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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

執行猶予二日

作者: 水根 鳴海

 夜11時また世界に一つ多くの死体が転がることになった、男性のように見える。

 誰がどう見ても死んでいるような状態だった。だがそれは裏切られることになる。彼は意識だけは残っており、彼の死体の前に立つ一人の少年と意思の疎通を行っていた。3分程前の話から話始めよう。


「やぁ、気分はどうだい?」

 家で時間をただ浪費していたらいつの間にか死んでいた。言われたとおりそこまで気分は良くはない。と言っても気分がいい、なんてここ数年一度もないような気がする。そこまで話したつもりになって口が動かないことに気付いた。

「ん? あっ話せないかい? 死人に口なしというし。まぁちょうどいいじゃないか」

 確かにそれもそうだなのだろう。というか、僕の思ってること分かるのか。じゃあ口も特に必要はないのか。

「ご名答、なにか質問はあるかい?」

 じゃあここはどこで、なんで僕はここにいるんだい?

「最初の質問から答えようじゃないか、ここは死後の世界なんだけど、君と少し話がしたくて僕が設けてもらったんだ。ここ」

 成程、僕と話か……なんだろう?心当たりがない。

「二つ目の質問だけどなぜ君はここにいるのかなんだけど、君に一つ頼み事をしたくてね、申し訳ないんだけど。」

 内容は?

「あぁこれから君を2日前に戻す。誰を笑顔にしてくれ」

 これまた変わった頼み事だね

「あぁ僕の仕事でね。まぁ自分でもそう思うよ。」

 簡単に言う。気が進むことじゃないし僕は現世にあまり良い印象はないし……

「それでは善は急げ、早く君を戻そうか。」

 無理やりだ。理不尽だ。

「神なんてそんなもんさ。あぁ自己紹介がまだだったね。リアール・D・ファクト長ったらしい名前さ。好きに呼んでくれ。」

 本当に善は急げなようだ、僕の意識は即座に暗転していった。


 目が覚めた、本当に唐突に。見回してみれば見覚えがある風景で。

「近くの公園…か…」

 ふと腕をを見る夜11時頃6月27日を指す安い腕時計が目に入る、記憶の中では明日は7月に入るつまり今はまだ6月30日なはずだったのだが。

 そんなことを考えていると28,9日のあるはずのない記憶があることを思い出した。

そして不意に声が聞こえてきた。周りには人の姿は見えない、声だけが聞こえる不思議な感覚だ。

「下だよ下」それは小さな三毛猫だった。

 

「とりあえず僕の家…来るかい?」

 という提案を断る理由もないと猫はあっさりとついてきた。

 家についてベットの上を早くも占領した、恐ろしい仕事の速さだ、もし人間ならかなり優秀な人材だっただろう。

「さてまず現状確認から始めようか、君は?ファクトが言ってた助っ人なのかい?」

「あぁそういう認識で構わない、僕もファクトに頼まれた、もとい押し付けられたたちだけどね。」

 この猫も被害者なのかと急速に仲間意識が胸に染み込んできた。

「そうかい、じゃあ名前は?他の猫との区別をつける時なんて言えばいい?」

「人間の言葉が分かるだけだからね、人間のような名前ではないだろうけど△○✖□ンメクラだよ。」

「…はい?」

「あぁ人間では理解できないのか、あぁすまない馬鹿にしている訳ではないんだ、文化の違いだろう。」

「そうかじゃあ面倒だ、猫さんでいいかい?」

「あぁ問題ないよ、ホモサピエンス君」

「自分から言っておいて悪いけど、ホモサピエンスは止めてくれよ、せめて人間君で」

「ん…分かったよ、じゃあこれから宜しく人間君」

 よろしくと差し出された手を見ての3日間と何か違うことが出来るだろうかと、また憂鬱になるのであった。

「じゃあ今日はとりあえず寝る、猫さんベットの場所ちょっと開けてくれ」

 猫さんは意外と言うべきか、素直に場所を明け渡した

「今日はもう動かないのかい?」

「あぁもう深夜だ、猫は分からないが深夜に動き回る人間を基本的に不審者なんて呼んだりするんだ、僕はあまり不審者と言われたくない。」

「そうかいお休み」

「あぁお休み」

 具体的なことは明日決めればいいと楽観主義を決め込み、僕の意識は暗転していった。

 暗転する意識の中で、彼ら…猫さんとファクトのことを考える、彼らと話すと久しぶりの会話だというのにスラスラと言葉が出てくる、少々不思議な感覚だ。

 先日話したのは誰だっただろうか、確かあの少女だったと思う、今少女という言い方が合っているのか分からないが、何度振り払ってもなぜか付きまとってくるあの彼女だった、彼女は生きているのだろうか、テロの巻き添えになっているというのもあり得るな…そう思うと少々寂しい…とは一切ならないな、うんならない。

 そこで意識は完全に途切れるのだった。


 朝僕は7時には目が覚める、勝手に覚めるのだ、生まれた時からこうだったわけではないが…まぁ体なんて生まれた後の努力でいくらでも変えられるだろう。

 そういう考え方なら、僕の性格も全て身から出た錆なのだろう、反論の余地もない。

 覚醒すると、布団の中の湯たんぽに気付き昨日の記憶が夢でないことを否応にも意識させる。

 思わず目を覆いたくもなるがなんの解決にもならないためやめた、代わりにこの季節外れの湯たんぽを起こすとしよう

「ほら、起きなよ猫さん」

「んんぅうん猫は基本夜行性なんだ、寝かせてくれよ。」

「仕方なだろう?君が助けろと指定されたのは人間なんだ人間に合わせよう、恨むならファクトを恨んでくれ。」

「ファクトぉ…」

「さて早く起きなよ、ご飯だ」

「おはよう人間君」

 この猫は中々食い意地は張っているらしい、一つ無駄な知識を得た。

 僕は基本朝、白米を食べる、猫さんにも同じ物を食べさせていいのかと思っていたが特に問題はないらしい、だが調べたら体にいいものではないらしいので、次回体にいいからはササミ肉などを買ってきて食べさせようと思う。

 最近は自分のために自分がご飯を炊くという行為が無駄に感じやめた、ご飯を炊くのも久しぶりだ。

「で?これからどうするんだい?」

「具体的にかい?…とりあえず今は僕は置いといて、笑顔にする人か…変顔して笑わせろってことじゃないんだろう?」

「君の変顔か…見てみたいけどそういうことじゃないだろうね」

「じゃあ…僕の大学でも行こうか」

 友達なんて気の利いた人物なんて…あぁあいつ…いやいないな、心の中でつぶやいた。


「あぁ大学なんていつ振りに入ったかなぁ、前は入ったら人に色々騒がれたからそれ以来入ってなかったからなぁ。」

「・・・」

「しかし人が多いな、面倒で仕方がない、なんで人間はここまで増えたんだろうな。」

「・・・」

「おーい人間君?なにか言ったらどうだい?」

「解せぬ」

「仕方ないだろう、猫は高いところが好きなんだから」

 頭の上から猫さんの声が聞こえてくる。

「もうちょっと他に場所はなかったのかい?」

 さっきから目線が痛い、僕はそんなに目立つ見た目はしてないのだが、世界広しといえど頭に猫を乗せて約三か月振りに大学に乗り込む人はいないだろう、それは視線も集まるだろう。

「こぉぉぉらああぁぁぁぁぁ!」

「ぐえっ」

 唐突に背中にドロップキックが降ってきた、何の前振りもなく、世界は理不尽に満ちている、今日の天気予報はドロップキックだっただろうか。

「三か月も学校来ないで!何してたの!その頭の上の猫はなに!?」

「別に学校休みがちなのは前からだろう、この子はまぁうん追々説明する機会があれば、で…出合い頭に足が出るのは止めた方がいいとは忠告したよね…美穂…」

 そこには20年来の腐れ縁が立っていた。


 講義があるからと来て早々に走り去っていった、台風のようなやつだそんなやつが中々どうして、成績はいい方らしい解せぬ。

「君は講義とやらには出ないのかい?」

「一応この大学に属しているけどね、講義は出ないよ目的が違う、今回の目的は笑顔にさせる相手を探すことだ。」

「そうかい、目的しか見ていないといつか転ぶぞ?」

「…転んだら転んだ時考えるよ。」

「そうかまぁそれはそれで、とりあえず話戻そうか、笑顔にするのは今の彼女じゃダメなのかい?」

「彼女は僕と腐れ縁なのが勿体ない程優等生で、リア充なのさ、彼氏はいないらしいけど、友達もいるし、あいつの陰口なんて聞いたことがない、昔から運動もできるしね、あいつは元々自分で笑顔になれるんだよ。」

 そう僕みたいな奴とあいつは一緒にいない方がいいんだよ。そう考える僕の顔を上から猫が眺めていた。


「結局なにも決まらなかったね人間君」

「仕方ないさ猫さん、当てずっぽうじゃあ無理がある」

「それもそうだがあの彼女以外誰も君に話しかけなかったし、君も話さなかったじゃないか、なにか・・・」

「あぁそうだね気は進まないけど話そうか」

 僕の嫌いな者の話

「中学二年の三学期当たりかなぁ、人間が嫌い…というか自分含む人間がとてもとても悲しい生き方をしているんじゃないかって思ったんだ、本当なんの前触れもなく唐突に。」

「成程ね僕は猫だから話せるってことか」

「うん多分ね、その直後はまだ話しかけるもの好きもいたけどもう流石にいないね、あの腐れ縁以外。」

「なんだ彼女以外選択肢もないんじゃないか」

 半笑いでこの猫簡単そうに言う

「言っただろう?あいつは一人で笑顔になれるんだよ。」

「僕はそうは見えなかったけどね」

「そうかい…さてご飯にしようか、今日も適当に作っていいかい?」

「あぁ」

 それからずっと猫さんは喋らなかった、その日はそのまま眠りについた。


「ん…朝か…」

 いつものように7時には体は起きた、いつもよりちょっと体が重かった。

「昨日は久々に外出て動いたからかな…猫さんは、起きてないな」

 何気なくテレビをつけると東京の三度目の爆破テロ事件のことを話しているレポーターが目に入った、眺めていると、

場面が切り替わって専門家が偉そうに「またテロが起こる可能性は十分にありえますね」などとぼやいている。

「正解なんだよなぁ…専門家さん」

 今日は僕の所属する大学が爆破されて、それと僕の命日だ。


「んんぅぅん、おはよう」

「あぁ人間に慣れるの早いね猫さん、おはよう」

「いや、今日は君の命日だからね、今日で僕の仕事も終わりなわけだ。」

 猫はあくびをして伸びながら簡単なことのように言う、生への執着は自分は薄いと思っているが他人に自分の命日のことを言われるのも変な感じだ。

「でも今日中になんとか一人を笑顔にしないとなんだよね」

「出来ないってことはないと思うけどね、そういえば君の大学は今日爆破テロを起こされるんじゃなかったかい?」

「あぁそうだけど、なんで知ってるんだい?」

「たまたまニュースを見る機会が前世であってね、その時たまたまやっていたのさ。」

「それで?」

 少々イライラしているのか、口調が荒くなっている

「君はなにもしないのかい?」

「大学に特に思いれはないよ」

 誰に?猫さんに?違う

「彼女は?君に唯一話しかけてくれた彼女は?今日も講義を受けに大学に行くんだろう?」

 唯一話しかけてくれる腐れ縁に?近い気がするけど違う

「仮に僕が動くとしても、爆破テロようなやつに僕が突っ込んだって…」

 動けるはずなのに動かないでここにいる

「君の目的は?目的を見失ったやつに達成はあり得ない」

 〝僕自身に〟

「君の目的は誰かを笑わせることだ」

「ありがとう君は助っ人だったんだね」

「今まで僕をなんだと思ってたんだよ」

 苦笑したように見えた猫のボヤキに反応する前に僕は家を飛び出していた。


 その時僕の家には二人の人外がいたようだ

「やぁお疲れ様」

「損な役回りだね助っ人てのは、こんなの押し付けるなんて悪魔に転職でもしたらどうだい?」


「ファクト」


「仕方ないだろう彼は人間不信だし、そこに人間を送り込むわけにはいけないだろ?僕の知り合いに人間以外で人間と意思疎通ができるのは君と僕しかいない。」

「自分が人外だという自覚があるだけ評価してあげよう」

「上から目線が少々気に入らないけど」

「それで?なんで彼に目を付けた?それぐらい聞いてもいいだろう?」

 疲れたような顔をしている猫は横の神の下っ端に話しかけた

「あぁその位話そう今回の最大の功労者にサービスしないわけにはいけないからね」

 コロコロと楽しそうに神は笑って言った

「いや期待してもらって笑うんだけどね?本当に彼を見つけたのは偶然なんだよたまたま、彼見てて楽しいでしょ?」

「否定はしないがなぁ、人間さんにとってこれは難しい判断なんだと思うぞ事実まで曲げて」

「おいおい僕の名前言ってみろよ」

 猫が考えていると神の下っ端は呆れたようにネタ晴らしを始める

「リーアルはリアル・現実のこと、ファクトは英語で真実、じゃあDは?」

「D・・・なにかの頭文字かい?」

「正解、Dはdistortの頭文字、英語で歪められたって意味」

「歪められた真実ねぇ、中々趣味が悪い名前だ、親の顔がみてみたい」

「違いない」

 神の下っ端は猫みたいにコロコロと笑った。

「でなんで彼みちょっかい出したんだい?理由ぐらいいいだろう?」

「あぁ今回の一番の功労者は君だからね、このぐらいいいだろう…と言いたいところだけども、残念ながら理由なんんてなんてないんだよ。」

「はぁ?てことは」

「あぁ本当に彼を見つけたのは偶然なんだよたまたま、でもかなりあたりだっただろう、彼見てて面白いもの。」

 悪役のような表情に百面相をする横の神は、猫からしたら悪役のようには見えなかった。

 

 音が遠い

 足が痛い重い、昨日のが響いている

 肺に酸素が回り切っていない

 唾液に血の味が混じっている

 ただ走っていた、記憶が正しければ大学爆破は9時だったはずだ、いつも身に着けている安いデジタル腕時計によると今8時半を回っていた、あと大体大学まで300メートル近づいているようで、中々近づいていないような距離だ。

 走りながら頭はどんどんクリアになっていく、会った時あいつに言うことも、僕がなにをするのかも、走ってる間ずっと考えられた。

 もう目の前に大学が見える、僕の墓所が


 中々広いキャンパスを持つ大学だがあいつは簡単に見つかった、今まで散々聞いてもいない大学の話をされていた、なんとなくだが覚えていたところを当たったら、彼女はいた、息を整えて入っていく。

「やぁ、おはよう菜穂」

 いきなり講義に乱入してきた僕に対して少々驚きながら笑って彼女はいった

「遅い」

「悪い」

 そこまで言って校舎は爆発音に包まれた、次の僕のセリフは残念ながら爆発音にかき消された。

 腕のデジタル時計を見れば時間はもう少しあるはずだったのだが…

 立て続けに何十発も爆発音は聞こえ、この部屋にも被害はおよび、最終的には僕等が今いる校舎は傾き倒れるところだった。

 僕はこれは助からないのだろう、命日が今日というだけで時間はファクトも決められないのだろうか、聞いてなかったな。

 最後僕は彼女にまだ言うセリフがある、残念言うことはできないらしい。彼女がなにか言おうとした時、世界が静かになって、すぐまた音が戻って僕らを包み込んでいた。

 最後彼女のセリフで僕は笑いまた彼女も

 

 ――――――笑っていた―――



 少し意識は暗転し、次の覚醒で聞こえてきた声は

「やあ、お疲れ様」

 神の下っ端の声をしていた。

 はい、ここまで読んでいただきありがとうございます。水根鳴海です。

 私の処女作となります、執行猶予楽しく(?)読んでいただけたのなら幸いです。

 最近よくないことがたくさん起こった気がしました。そのためこんな素晴らしいが出来ました。やったぁありがとう知り合い共。

 こんなクソ作品ですが、感想もらえたらうれしいです。頑張っていい作品を作れるように頑張りたいと思います。

 これからもよろしくお願いします。

                              いつでもあなたの斜め後ろに水根鳴海

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― 新着の感想 ―
[良い点] もどかしくも、何とかしたい、せねば!という気持ちが伝わってきました。 [気になる点] ファクト、助っ人付けるなんて主人公に一言もなかったような……? [一言] これからも頑張って下さい。応…
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