チート主人公
アレン達を縛っていたロープを使って、逆に盗賊達を縛っていく。
身体強化まで使ってガチガチに縛ってるのでそう簡単には外れないだろう。
騒ぎ出さないように自分たちのズボンを脱がせて口に突っ飛んだ上に縛ってるので大丈夫だろう。
見た目にかなりマヌケだ。
「な、なぁ。なんでおれたちを助けてくれたんだ?あんなにひどいこと言ったのに…」
カイトが気まずそうに俯いて言う。
悪いと思ってるのだろうが、素直になれないのだろう。可愛いもんじゃないか。
「ああ、まあ…ついで?これからニーナを助けに行くし」
「つ、ついでかよ!まあでも…たすかった。…ありがとう」
ツンデレかよ。ショタホモじゃないので尊いとか言いません。
「ニーナを助けに行くならおれたちもつれていってくれよ!」
アレンが必死の形相で詰め寄る。
「ダメに決まってるだろ。二人は今すぐ村に帰れよ。皆心配してる」
「けど!二人じゃ危ないだろ!?」
何としても連れていって貰いたいらしい。本当は好きなのに意地悪してしまった。そのまま行方不明になったニーナに対する罪悪感が半端ないのだろう。
だがそんな感傷に付き合ってやる程、親しい間柄でもない。
第一邪魔でしかない。
「お前らが来て何の役に立つんだよ。守る対象が増えて足でまといになるだけだ。とにかく時間も無い。さっさと家に帰れ」
それだけ言って踵を返す。
今の間に再度索敵して位置が変わっていないのは確認済だ。
「ああ、そうだ。お前ら丘の離宮にひとっ走り行って、ここに三人転がしてる事を伝えておいてくれ。じゃあな」
それだけ言い捨てると、シュアンと目配せして消えるようにその場を離れた。
本当なら捕虜にした盗賊に色々と吐かせておきたかったんだけど、ニーナの無事を何よりも早く確認しなくてはならない。
森の木こり小屋は少し離れた場所にある為、また身体強化を使って先を急いだ。
――――――――――
side:アレン
「くそっ!なんなんだよ!」
思わず握ったゲンコツを地面に叩き付けた。
「アイツだって俺らとかわらねえチビじゃねぇか!」
「でもくやしいけどアイツめちゃくちゃ強いぜ。たぶん村一番のゼンさんより」
カイトが面白くなさそうに吐き捨てる。
そんなこと言われなくても俺だってわかってるさ。
でも、だからって!
「俺もつよくなりたい…」
もう一度、今度は弱々しく地面を殴って思わず呟いた。
木々の間を抜ける風のざわめきがアレンの呟きをかき消して行く。
カイトは何を考えているのか、そっぽを向いたままだ。
「はぁ、とにかく丘の上に報告しにいこうか」
情けないけど、今できることはそれだけだ。
でも、いつかは…
今はまだ気付いていない。
力も弱く何者でも無い自分が初めて持った感情に。
今はまだ知らない。
彼は後に、『王の盾』と呼ばれる様になる未来を。
二人の少年は重たい足を引きずって、丘の斜面を昇って行った。
――――――――――
森の中はもう陽が落ちてかなり薄暗くなっている。
後を着いてきているシュアンが迷わない様に片手に灯り魔法を出して、目印にして進んだ。
足元に古いレンガの趾がちらほら見え始め、旧街道趾にたどり着いた事を悟る。
あの馬鹿ガキどもはちゃんと離宮に報せに行っただろうか。
今はもう目の前に木こり小屋の灯が見えて来た為あえて探知はしていない。
人の配置はおおよそ頭に入っている。
扉の前に二人。小屋の中にニーナを除き四人。
そのまま押し入ってもニーナを人質に取られておしまいだろう。
さて、どうするか…。
クラト先生が居れば何らかの策を考えてくれたのだろうが、あいにく俺もシュアンも何の方策も思いつかない。
取り敢えず、死角から近づいて見張り番を無力化するか?
いや、音を立てずにやるのはかなり難しい。
万一気付かれでもしたら結局終わりだ。
んー、外から中のヤツらを無力化するにはどうしたらいい?
範囲魔法使いで攻撃すればニーナまでダメージ食らうし、下手したらお陀仏だ。
眠らせる魔法は一応、某ゲームを参考に開発してるんだけど、一人ずつ眠らせてたら気付かれてしまうよな。
ん?範囲にかけられれば良いんだよな?
思い付いてしまった。やっぱ俺チートだわ。多分。
結界魔法だよ!指定した範囲に様々な効果を付与する魔法だってクラト先生が言ってた!
やり方は探知魔法である程度わかってる。
魔力察知を睡眠魔法に置き換えるだけでいい。
慎重に魔力操作だけ間違わない様にすれば…
「範囲睡眠魔法」
魔法名は気分で言った。後悔はしていない。
しばらく様子を見ていると、見張りの二人が崩れ落ちるように倒れ、深い眠りに就いた様だ。
ゆっくり近づいて窓から中の様子を窺う。
中も同じ様に野郎どもが折り重なる様に眠りに就いていた。
ニーナも小屋の隅っこで丸くなって寝ている。お前は猫か。
取り敢えず乱暴はされていない様で安心した。
幼女趣味の変態野郎が居なくて良かった。
こっそり中に忍び込み、ニーナを抱えて一旦外に出る。
幸せそうにヨダレ垂らして寝てら。案外図太いのかも知れない。
ニーナを取り敢えず外に出して近くの木の根元に寝かせる。
後は寝ている盗賊どもを拘束して終わりだ。
振り返った瞬間、顔の横を火の玉が通り過ぎた。
あっぶねぇ!
せっかくの美少年が台無し…じゃなくて後ろのニーナに当たるとこだったぞ!
「ぐわっ」
「気を付けるのじゃ。油断大敵!」
気付いたらもうシュアンの石弾で伸された後でした。
チート主人公は俺じゃなくてコイツなんじゃなかろうか。
「他の奴らが目を覚ます前にさっさと拘束するのじゃ」
はいすみませんでした。
縛る物が無かったので、二人で手分けして土魔法で拘束具を作成した。
まあ後ろ手に組ませて、手首から先を土玉を硬化させただけのお手軽設計だ。単純な分強度には自信がある。
魔法を使える奴が居たので安心は出来ないが。
しばらくして松明の灯りがちらほら見えて来た。
先頭に居るのはクラト先生だ。爺ちゃんも居る。
村の男衆も何人か連れて来ている様だ。
「ユリアン様、シュアン様。話を聞いた時は肝が冷えましたよ。
あまりご無理なされないで下さい」
安堵顔でクラトが話し掛ける。
「それにしても、ご活躍だった様ですな。まあ二人の実力は知って居るから心配はしておらんのじゃが、それにしても呆れるほど手際が良いのう」
爺ちゃんは呆れ顔で苦笑いだ。
いやぁ、それほどでも。
「ところでクラト先生、コイツらの目的って…」
「それは屋敷に帰って尋問してからにしましょう。ここではちょっと」
クラトが遮る様に言う。
それもそうか。
「ニーナ!無事か?」
ガタイのいいオッサンが眠っているニーナを抱え起こして揺すっている。ちょ、それ普通に痛いと思うんだが。
「んー、い、痛い…」
「痛い!?何処か痛いのか!?」
だからそれあんたのせいや。
「あ、あれ?おとうさん」
やっと目が覚めて来たのかニーナはオッサンの顔を見て、自分が助かった事に気付いたのだろう、後は泣きじゃくってオッサンを困らせていた。
「とにかく、御礼申し上げます。村の子供達を救って頂き感謝にたえません」
小太り村長が汗を拭いながら頭を下げると、村の男衆も皆それに倣った。
まあ、無事で何より。
多分シュアンか俺が原因なんだろうけどね。
別人物視点はいずれ盛り込む予定でしたが短過ぎた…。
変でしたかね?
まあ今後の課題という事で。
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