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曽祖父の遺産に惑星一つ  作者: ゴート
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026 曽祖父の日記2

 翌朝、またガヤガヤと風呂に来てる里の人達のざわめきで目が覚める。が、昨日ほどの混雑では無い模様。バラけたのか、掃除終了後に入るつもりなんだろうか。飽きたとかじゃなければいいや。どちらにせよ、里に公衆浴場を作るまでだ。

 排水口を見に行くと、昨日ほどの汚れは無かったので、掃除も楽になるだろうし、6日間ぐらいは里の人に任せてなんとかなるでしょと、楽観的な予測を立てておく。あまり介入せずに何とかしたい部分と、ゲーム感覚で彼らの事をみている自分がいて、どちらが正解かわからない。

 

 となると、その為にも爺さんの日記でも読んでおくか。

 

 前回は一歳の親父を捨てて東京に戻ろうとした祖父母を、こちらに捨てたという所までだったから、その次か。

 

 一時の激情に駆られて、こちらに捨てたが、日本で一日経って乳を求めて泣く親父の姿を見て、こちらの世界を探すが時すでに遅し。今の里がある辺りまで探しに山を降りるが、生きている姿も遺体も見当たらなかった。が、その時に出会ったのが二足歩行するウサギの集団。何か言葉らしき物を喋っていて、杖を片手に走ってきた。

 ほぼ野生化した豚が狼に追われている所に巻き添えを食らう形で狼に追われている所に出くわしたようだ。

 包丁を加工した槍で牽制しながら、次々と鉈で狼を屠る姿にウサギの集団が心酔して、爺さんの畑の辺りで一次的に生活するようになる。

 一歳の親父を残して、こちらに行ったっきりになるのでは、祖父母と同じだから、まずは夜の数時間だけこちらで日本語を教えて会話を成立させる事から始めた。

 次に今の里の辺りを切り拓く為の道具を与えて、彼らに農耕文化を教えようとするが、何せ非力。中々進まない所に現れたのが、牛の一団。

 彼らも流浪の採取生活を送っていたが、爺さんの畑で一時的に保護して言葉が通じる様になると、開拓作業に従事。一気に森が切り拓かれ、十分な収穫量が維持出来るようになった。が、それが野生化した豚や鶏、その他の草食性雑食性の動物や昆虫を引き寄せ、里は何度も危機を迎えるが、急流の上の爺さんの畑にはあまり侵入する事は無かったので、飢饉の度に解放するという事が続いた。

 

 一方日本では、斎藤さんが院を卒業する時に弁護士事務所を紹介して、翌年即弁護士資格を取得。数年後寮の仲間と共に事務所を立ち上げた。弁護士や会計士税理士に行政書士等々のスペシャリスト集団で、多少の口利きをしたとか。

 そんな斎藤さんを中心に寮のOB会の様な物が形成されていき、様々な分野に広がっていった。

 

 こちらの開拓も野生動物等々の侵入で一進一退の所に現れた猫の一族。彼らは当初良い狩場という事で少し離れた所に居たのだが、次第に近づき、今の里の最前線の辺りで居を構えるようになり共存共栄という形をとるようになったと。

 それからしばらくして里はほぼ今の形になり、開拓も止まり相変わらずやって来る野生動物は猫の一族が狩り、安定した生活が送れるようになった。

 その事により、爺さんは偶に与えていた鉄の鍬や鎌の供給をやめる。彼らの事は彼らでやるべきでは無いかと。ただ、数年に一度小学生の教科書等々を里に送って言葉を代々伝える事を命じた。

 そうなると、言葉はあるのにいきなり石器時代に戻されて彼らの進歩は停滞する。生きるギリギリではその余裕が無いのは当たり前だ。それでも爺さんは大規模な飢饉じゃない限り爺さんの畑は解放しなかった。

 

 親父が小学生の中頃になり、寮の運営も良好になり、自らの資産を斎藤さんの事務所に資産を管理運用する事を任せて、一線を退く事を決意して、田舎で隠居爺を決め込むが、こちらで色々と獲った物はあまり市場に流せないので、寮の食事で消費してもらったりとあまり隠居している爺とは思えない収穫物や新しい作物の挑戦の記述が続く。

 歳を重ねてから気付くが、こちらの世界にいると身体が軽いし、12倍の時間が経過しているなら既にいい歳な筈がまだまだ畑仕事も余裕で出来る。この謎は良くわからない。この珠が何か言っているのだがよく意味がわからない。

 が、こちらで過ごす日が続くと年相応よりも若くなるような気配があったので、可能な限り介入を避けるようにしよう。

 

 祖父母が学生運動の時代にこちらに来て、その直後にウサギの民と出会ってから、里の歴史が始まったとすると、大体50年*12倍の600年がこちらの世界の農耕の歴史という事だ。局所的に発生しているだけなら余りにも意味のない歴史だなぁ。

 とりあえず人口増加と領域拡大。他の民族が居たら可能な限り吸収して多様性を保持する。あと、ナノマシンが使える様な教育レベルまでの向上か。あと、安全と衛生も。

 あと、結局行方不明の曽祖父母は600年も生きているとは思えない……?爺さんも若返る感覚があると言っている位だから、何処かに生きているというのもあるのか。爺さんみたいな脳筋マッチョと違って、学生運動に飛び込んじゃうぐらいな頭でっかちだから、初めの段階で躓いて死んでいそう。だけど、まさかの展開は予測しておこう。子孫がいたとしても近親相姦の成れの果てでどうなっているかわかった物ではないし、教育レベルがナノマシンを扱う事に直結する世界。そうそうそのレベルを維持出来ているとも進化しているとも思えない。

 また、他の民族とのいきなりのエンカウントも避けたい。


 その為にもやはり無人偵察機か。

 まずは先生の云う所のリンクした結晶同士の電波によらないナノマシンを媒体とする光通信。空気中を漂うナノマシン間を赤外線通信で波紋を描いて、それを連鎖していくという事だったが、どうやって混線したりしないのか理屈がわからない。

 ナナ、ちょっと戻ってこい。

 《今、近付いてる所。ちょっと待って》

 あ、拒否られた。最近、鶏仕留めてないから、待ってやるか。

 仕方ない。形状から先に決めよう。

 VTOLというと、ハリアーのイメージが浮かぶが、戦闘機動を行う訳でも無いし、何と言っても燃料弾薬を積まなくても良い。目的は高空から地上の撮影と帰還する事の二点。

 頭の中にマクスウェルの悪魔真っ青な機能を持つこのナノマシンの力があれば、フラップ等の可動部が無い機体も出来るのか。勿論風洞実験とか出来ないんだから、揚力とか考える必要もないな。有り余る推力で機体を浮かせて、胴体に水平方向に機動する為に後方に空気を圧縮して噴出させるジェットエンジンモドキををつけて、翼に小さなジェットエンジンモドキを着けて方向転換。

 全体のモチーフとしては、SR-71ブラックバードにしよう。表面はアルミナで白く処理してしまえばホワイトバード?それなら確かに目立ちにくいけども、彼らにスリングショットとか渡してしまったから、下手な高さや強度だと撃ち落とされてしまう可能性がある。

 筒状の内部に結晶を並べて空気を一方的に噴き出す何も燃やしていないけど、ジェットエンジンのような物を作ってみる。制御の為の結晶を組み込み、小屋の前の土に杭を打ち込んで固定して試験運転。

 ゆっくりと出力をあげていく。ゴーっという音が次第に高音になり、キーンという音がしてきた辺りで杭が抜けかけたので、とりあえず大きな出力は得られると思う。如何せん速度計も風速計もピトー管も無いので、どれだけの力なのかわからないのが手探り過ぎるな。

 方向転換用の小さなエンジンには、筒の真ん中に一個の結晶を配置して、左右のバランスをとるように制御用の結晶を組み込み、両方同じ方向に吹き出したり、旋回用に片方のみ逆噴射等々を繰り返す。機体の強度によっては捩じ切れそうな挙動だけど、人が乗る訳でも無いし試験作と思えばいいだろ。

 あとはエンジンを組み込んだ機体をシリコンナイトライドて作って、上昇下降用の噴出口に結晶を取付けて、大体完成。あとは先生のいうナノマシン光通信の機能を組み込んでやらないと、今の電波方式の限界の100mなんてあっという間に飛んでいってしまう代物にはなったと思う。

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