盗賊発見。撃退する
コンダラゴーレムが歩いていた。
前方の土を少し掘り下げ、平らにしながらかき集める。
ある程度コンダラゴーレムが大きくなったら、掘り下げたところに石畳を敷き詰めながら戻ってくるの繰り返し。
歩みは遅いが、幅6メートルほどの舗装路が確実に敷かれていく。
道路整備は、議論するまでもなく即座にアルテミスによって許可された。
売れる恩は売れるときにタップリ売るということらしい。
また、泥水から岩石創成で水と土が分離できるという報告が、悪韋のコンダラゴーレムでは再現されない。
菜緒虎所有のコンダラゴーレム固有スキルではないか?スキルレベルを育ててみて欲しいという要望があったからだ。
ゴーレムのような自動人形も成形に魔素核を利用している人工魔物なので、鍛えればスキルもレベルも上がる。
ソウキが召喚するスケルトンやゴーストも、魔素核を依り代とした人工魔物なので同じように鍛えればスキルもレベルも上がる。
今更だが一応、補足しておきたい。
『菜緒虎サマ。建業方向カラ所属不明ノ一団ガ接近中。数三十』
上空で偵察中のロック鳥から念話が入る。
「それなりの数だな。ベンケイ。物見に変形せよ。環寧。僧操殿の部隊に警告を」
菜緒虎の指示に従い、今回の働きでベンケイと名付けられたコンダラゴーレムが動き始める。
「菜緒虎殿。所属不明のってなんだこれは」
環寧の報告を受けやってきたのは、張僚と交代した新しい軍目付で虎頭の虎人。
石塔をみて驚きの声を上げている。
「天韋殿よく来られた。こちらに」
石塔のうえから菜緒虎が天韋を呼ぶ。
「菜緒虎殿。これは一体」
石塔を昇りながら、天韋は尋ねる。
「これ、コンダラゴーレムですよ。煉瓦の塊なので変形できるのです」
菜緒虎は笑いながら西を指さす。
天韋は、指さされた方を睨むように眺めるが、やがて肩を竦める。
菜緒虎は苦笑いしながらペシペシと石塔を叩く。
石塔はガクンと揺れるとジワジワと高さを上げる。
1メートルほど成長するとまたガクンと揺れて止まる。
天韋は再び指さされた方を睨むように眺め大きく頷く。
「何か来ているのだけ判った。軍旗は掲げてないのか?」
天韋は肩を揺らしながら笑う。
「上でも軍旗は見えてない。盗賊か・・・多くないか?」
菜緒虎の問いに天韋は、孫軍が近隣の村での食料の徴収。おそらく盗賊の類に偽装して行っているという推測を告げる。
もっとも、反乱軍が近隣で略奪しているという噂が広がれば、人心が離れる。という計略を僧軍が行っている可能性もある。
しかしそれを菜緒虎は指摘しなかった。
「盗賊なら討伐してもいいでしょう」
天韋の顔色をうかがいながら、菜緒虎は真夜中の指輪に念を込める。
「出でよ我が下僕。悪夢の骸骨」
菜緒虎がワザとらしく叫ぶのと同時に、地面に魔法陣が現れる。
死神の鎌に黒い硬皮鎧。
頭頂部に派手な赤い羽飾りのついた兜を装備した、上半身が人間の下半身が蛇の骸骨のモンスターが出現する。
蛇の胴体部分には、人が騎乗できるよう手綱と鞍と鐙が装着されている。
張僚は受けること間違いなしと太鼓判を押した召喚だったのが、天韋にはウケていないようだ。
「さて、これから某はあの集団をけち・・・天韋殿?」
石塔から悪夢の骸骨に向かって飛び降りようとしたが、そこで天韋が放心状態であることに気付く。
悪夢の骸骨のもつスキル、恐慌Lv.10に当てられたようだ。
天韋がどんなに強者であったとしても、不意討ちされたのでは抵抗出来なかったのだろう。
「危険はないだろうが、万が一の時は頼むぞ」
そういって菜緒虎は石塔から飛び降りる。
そして悪夢の骸骨の手綱を引き、謎の集団に向かって突撃した。




