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チュウカナ大陸史書 偽典 菜緒虎伝  作者: 那田野狐
アタラカ森砦の戦いの章
55/81

アタラカ森砦の攻防 終結


アタラカ森砦の攻防戦は開戦して4時間。

ノール軍の最高指揮官のノール・ニサン・ゴーン・ドラド3世の捕縛とそれに伴うノール軍の全面降伏で幕を閉じた。

ノール軍の兵士は奴隷、一般、貴族を問わず完全武装解除されると鉱山都市ソロモンに送られ二束三文に近い額の身代金と引き換えに解放される。


その際、先方を務めた軽装歩兵で奴隷だった五十人ほどが、悪韋の庇護を願ってアタラカ森砦の前に再び集結。

悪韋はアルテミスの許可を得てこれらを配下とする。

かつての上司、同僚だった人間がスケルトンやゾンビの素材となり、再び彼らと轡を並べることになるのだが、その辺は気にしたら負けである。


そして、捕縛されたノールの身柄はクレ砦から海路で速やかに魏府王国の僧操の元に文字通り贈られた。

ソウキ領からの贈り物に、僧操は大いに喜び、子飼いの官僚である熊人(ワーベア)の張涼に命じソウキとマッサチン国との間の停戦交渉を行わせせて漁夫の利を得たという。

また、この交渉の結果、ソウキ領は国として独立。リュウイチを祖とするソウキ国が興る。


マッサチン国に戻ったノールは、家督を今年9歳になる長女に譲り隠居。10歳の長男は廃嫡されたうえで寺院預かり。

8歳の次男はマッサチン王家に、末っ子の6歳の次女は魏府王国の僧操の元に人質として16歳の成人まで預けられる事になった。

後にこの末っ子が戦乱に輝く星のひとつになるのだが、いまは割愛する。


また、魏府王国は基本的には中央集権国家ではあるが、外交関係は割と、というか、かなり緩い。

獣人ゆえの(さが)か、欲しいものは奪う。殴られたら殴り返す。縄張りは死守するが縄張りを広げることには熱心ではない。

クレ砦では、部下の暴走ということになったでいきなりの殴り合いとなったが、本来の僧操は外交官を送っての交渉が第一なのだという。


アタラカ森砦攻防戦から三か月。魏府王国の壇羽(ダンパ)十二世がニーダ半島に親征を行う。

数年続いた飢饉に端を発する、国内の不満を逸らすためのものだったが、数年続いた飢饉はニーダ半島も同じだった。

そのため、戦いには勝ったが得るものはほとんどなく、親征に駆り出された魏府王国の北東地方では民の不満が高まることになる。


そして年が明ける。


大陸歴3186年花月(かげつ)(3月)

魏府王国では政治的に大きな移動があった。


魏府国は国を統治するにあたり自治区を大きく五つの州に分けている。


東の海に接する東呉州。

マッサチン国と西で国境を接する西蜀州。

南の魔の荒野に接する南晩州。

北の氷原に接する北涼州。

そして王都北許(ペイキョ)のある中魏州。


それぞれの州に州牧という行政長官を置き統治させていたのだが・・・

このうちのひとつ東呉州で州牧と務めていた孫蚊が病気を理由に任期半ばで引退。(前年のニーダ半島親征に対する不満だといわれている)

急遽、朝廷から馬灯という人物が赴任する。


次に州は、州内をそれぞれ四つの郡に分けて中央から派遣された官僚を太守に任命し統治させているのだが、三年毎の恒例人事により全二十郡のうち十郡の太守が六年間の任期を終えて交代した。

また、ソウキ国に因縁が出来た、南海郡太守の陶塔が一身上の都合で引退。


ソウキ国とマッサチン国との停戦交渉を纏めた張涼が、僧操の推薦もあり南海郡太守として赴任。

ソウキ国は南海郡太守である張涼の就任式に、菜緒虎を名代として送り、ついでに小麦の種5俵(約300キロ)にジャガイモの種芋10俵(約500キロ)が贈られる。

この贈り物は飢饉に喘ぐ南海郡の住民に希望をもたらし、張涼の面目は大いに保たれたという。

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