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エルフの村

色々と

大陸歴3182年末。


この年、大陸は春先の旱魃、夏の長雨とそれに伴う冷夏。秋の台風に冬の大雪と季節ごとに大きな天災に見舞われた。


アタラカ山脈の東西南北の山が交差する場所の麓に鬱蒼とした森がある。

森の奥には二十余人のエルフが住む集落があったが、今年の天災で森の食糧事情はかなり悪化していた。


「うっ……おなか減った…」

長い金髪を頭のてっぺんでお団子状にまとめた若干のつり目の碧眼、笹穂状の耳をもつエルフの女性がきゅるると鳴くお腹をさすってポツリと呟く。

ここ3日、彼女は日に1個。拳大の果実を1つだけ食べて飢えを凌いでいた。


森の守り手を自称するエルフではあったが、今年の異常気象で食料となる果物や穀物の類がほとんど収穫できなくて困っていた。

毎年、自分たちがほんの少し手を入れるだけで豊かな自然の恵みを享受することが出来ていたので、飢饉にそなえて食料を貯蔵するという発想にならなかったからだ。


「やぁ、ナオ。何か食べられるものは見つかったかい?」

森の小道から姿を現した、短い銀髪の若干のつり目の紅眼、笹穂状の耳に肌は日に焼けたような褐色のエルフ女性が声をかけてくる。


「やぁ、リベッチオ。残念だけど、果樹園も小麦畑も先客に荒らされていたよ」

お団子頭のエルフ、ナオは、彼女の幼馴染みであるリベッチオに鳥に啄まれて半分以下になった蜜柑によく似た果物を5個ほど見せる。


「ナオはまだマシなほうだね…村の小麦畑の方はボア系の魔物に食い荒らされて全滅だったよ」

褐色のエルフ、リベッチオはプラプラと手を振る。


「これはいよいよ、外地に身売りを覚悟しないとダメかなぁ…」

リベッチオのつぶやきとため息にナオもため息で応える。

過去のエルフは剣術、弓術、魔術に長け、容姿に優れ、豊かな農耕知識を持ち、傭兵として、愛玩物として、技術者として引く手余多だったのだが、それも今は昔の話である。


身売りされて、何かしらの奴隷の立場にまで落ちる事になったとしても、この前代未聞の災害である。

一人でこの村の住人二十余人の食料事情を2か月ほど良くするぐらいの価値にしかならないだろう。


「それに、私たちでは都にいけない」

ナオはじっと自分の身体を見る。

エルフといえは男も女も色白で華麗で華奢というのが相場である。

しかし彼女らは、エルフならしからぬ大きな胸にくびれた腰、豊かなお尻。リベッチオのほうはナオほどサイズにメリハリはないが肌が褐色である。

どちらも、エルフ基準で判断するなら商品にならない。

性的なモノを求めるとしても他に適性を備えた種族はいくらでもいるのだ。


「そういえば北西に行った所に村があったよね…」

「あったねぇ…用心棒兼農耕の技術者として売り込むのもありかな」

ナオもリベッチオも農耕に関しての知識は一通り教え込まれている。たった二人でも口減らしにはなる。案外いい案かもしれない。


ふたりはその日のうちに長老と話し合い、次の日には北西に少し行った所にある村にむけて出発するのであった。


ありがとうございました。

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