第24話
少し整理しよう。
タツローさんを含む12の魔神を元の世界に帰らせるには、12の魔石が必要だ。
そして、その1つを今私たちは所持している。
私達は残りの11個を探し、奇妙な魔神ジェミニと共に術を完成させなければならない。
「でも、それって私達じゃないといけないの?」
とりあえずスイベに帰ろうとする道中、リンがふと呟いた。
「魔神を呼び出しちゃったのはファムタズの連中でしょ?そいつらがやれば良いんじゃない?」
「その通りだ。責は我々にある。ファムタズ様にも私から具申するつもりだ」
リンの言葉にヘレナが頷く。
すると、ジェミニが私のバッグからヒョイと顔を出した。
「うーんこの。それはいかんでしょ」
「何故だ」
「あの領主ファムタズってのは野心が足付けて歩いとるようなおっさんや。魔神を利用する方を考えるんちゃうかな」
「馬鹿な!奴に皆殺しにされた騎士の事を考えればそのような……っ!」
「いやいや、タッツとかワイみたいなのを考えてみ?」
タツローさんが即座に答える。
「なるほど、全てが利用できないわけではない、と」
「察しがいいなタッツ。メジャー仕込みの洞察力やね」
「どうかな」
この2人、妙にウマが合うようだ。
魔神同士なにか通じるものがあるのだろうか。
「いや分かんないよ。どういうこと?」
「なんやネムちゃんはブラの中だけじゃなく頭の中もスカスカなんか?」
こいつ丸焼きにしてやろうか
「意外とエグいこと考えてて草」
「心読まないでよ。それで?」
ジェミニは短い指をピシっと立てた。
「つまりやね。確かにノウモは危険な魔神ではある。でもワイやタッツみたいな話の通じる奴もおるわけや。ほんなら、そういう奴だけ集めて仲間にすればええ」
「あ、それはそうだね。タツローさん1人でも戦争とか勝っちゃいそうだし」
「戦争か。僕はあまり参加したくはないが」
「逆に戦争大好きな奴もおるかもしれんわけや。もし危険な魔神がおっても、同じ魔神が仲間なら倒せるかも分からんし」
「ファムタズ様はタツロー殿を客将として迎え入れ、魔神討伐に乗り出すと言うわけだな!」
ヘレナさんが鼻息荒く拳を掲げる。
しかし、それではまるでタツローさんが都合のいい道具みたいだ。
彼がどう思うのか、表情からは窺い知れない。
「そういうのもやらす気かもしれんな。でも、ワイらの目的は違うやろ」
「そうだな。僕の目的は元の世界に帰ることだ。戦争したり誰かと戦う事じゃない」
とは言え、困る人を放って置けないのがタツローさんだ。
他の魔神はともかく、その騎士を虐殺した魔神と彼が対峙すればきっと戦う事を選ぶだろう。
だが、彼がファムタズに協力したくないというのも理解できる。
この魔神召喚でファムタズが始めようとしたのは領地を奪い合うだけの戦争だ。
そんなものに手を貸すタツローさんではないだろう。
「君はこの世界にも詳しいんだな」
「タッツの世界にも詳しいで。うちの世界は他の世界を覗き見る技術があるんや。君らでいうテレビみたいにな」
「それで僕の試合も見てくれたのか」
「せや!ワイはタッツの世界のやきうってのが好きなんや!特に2004年のブルーシューズとカーミナリズのWSやな!」
「確かにあれはいい試合だった!7回裏のランディが……」
なんだか私には分からない話なので、その先は聞き流した。
前方に目を凝らすとスイベの灯りが見えた。
盛り上がる2人をよそに、私は少し足取りが軽くなるのを感じた。