第1巻序章及び第1章
序章
俺の名は、 斎藤 龍一。16歳。
俗に言う引きこもりというやつだ。
ところで、引きこもりに定義があるって知っているか?
まあ知らないだろうな。
では、この引きこもり歴4年の私が教えてやろう。
引きこもりとはだな、
「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態」の事を言う。❝
まあぶっちゃけ、俺も最近まで全く知らなかったけどな!
ところで、
引きこもりについてどう思う?
「オタクみたいだからやだ」
や、
「ニートみたいだからやだ」
や、
「病気じゃないの」
と、おそらく大半の人は、こう答えるだろう。
では逆に聞こう。
引きこもりで何が悪い!!!
引きこもりとは、自己意識を高めあることに集中できるいい機会ではないか!
それを「オタクみたいだからやだ」や「ニートみたいだからやだ」や「病気じゃないの」というのは
おかしいではないか!
それにだ
引きこもりの人のほうが、いろいろなスキルを持っている可能性が高い。
一般人より、レベルが高いこともあり得る。
結論を言ってしまうとだな、
「引きこもりを馬鹿にするな」!!!
第1章
引きこもりの一日は、朝9時から始まる。
一日の大半をベッドの上で過ごす俺達にとって、朝はとても大事な時間だ。
まず、ノートPCの電源をつける。
その間に、キッチンの冷蔵庫からドクターペッパーのボトルと鈴カステラを自室のベッドに持って行く。
これで一日の準備ができた。
「今日こそ原稿書かないとやばいな」
龍一は、引きこもりであると同時に小説家でもある。
電❍文庫で、働いている龍一は、現在、「世界創世」と「ラノベ主人公バンザイ」の二巻を書いている。
「ラノベ主人公バンザイ」は、間に合っているのだが、「世界創世」のほうがかなりやばい。
ベッドに戻った龍一は、ノートPCでアプリを起動させる。
「世界創世」とは、異世界へ転生された主人公のドタバタラブコメだ。
ドタバタ故に、作者である龍一もどのような内容になるのかはまったくわかっていない。
「どうしようかな〜」
ベッドに寝転び、必死に頭を動かす。
と、その時
ピンポ〜ン
と
玄関のチャイムがなった。
「は〜い〜」
間の抜けた返事をしながら、ドアを開けると、そこには龍一の担当編集者である伊藤千尋が立っていた。
表情はとても険しい。
「あ〜おはよ〜すどうしたんすか〜。」
「原稿は」
「まだです・・・」
「今日の朝までにやらないと缶詰にするって言ったよね・・
どんくらい書いたの。」
「数十行くらい」
「缶詰決定!!」
「イヤあああああああああああああああああ」
龍一は何を言うことま許されず、千尋にホテルまで連行された。
ちなみに、缶詰とは、
簡単に言うと監禁と同じだ。
ホテルヤ編集部の個室に作家を閉じ込め原稿を完成させることだ。
もちろん外部との連絡は完全に遮断される。
つまり書き終えるまで、自由はないと言うことだ。
「お願いだ〜〜〜あと一日まってくれ〜〜〜」
「ダメだ。貴様は絶対に書かないからな。信用できん。」
こうして俺は自宅近くのビジネスホテルに缶詰にされた。
「とにかく原稿書き終わるまで外には出させないからな!
とっとと書け」
「はひ・・」
こんなこと平気な顔して言うんだぜ。
ひどいよな、最悪だよな、最低だよな。
まあ元凶は俺自身なんだけどな。
俺はしぶしぶと原稿を書き始めた。
だが・・・しばらくして
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
何もでてこない〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「な、何事だうるさいぞとっとと書け」
「だから〜何も出てこないんだよ〜〜」
「お前、ひょっとして何も考えてなかったのか!」
「ちが〜う
考えてないではなくでてこないんだ〜
と、言うか仕事してないように言うのはやめてくれ。
これでも必死に考えてるんだよ。」
「ほう。一ヶ月ずっとか?」
「も・・もちろんだ」
「一日中ずっとか?」
「あ・・当たり前だ」
「そうか。
では聞こう。
先週の一週間、
貴様はどこで何をしていたのか詳しく教えてもらおう」
「な・・何だと・・・
お・・おぼえてないな・・・」
実は、先週一週間、竜一は唯一無二の友達、平井健太の家で、お泊り会と言う名のゲーム大会をしていた。
しかし、このことを千尋は知らないはずだ。
「そうか
では何もおぼえてない君に特別に教えてやろう。
聞くところによると貴様は平井先生のところでお泊り会をしていたそうだな。」
「な・・・
なぜそれを・・・」
「フン
私の情報網を舐めるなよ」
「く・・・
このおおおおおおおおおおおおお」
「うるさい
とにかく考えろ
そして書け」
「でもさ
何も考えてないのにどのようにして書けと」
「・・・お前
本当になんにも考えてなかったのか」
「ああ、そうだ。
それが何か問題なのか?」
いかにも問題なさそうに聞くと、
「まったく、お前と言うやつはどうしていつもいつもこうなのだ。
仕事くらい少しは真面目にやったらどうなのだ。
大体お前はいつもどうのこうのどうのこうのどうのこうのどうのこうの。」
案の定、とてつもない剣幕で怒られた。
「確か前回は主人公が転生された先が魔界で、
しかもその主人公が暗黒騎士長になっていたという感じだっただろう?」
「ああ。確かそうだ。
だがその先がどうも出てこなくてな。」
「だったらこういうのはどうだ。
例えば、主人公が他国の姫に恋してしまい暗黒騎士団をやめ、姫と一緒にどこかに逃げてしまう。
と、言うのは。」
「なるほど・・・
確かに悪くはない。」
「だったらそれで書いてしまえ。
あとはこっちでなんとかするから。」
「おう。
わかった。少し待っていてくれ。」
こうして俺は、「世界創世」の原稿を書き始めた。