ナオに女神見習いの祝福を
ゆっくりと
大陸歴3162年|月正(1月)
チュウカナ大陸の南の端にアタラカ山脈と呼ばれる山がある。
南北に200km。東西に30km。
上空から見ると地面に剣を置いたような形に見えるという。
この山脈の東西と南北が交差する場所の麓に鬱蒼とした森がある。
その森の奥には、二十余人のエルフと呼ばれる種族が住む集落があった。
おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ
元気な赤ん坊の声が聞こえてくる。
「元気な女の子です」
生まれたばかりの赤ん坊を取り上げた女性はそう言って母親を安心させる。
数百年を生きるエルフは、その長寿ゆえか子供が産まれ難い。
にもかかわらずこの村では、ここ数日で二人の子供を授かる予定だ。
「よくやった。これで我が家も安泰だな」
イケメンなエルフがベットで横になっている美女エルフに声を掛ける。
なにしろエルフは、人族と同じ二十数年をかけて大人の身体へと成熟する。
そして事故死しない限り、それから数百年、変わらぬ姿のままで生も性も謳歌することになるのだ。
「はい」
美女エルフは穏やかな顔で笑う。
「そう言えばあなた。わたしね、この子が生まれる前の日に夢を見たの」
「へぇどんな?」
「蒼い大きな瞳にショートカットのピンクの髪をした女の子・・・にしては発育が良かったけど、
その女の子がね、私のお腹に手を当てて、これからよろしくねって、まるで」
そこで美女エルフはちょっとした苦笑いをする。
他の種族と交流することで、宗教という存在は知っていたが、基本エルフは、神の存在を信じていない。
それが、生まれてくる我が子に神が祝福を与えた、という伝承のような夢を見たというのは滑稽な話だからだ。
「神の祝福のあるエルフか。我が子は、どんな人生を歩むんだろうね」
イケメンなエルフは笑いながら赤ん坊を抱き上げ、そらに掲げる。
このとき産まれた赤ん坊は、ナオと名付けられる。
そして、その二日後に産まれたリベッチオと名付けられた赤ん坊と共に大切に育てられることになる。
ありがとうございます。