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チュウカナ大陸史書 偽典 菜緒虎伝  作者: 那田野狐
ニーダ半島沖での小競り合いの章
58/81

天災を得て孫蚊が蜂起する


大陸歴3186年含月(ふつき)(7月)


カタカタカタ

「んぁ?」

菜緒虎は、寝入りばなに襲われた結構な揺れによって強制的に起こされた。


「地面が揺れてる?」

いままで体験したことのない事態に菜緒虎はパニックとなる。

しかし、すぐにアルテミスからステータス画面にもたらされた住民退避の指示が出て正気を取り戻す。

悪韋のいた国では、この地面が揺れる現象を地震という。

また、海岸線では、地震に伴う津波という海の水が地上へと押し寄せてくる現象で大きな被害が出る可能性があるという。

対応策は住民を高台に避難させること。


「菜緒虎さま」

ドアの外から環寧が声を掛けてくる。


「アルテミス様から指示があった。住民に高台、場合によってはこの砦への避難を。某も出る」

「はっ」

環寧に口頭で指示を出しながら、思念でオクトパスに沖の視察を命じる。


2時間後、オクトパスの海上に異常なしの報告を受けて、アルテミスに報告。

アルテミスからの警戒解除の指示を受けるが、菜緒虎は夜が明けるまでその場での待機を命令する。

結局、悪韋が危惧した津波は観測されなかったが、これを切っ掛けに緊急時の避難体制が制定されることになる。


地震騒動から3日後。


「孫蚊が挙兵しました」

「はぁ?」

環寧の報告に書類を読んでいた菜緒虎は間抜けな声を出す。

そして机の端に置いてあるオブジェに視線を飛ばす。


そこには、6面体で含月(ふつき)(7月)1、0のが表示されている。悪韋が創ったキューブカレンダーだ。


キューブカレンダーというのは6面体に0,1,2,3,4,5と0,1,2,6,7,8の数字を刻み1から31を表記するもの。

月は文字なので上下に二つの月が刻まれていて、正しく表示されているのが正しい月となっている。


「早いな」

今年の花月(かげつ)(3月)に僧植を預かってから4か月しか経ってない。

早すぎると見るか、僧操の読みの正確さに驚くべきか。


「先日の地震というもの被害が、震源地である東呉州の州都建業と中心に大きくでたようで」

続けて環寧は、州都建業で起きた地震被害を報告する。


倒壊した建物が4割。火災で焼失した建物が2割。

死者は4千余人。負傷者は1万人以上。10万人いた州都建業から避難した人間は実に4万人以上。

王都を繋ぐ主幹道路にもかなりの被害が出ている。

その混乱に乗じて孫蚊が三千の兵を擁して挙兵し、州都建業を占領したという。


「地震とやらを好機と見たか」

そう考え、菜緒虎はその先を考える。


アルテミスから直接指示が来ないということは緊急性はない。

しかし、報告書という形で情報が回ってくるぐらいには重要。


「食糧支援の準備。工兵として使えるスケルトン20体とウッドゴーレム3体を抽出して」

「指揮官と護衛はどうしましょう?」

「今回我らが動くとしたら、魏府国ではなく僧操殿への支援だろう。なら、某が指揮官として出た方が見栄えが良かろう」

そう。今回あるとすれば、自然災害に対する復興支援を目的とした派兵。

菜緒虎はそう判断する。


「問題なければ私が帯同いたします」

「いいだろう」

環寧の提案を菜緒虎は即座に許可する。


それから3日後。

菜緒虎の判断が正しかったことは、白鷺城から送られてきた食糧や悪韋謹製のシャベルやツルハシ、テントといった物資が届いたことで証明された。


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