表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チュウカナ大陸史書 偽典 菜緒虎伝  作者: 那田野狐
港湾都市ジャンの章
31/81

菜緒虎、成り行きでイヌガミたちを救出する

「死ね」

火候は、青龍刀を抜くとイヌガミに斬りかかる。


「だ、旦那!」

イヌガミは即座に仰け反って躱すが、完全には躱せなかった。

イヌガミの顔に、横一文字の切り傷が走る。

火候は盛大に舌打ちして、再び斬りかかる。


「何の冗談ですかぁ旦那」

イヌガミも即座にショートソードを抜いて火候の青龍刀を受け止める。


「何の冗談だと?呪いをかけられた上に、間者まで引っ張てきた無能を始末するだけだ」

火候は上段から青龍刀を振り下ろしイヌガミはそれをショートソードで上手く流す。


ガキッ、シャ、ガキッ


二撃、三撃と剣がぶつかる甲高い音が響く。


「きゃあ」


牛銅が悲鳴を上げる。


「どうした牛銅(リーダー)


イヌガミが悲鳴の上がった方に少し身体を捻って見る。

そこには、数珠を拳に巻いて牛銅のダガーを受け止める狸人(ワーラクーン)と、腹部からショートソードの刃先を生やした牛銅。

そして牛銅の背後にぴったり身を寄せる狐人(ワーフォックス)の姿があった。


がふっ


牛銅の顔が歪み口から大量の血が噴き出る。


「ち、畜生てめぇ」


イヌガミは狸人(ワーラクーン)に向かってショートソードを振り下ろす。


ガキッ


ショートソードはあっさりの狸人(ワーラクーン)の数珠に受け止められる。


「ばかな。なんで斬れねぇ」


「儂の数珠はワ国製で珠は鋼糸で繋いでおるからの」


狸人(ワーラクーン)の顔が笑いで緩む。


「ワ国の体術使いかよ」

イヌガミは大きく舌打ちする。


「俺と戦ってる最中によそ見とか、馬鹿かお前。罰だ苦しんで死ね」

ゴキャという音と共にイヌガミの肩に激痛が走る。

見るとイヌガミの肩に青龍刀が峰からめり込んでいた。


どがっ


不意に、派手な音を立てて教会のドアが蹴り破られる。


「何者だって、問われて名乗るほど馬鹿じゃか」

火候は青龍刀を構えなおし、侵入者に対峙する。

侵入者は菜緒虎だ。


シュ


菜緒虎は、太腿のベルトに差していた短剣を狸人(ワーラクーン)に向かって投げる。


ガキ


いつの間にか狸人(ワーラクーン)の前に立ち塞がっていた狐人(ワーフォックス)が、苦無と呼ばれる短剣で短剣を弾く。


「すまぬな嘉辰(かしん)。嘉辰?」


狸人(ワーラクーン)の問いかけに答えることなく、狐人(ワーフォックス)はぐらりと崩れる。

狐人(ワーフォックス)の喉には、苦無で弾いたはずの短剣が刺さっていた。


光よ集え(ライト)極大」


闇の中に一瞬の閃光が走る。


「目が目がぁ」


火候と狸人(ワーラクーン)が目を押さえてよろめく。

獣人は夜目が効くので、暗闇からの閃光の威力は抜群である。


どごっ


一気に間合いを詰め、菜緒虎は狸人(ワーラクーン)の脳天に木刀を叩き込む。

木刀に直撃を受けた狸人(ワーラクーン)の脳天が大きく凹む。

容赦ない一撃である。


「おい。逃げる気があるなら手を貸すぞ?」


菜緒虎は救いの手を差し出す。


「頼む。それで俺の仲間は」


「既に死んでる可能性は高いぞ?蘇生のアテでもあるのか」


「ある」


菜緒虎の問いに、イヌガミはそう断言する。


「判った」


菜緒虎は即座にスケルトンソルジャーを召喚し、牛銅を担いでくるように指示を出す。


「逃がすかぁ」


火候が目を押さえたまま青龍刀をぶん回す。


「沈んどけ」


菜緒虎は力を込めて火候の鳩尾に木刀を突き入れると、イヌガミの手を引いて教会を飛び出した。


ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ