建業城の戦い 開戦
某αポリスで書いていたのですが、しおり実装で誰もしおりを挟んでなくて凹んで止まっていた本作ですが、書き直したバージョンをすべて吐き出しました
以後、応援次第で更新は滞っていくと思いますが・・・
「ふっふっふ。やつら慌てふためいておるの」
人間寄りの熊人の男性、僧操は眼前の光景に満足そうにつぶやく。
いま、建業の東にはふたつの3メートル近い石塔が建ち、その石塔を結ぶように高さ一メートル近い土嚢による壁が生まれつつあった。
土嚢を積んでいるのは菜緒虎配下の生きた鉄像。
僧操軍の兵士は、出てくるであろう孫蚊軍に備えて待機中だ。
「陣地構築能力と戦闘力が異常です。彼女に国の中に潜り込まれたら、排除するのは困難を極めるでしょう」
獣寄りの虎人である天韋が、呟くように告げる。
「それほどか・・・」
「悪夢の骸骨というアンデットが洒落になりません」
天韋は初めて会った時のことを思い出して身震いする。
「彼女を討つのに必要な戦力は?」
「悪夢の骸骨を討つだけでも私以上の腕をもつ戦士か、冒険者を10人が最低条件でしょうな」
「数は意味がなかったな」
僧操も悪夢の骸骨の瘴気であろう攻撃で、盗賊の何人かが触れることなくショック死したという報告は聞いている。
経験値を貢いで進化でもされたのでは堪ったものではない。
「監視を今以上に厳とせよ」
僧操の言葉に天韋は静かに頷いた。
ジャーン。ジャーン。ジャーン。
建業城の城壁から銅鑼の音が鳴り響く。
ギシギシと城門が軋んだ音をたてながら開いていく。
出陣してきたのは騎兵。その数およそ70。
いきなり出現した石塔と壁を破壊すべく出撃してきた。
「多くないか?」
石塔の上に座っていた菜緒虎は、側に控えていた環寧に尋ねる。
「さぁ?陸はうちの基準しか知らないんですよ」
環寧のうちの基準という言葉に菜緒虎は僅かに口角を上げる。
ちなみに、菜緒虎が現在指揮するクレ軍の数は六百体に満たない。
しかもいま出せる戦力は、生きた鉄像6体、コンダラゴーレムのベンケイ、環寧そして菜緒虎自身。
切り札の悪夢の骸骨は、悪目立ちすぎ過ぎて早々に切れない。
数の差は絶望だが、籠っての戦いなら罠も仕掛けてあるし、自分たちだけでも問題ないと菜緒虎は考えている。
いざとなれば背後に僧操軍もいる。
「菜緒虎殿」
天韋が声をかけてくる。
「我らも出ますか?」
「いえ、さすがにそこまで貴殿に頼るほど我々も図々しくはありません」
菜緒虎の問いに、天韋は獰猛な笑みを浮かべる。
彼がここに来たのは、戦目付ではなく菜緒虎たちの暴走を止めるためのストッパー。
「少し遅かったかもしれません」
「え?」
菜緒虎は悪戯っぽく笑う。
「ふたつの塔の素材。どこから手に入れたと思っていたのですか?」
天韋は慌てて建業城に目を向ける。
ドゴゴゴゴ
凄まじい轟音と土煙と共に、建業から出てきた騎兵の何十騎かが城門と塔の間の平原で姿を消した。
「落し穴の蓋になっていたベンケイには寄ってきたハエは撃滅するよう命令しています」
騎兵たちの前に、横三〇メートル。幅五メートル。深さ一メートル近い空堀とベンケイが出現した。
ありがとうございました。




