総員!戦闘配置に付け
「こんなところかな」
昨夜から格闘して書き上げた配置図を前にして菜緒虎は首を鳴らして大きく息を吐く。
いま菜緒虎隊は、既存のスケルトンソルジャー336体、死騎士2体、ロック鳥3体、蝙蝠3体、骸骨狼3体、ブラックドック3体という一般兵に加え・・・
司令部所属で、副官ポジションでもある5体のアンデットでゴースト天城、名前持ち死騎士の元就、隆元、元春、隆景。
護衛である悪夢の骸骨とオクトパスという編成になっている。
これに、今回の増援として、指揮官の悪韋とスケルトンアーチャー100体、雑用のスケルトン200体が加わっている。
もっとも、悪韋の言葉通りなら、この一戦の後に悪韋以外は自動的に配下として収まる訳だが…
「天城、死騎士、ソルジャー、アーチャーを配置につけて」
「了」
天城と死騎士が軽く頭を下げて部屋を出る。
ここで今回の配置を大雑把に説明すると・・・
西から東に走る岬にある砦は、海に面していないので兵は配置しない。
洞窟にある入り口は、魏府軍がここまで来たら悪韋に封鎖してもらう予定だ。
両端に櫓のある土塁は、浜辺に二列三基の六基。
バリスタは十二台あって港に向けて扇状に展開している。
それぞれの土塁の裏にはスケルトンソルジャーが二十体とスケルトンアーチャーが十体が武器を構えて待機中。
土塁の一番後ろには投石機が三台。
投石機の前面は土嚢で囲われていて、投石機の後ろには投擲用の弾は二十個ほど積み上がっている。
土嚢の前には塹壕があり、ここにもスケルトンソルジャーが十体ほど潜んでいる。
浜辺の波際には長く塹壕が掘られ、中にはスケルトンソルジャーが、塹壕自体は石の蓋によってカモフラージュ。
敵が上陸したあとに塹壕から出てきて、その背後を突くことになっている。
防波堤にある灯台には灯りの代わりにゴーストが入っていて見張り、海底にはオクトパスが奇襲をかけるため待機中。
「しかし見事にアンデットだらけだな」
顎を触りながら、配置図を眺めていた悪韋が豪快に笑う。
「兵糧の心配をしなくていいというメリットはあるけど、属性が偏るのは不味いでしょうね」
「おお、ちゃんと考えていたかのか偉いぞ」
悪韋に、グリグリと頭を撫でられ菜緒虎は苦い顔をする。
「ところで菜緒虎殿は配下にしたい種族に希望があるかね?」
「犬人とか猫人といったモフモフの軍団」
菜緒虎が即答するのを聞いて悪韋はズボンの後ろポケットから1冊の本を取り出す。
「あーうんうん。進化の際に能力で多く分岐する猫人がお勧めかな」
そう言って悪韋は本を開いて菜緒虎に見せる。
本には猫人が力で獅子人、敏捷性で豹人、バランス型で虎人へと進化することが書かれていた。
「スケルトンがソルジャーやアーチャーやマジックユーザーに変化する的なあれですか」
そ、ちなみに犬人は狼人だな」
菜緒虎の指摘に悪韋は大きく頷いて肯定する。
ちなみにジャイアント系は下位種族からの進化、アンデット系は召喚魔法(含むアイテム)や呪い、下位種族からの進化でしか存在しないが、それ以外の種族はありとあらゆる手段で増える。
生態系?なにそれおいしいの?の世界なのである。
「俺はゴブリンだな。ゴブリン、ホブゴブリン、オーガ、鬼、最終的には夜叉や羅刹に進化する。胸躍るね。次点はドラゴンだ。食糧確保にボア系モンスターの家畜化をすべしと意見具申はしてるがね」
「それはまた手回しがいいですね」
菜緒虎は呆れた顔をするが、悪韋は満面の笑みをもって応える。
『菜緒虎さま報告します。敵船3隻発見しました。帆はありません』
警戒していた天城から連絡が入る。
「敵船3隻発見。帆は無い…ですか」
「配置の指示が間に合ったのは僥倖だったな」
「ですね」
菜緒虎と悪韋は指揮を執るべく部屋を出た。
ありがとうございました。




