表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/34

第22話

「ここだな」


侵入者を拒むべき城門は朽ち、壁は崩れ、そこから覗ける広間は荒れ果てている。


この城がかつて誇った栄華も今は見る影もない。

栄枯盛衰とかいうやつだ。


我々はヤクス城に辿り着いた。


「静かね。誰もいないのかしら」


「息を潜めて我々を待ち構えているのかもしれん」


私が先頭で警戒しながら進み、リンとヘレナさん、そしてタツローさんが続く。


「階段を上がった所に王の間がある。術が行われていたのはそこだ」


ヘレナさんが門をくぐって正面にある大きな階段を指さした。

その指はかすかに震えている。


階段のところどころに血痕があるが、遺体はどこにもない。

一体ヘレナさんがいなくなった後、ここでなにが起きたのだろう。


「行ってみよう」


私達は階段を登り、ボロボロの門の前に立った。


振り向いてみんなを見る。

全員武器を構えて準備万端だ。


私は頷いて、一気に扉を押した。

軋む音を立てながら扉が勢いよく開く。

タツローさんが即座に中に飛び込んだ。

私達もすぐに後ろに続く。


そこには……えっと、『何か』がいた。


いや、何かと言われても分からないという言い分は分かる。

でも聞いて。

本当にそいつが何か、私には分からない。


大きさはウサギくらい。

二足歩行で、全身に毛がなくてつるつる。

パっと見る感じ小さい人間のように見えるが、口は尖っているし、まん丸の目がカエルのように飛び出している。

そして、頭の先から足まで全身黄色という目立つ色。

服は着てないが、仕草は人間っぽい。


それが、部屋の中央の魔法陣の真ん中に立っていた。


なにこれ。

多分、他の3人も同じ気持ち。


しばし、沈黙が場を支配する。


「うおっ!なんやお前ら!」


黄色いのが喋った。

えっ、喋れるのこれ。


「おっ、ジェイの者か?」


なんか聞いてきた。

でも何のことかさっぱりである。


「あー、ええわええわ。ワイから自己紹介して欲しいんやな?しゃーない子たちやでほんま」


饒舌だ。

変な顔なのにすごいよく喋る。


「ワイは『全てを識る者』ジェミニ。12の魔神の最後の1人や」


「魔神だと!?」


ヘレナさんが身構える。


しかし、私の中の魔神のイメージと目の前のちっこい奴のイメージが違いすぎてすんなり言葉を受け入れられない。

嘘つきの妖精か何かじゃないのコイツ。


「おっ、そこの貧乳娘は疑っとるな?」


「誰が貧乳よ!」


リンがぷっ、と吹き出す。

こいつあとで殴ろう。


「そうやなあ。例えばそこの兄さんは……ってタッツやんけ!?」


「僕の事を知っているのかい?」


「そらそうよ!あのWBT決勝のツーベースは痺れたで!なるほどなあ!あんたなら納得やで!」


タツローさんはコイツの言葉を聞いて目を丸くした。


「どうやら、彼は僕の事を知っているらしい」


「タツローさんの世界の人ですか?」


「いや……。少なくとも僕は彼のような人を見た事はない」


タツローさんはコレの事を知らないのに、相手はタツローさんの事を知っている。

どういう事だろう。


「疑問はもっともやで貧乳ちゃん」


「だから貧乳言うな!……って、心を読んだ!?」


「言うたやろ。『全てを識る者』やぞ。ええっと、ネムちゃんやな」


「私の名前まで……」


「それからおっぱい大きいのがリンちゃんで、金髪姉ちゃんがヘレナちゃんやな」


「はーい。おっぱい大きいリンでーす」


こいつ……っ!


「おっそうだな。ヘレナちゃんはちょっと『くっ殺せ』て言ってみてや」


「何故だ」


「女騎士やからに決まっとるやろ」


「そ、そうなのか。」


「流されないでヘレナさん。えっと、ジェミニ?」


「おう、なんやなんや」


「魔神って言ったけど、あなたもここで召喚された魔神の1人?」


「せやで。魔神や魔神。あ、それとやな」


ジェミニはタツローさんを指差した。


「その人もやで」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ