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転生したのに軟禁生活が待っていた件(仮題)  作者: 百虎
溺れて始まる軟禁生活
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プロローグ

昔書きかけたファンタジー小説をなろう風にリメイク。

専らROM専だったけど、勢いで書いてみました。

轟々と音を立てて激しく雨風がうねっている。

眼前に広がる景色は長閑な田園風景から一夜にして全く別物になってしまっていた。


(こんな事なら無理して帰省しなきゃ良かったかな?)

会社の盆休みを利用して田舎に帰ろうとしていたら、帰るタイミングで台風が近づいて来ていた。


母からは無理して帰って来なくていいと言われたけど、高齢の祖母が体調を崩していると聞いていたので顔を見ておきたかった。


もしかしたら顔を合わせるのは最後になるかも知れないという想いは口に出来ない本音だ。


予定を早めて夜のうちに新幹線に乗ったが、案の定翌日乗る予定だったやつは運休になっていた。


一夜明けても激しく打ち付ける雨が強風に煽られて霧のようになって行く。

どこかの屋根が飛ばされたのか、家の前の田圃に裏返しで横たわっているのが二階の窓から見えた。


そんな状況なのに外に出てしまったのは、窓から走って行く白い姿が見えたからだ。庭から車庫の中に繋ぎ直していた飼い犬のシロが、どうやってかリードを外して逃げたようだ。


家には祖母と母の二人しかいない。唯一の男である俺は、心配する母を後目に雨合羽を着込むと、愛犬を探しにシロが走り去った方へ風雨に耐えながら歩いた。


「シロ!どこだ!」


風の音にかき消されるように小さく吠える声が聴こえる。田圃の脇を流れる川沿いの雑木林に白い姿が見えた。


水位がかなり上がっている川に近づくのは恐ろしかったが、向こう岸にシロが怯えたように彷徨いている姿を見て、意を決して橋を渡ろうとした……のがまずかった。


増水した激流が土手を削り、橋が崩れ、身体が放り出された。


それが杉田弘幸としての()()()()()だった。





―――――――――――



ここは…どこだ?


知らない天井だ。てか天井が高いな。

目が覚めたらフカフカのベッドに寝ていた。それもかなり大きなベッドだ。

起き上がろうとして違和感を感じる。


んー?手が短い?誰の手だ…って俺の手か!


「坊ちゃま!お目が覚めました?」


汗を拭う布巾とタライを手に女官が部屋へ入ってきた。


「誰!?…ってああ、マイ…ヤ?」


知ってるぞこいつ、てか知らないけど知ってる!


俺付きの女官だ。いつも口やかましい説教オバサン。


「誰とはなんですか!それに説教オバサンて!心の声漏れてますよ!?それよりも、また約束破りましたね。勝手に屋敷を出たらダメじゃないですか!」


あれ、混乱してきた。知らない天井かと思ったけどよく見たら見慣れた部屋で見慣れた女官の怒り顔に聞き慣れた説教だ。


「だいたい湖に張り出した木に登るなんて、無茶にも程があります!たまたま私が通り掛からなかったら本当に危なかったんですからね!聞いてますか!?」



…ココハドコ、ワタシワダレ?


ここはナルヴァ村、わたしはユリアン…


あるぇー?



プンスカ怒っていたマイヤはそれでもテキパキと俺の身体を拭いて、プンスカしたまま出ていった。


そのマイヤの姿がちょっと可笑しくてくすりと笑ったあと、少しだけ落ち着いて来た俺は状況を整理した。


どうも突然前世の記憶が戻ったらしい。それとも魂だけ転移して子供に憑依した?

とにかく今、杉田弘幸としての記憶と、ユリアンとしてこの世界で育った記憶が混在しているらしい。


頭がこんがらがるが、思考は日本語で行っているつもりだったが、先程マイヤと会話していた言葉は今考えるとこの世界の言葉だ。


なんでこうなったのかは分からない。


でもきっかけは多分水難事故だ。


杉田弘幸は台風による増水した川に流されて溺れた。

ユリアンは屋敷の近くの湖に落ちて溺れた。


そして起きたらこうなっていた、と。


今の俺はユリアン五歳。

んー、五歳かぁ…三十歳くらい若返ってしまった。


まさかなあ。


ラノベじゃあるまいし自分が異世界転生するとは。


神様出て来なかったけど、白い部屋とか記憶無いけど、チートとか貰いそびれて無いよね?


剣や魔法、使えるよね?


…考えても仕方ない、とりあえず喉が乾いたので下に降りるか。


軽く伸びをして身体の具合いを確かめると、ベッドから滑り降りサンダルを履いて広い階段を降りていった。


…今まで疑問に思った事無いけど(ユリアンが)、この屋敷広くね?


階段を降りてホールを横切る。奥にある食堂の、更に奥にある厨房から勝手口を出て井戸へ行く。

釣瓶落としの桶を井戸の中に落として水を汲み上げようとしたが、重くて全然上がってこない。


顔を真っ赤にして体重を乗せながら引っ張っていたロープが急に軽くなった。


「また坊ちゃんは無理をして。いつも言ってるでしょうが。こういうのは儂らがやりますから、いつでも言い付けてくだせぇ」


人懐っこい笑顔で使用人の爺が後ろから覗き込んで来る。そして急に負荷が無くなって尻もちを付いた俺の前にたっぷり水が入った桶を置いてくれた。


「爺ちゃんありがと」


「とんでもねぇ、こういうのは儂らの仕事です。顔洗ったら着替えた方がいい。誰か寄越しましょうか?」


タオルを手渡しながら爺が言うのを思いっ切り首を振って断る。


「自分で出来るよ」


「じゃあ儂は厩におりますから何かあったら呼んでください」


それを聞くと嬉しそうに笑いながら、爺は歩き去った。


桶の水面に金髪の美少年が揺れている。

誰これ?いや俺だけども。


なんだか不思議な感覚だ。三十路半ばのオッサンだった自分の意識と、五歳の幼児である今の自分。どちらも違和感なく自分の事だと受け入れられている。それでいて全部嘘なんじゃないかと、漠然とした不安も感じている。


「だー!くそっ」


なんだか分からないモヤモヤを洗い流すように桶の水を掬ってバシャバシャと顔を洗った。

冷たい水が気持ちいい。もう一度水を掬って喉に流し込んだ。


ふぅっと息を吐くと、着替える為にまた自分の部屋へ戻る。

ベッドにはいつの間にか綺麗に畳んだ着替えが置いてあった。多分マイヤだろう。


ガミガミ煩いけどこういう細やかな気配りは嬉しい。


マイヤは口煩いけど俺にとっては母親みたいなもんだ。

使用人の老夫婦が爺ちゃんと婆ちゃん。もちろん血は繋がってない。


でもユリアンとしての俺には、家族と呼べるのはこの三人だけだ。

一応父親代わりの人も居るけど、滅多に会えないから普段はこの四人でやたら広いこの屋敷に住んでいる。


そして俺は、この屋敷から外に出る事を禁じられていた。






まぁ守って無いんだけど(笑)



ただそこは五歳児の体力。そう遠くへは行ったこと無いんだけどさ。


この屋敷とその近辺の林とか湖とかが、俺の世界の全てだった。



昨日までは。






なるべく更新して行きたいなぁ(願望)

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