表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/34

第30話


私達は暗闇の中、壁沿いに歩いていた。

所々に松明をかけるための金具が落ちていたり、持ち手が朽ちたつるはしが転がっていたりする。

どうもしばらく人の手が入っていないようだ。


それどころか生き物の気配さえない。

完全な密閉空間だったのだろうか。


「リン、魔石の魔力とか探せたりする?」


「うーん……やってみる?」


リンが杖をトン、と叩くと少し離れた所で青白い光が見えた。


「あれね。」


そこそこ離れているのに凄い明るさだ。

この暗闇であれだけ明るければ探すのも容易というもの。これは助かる。

リン曰く、探すものに含まれる魔力が大きければ大きいほど明るくなるという。

やはり魔石というだけあって凄まじい魔力を内包しているという事なのだろうか。



「ねえジェミニ」


「おう、なんやネム」


「魔石って何なの?なんか特別なものなの?」


「そりゃ神様が作ったもんやしな」


「ふーん……。ってはあ?神様が!?」


「せやで。この世界の創造主が大地を作るために使ったのがその石や」


「ちょっとスケール大きすぎてよく分かんないんだけど」


「その石に残っとる力は残りカスやけどな。それでも2つの世界を繋げるくらいの力はあるわけや」


神器という奴になるのだろうか。

本来ならば教会だとか王様だとかが厳重に保管して然るべき物である。

思っていた以上のお宝だった。

こんな大層なものを雑にポケットにしまっていたのに少し罪悪感を感じた。


「あったで!魔石『ハムセンの希望』や!」


私は光に慎重に近付き、石を拾い上げた。

大きさや形は『コイセンの涙』とほぼ同じ。

違うのは色くらい。


お宝をこんな適当に置いておくとは、昔のファムタズ領主殿は粗雑な性格だったに違いない。


ゴゴゴゴゴゴ……。


突然、足元から地鳴りのようなものが聞こえた。

ヘレナさんがきょろきょろしている。


「じ、地震か!?」


「もう収まったみたいだよ。大丈夫」


私は魔石をバッグにしまい込み、みんなの方を振り向いた。


みんな上を見上げている。


「ネム。僕の後ろへ!」


タツローさんが手を差し伸べてきた。


一体何なの?

私が振り返り、みんなと同じように上を見上げてみると……。


そいつは私を見下ろして腕を振り上げていた。


「ゴーレム!?」


私は咄嗟にタツローさんに手を伸ばした。

タツローさんに握られた手が大きく引っ張られる。

私は体制を崩しながら、なんとか転ばずに踏みとどまり振り返った。

直後、私がいた場所には振り下ろされた岩石の腕によって大きなクレーターが作られた。


なんて馬鹿力!

間一髪。一瞬遅れたら挽き肉だったところだ。


人間の倍はありそうな身長の巨大な石の体。

それが魔法によって操られて動くのがゴーレムだ。

動きは鈍重だが大きく、重く、硬い。


ゴーレムは自然界の生き物ではなく、メイジによって作られる兵器の一種である。

つまり、誰かがここにゴーレムを設置したと言う事だ。


昔の領主が粗雑だと言ったが、前言撤回。

至極真っ当なセキュリティです!


「頑丈そうな体だな」


拳を持ち上げて次の一撃を用意する巨人に対し、タツローさんは平然と歩み寄る。

そして大胆不敵にバットを構えた。


「ひとつ、僕と勝負してみないか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ