…



気付いたら涙が零れていた。

子供の身体になったせいで感情の起伏が激しくなってるのか?


泣き顔を見られるのが恥ずかしくてマイヤに抱き着いてエプロンに顔を埋める。


マイヤは一瞬困った顔をしたが、すぐに優しい顔になると俺が落ち着くまで頭を撫でてくれた。




杉田弘幸は母子家庭の一人っ子です。

ユリアンは天涯孤独。


肉親の記憶は前世の婆ちゃんと母さんのみ。

ユリアンの生い立ちについてはぼちぼち語っていきます。

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