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曽祖父の遺産に惑星一つ  作者: ゴート
19/28

019 曽祖父の日記1

 賄い付きの学生寮の食材を自分で作る事を決心して、今の大きさの規模の田んぼや畑で大量に作るようになる。豚や鶏を飼おうと思ったがら世話が出来ずに逃げられて野生化してしまったのもこの時期。

 が、息子の孝は出来が良くて地元の大学ではなく都内の大学に進学してしまって、爺さんの寮には入らなかった。

 学生寮が始動したその年に入学したのが齋藤さん。祖父と同い年か。高校も同じで友人だったようで孝が爺さんに何か秘密があるというのと、闇米で儲けた成り上がり者だと言う事を蔑んでいるというのを齋藤さんから聞いたと。

 爺さんのイメージからは考えられないほど崩れた字体で怒りの文章が続く。どうやら祖父が都内の大学で学生運動に参加しているという。お前も参加しろと齋藤さんに手紙が届いたと言う事らしい。

 それを爺さんに告げる齋藤さんも齋藤さんだなぁと思ったりもするが……。

 で、学生運動に参加してるうちに出来ちゃった婚で、祖母となる佳子と共に大学中退で農作業に強制的に従事。翌年二人共22歳で父親の仁を出産。一年は従順な息子と妻を演じていたが、一歳の息子を置いて都内の学生運動に戻ろうとした時に駅で捕まり、爺さんは二人をあちらの世界に投げ出して戻ってきたと。

 はぁ?死んだじゃなくて、それは行方不明という奴じゃないですか。というか、爺さん、それ公表出来ないけども、証明も出来ない完全犯罪じゃないか。

 あ、持ってきた日記はここまでか。んーちょっとこれだけで判断するのは危険だけど、齋藤さんに訊ける内容なのか、これ。

 というか、鍵も掛かっていない日記に犯罪告白が書いてあるとかこえーよ。とりあえず祖父と祖母の死因を調べてからじゃないと訊けないなぁ。

 

 毎日書いている訳でもない日記で、思いついた時にザックリ書いてあるだけの物をザーッと流し読みしたけど、この世界の事がわかるのではなくて、我が家の秘密を知ってしまったという……。んー、確かに大学裏手の再開発の切っ掛けになりそうな事が書いてあったけど、ここから親父の代が通い始めるまでの物を読まないと話が始まらないなぁ。

 いい加減眠いから寝るか。

 

 ズンッズンッという突き固めている音で目が覚めた。響くなぁ。適当に飯を作ってもそもそ食いながら、このまま明日朝帰って、田んぼの作業を教えてもらって戻ってきたら、里まで道が続いている様な気がするとか考えてしまった。

 サスペンションはともかく四輪のハンドルの構造とかは知らんから、当面はこのアシスト付きの自転車でかっ飛ばすぐらいで代替するとして、身体に着けるプロテクタが自転車用のプロテクタとヘルメットしかない状態しかない。昆虫が10倍の大きさで突っ込んで可能性を考えると流石に顔を始め、もう少し対衝撃対策をしないとケプラー繊維を編み込んだ上下だけでは少々不安だ。

 

 日本で買ってきていたパンチングメタルを樋状に曲げて、小さい穴の順に連結して、上から流すだけで大きさによって振り分ける簡易ナノマシン結晶分別機を作る。白露さんの持ってきた特大サイズは別として、ウサギの人達が持ってきた物と自分で拾い集めた結晶を樋に流して選別する。ハイテクの塊な代物をこんなローテクな方法で扱っていいんだろうかとも思いつつ、ザラザラと音を立てて選別されて溜まっていく様子を眺めている。5mmぐらいが多いが、予想以上に今回使いたい1mmサイズが沢山ある。が、少し足りないかな?このサイズを見つけてきたのはネネちゃんだったな。

 

 今日はレンガ作っているかな?と思ったら、ネネ、ノノ、ムムの三人で一生懸命に型枠に詰めていた。道路は左之助右之助兄弟の二人で凄まじいペースで仕事が進んでいる様子。一日と少しで既に滝壺の小屋から爺さんの畑まで自転車で駆け降りるになんの不自由もない滑らかさ。次の滞在期間中にでも完成する気がする。ま、出来ることは飯ぐらい作ってやる事か。

 今日ヤマメモドキを十数本をあっという間に釣り上げて、バケツで運んでおく。ホントに誘蛾灯のしたでバシャバシャ蠢いている姿をみるとどれ程虫が突っ込んでくるのかチェックしたい所だが、溜めずに全部水面に落下する構造を弄る気はない。

 ま、それはともかく、まだ昼までには時間があるので、同じ様に串焼きしにてやってもいいけど、里で使えるホットプレートを作ってみよう。

 先日は熱伝導率を重視しすぎて火力のバランスがとれなかったようだが、今回は出力系を揃え、制御系も小さいのを幾つか組み込んで段階的にしてみよう。

 以前の結晶の大きさのズレた物をサイズを揃えた物に置き換えてガタついた鍋もピッタリと収まった。が、魚や肉を焼くのに熱伝導率高い銅を使った鍋である必要は無いな。どっちが肉や魚にくっつくかわからないけど、とりあえず硬いシリコンカーバイトで蒸し焼きが出来るぐらいのちょっと厚めの鍋を作ってみる。

 昔、家で使っていたホットプレートの温度範囲が80度から260度ぐらいの段階的な温度管理だったから、完全オフと80度から20度刻みの10段階変化にしてみる。ただ今回は温度設定をそれの設定にするというイメージの焼き込みではなく、対になるナノマシン結晶が接触したら発動するという条件でイメージを焼き込む。使う結晶の量は増えたが、小さい結晶なので河原を探せばまだまだありそうだし、このヤマメモドキの頭にも入っているし。

 とりあえず、透明で深めのコジャレたホットプレートにしか見えない所に水を入れて試運転。80度ぐらいで止めてみるとグラグラという直前で止まる。買ってきた温度計で測ってみても数度ぐらいのズレで上下している。

 ナカナカ良いかも。一気に260度に上げてみる。もうもうと水蒸気が上がり始める。しばらくして水が無くなった。とりあえずオフにする。温度管理は良かったけども、出力が大きいのか。現状の1cmから5mmの結晶に変えて再度挑戦。

 まだちょっと火力が強い気がするが、シリコンカーバイトの蓋がカタカタ云うぐらいの感じは許容範囲として、飯と汁以外に日本から持ち込んだ野菜と一緒に酒蒸し半分で、塩焼きをネネ、ノノ、ムムの三人にやらせてみよう。

 そうと決まればまた寸胴で飯を炊き、特大アルマイト鍋で汁を作り始める。酒蒸しの玉ねぎでウサギって玉ねぎ食えるのか?と思ったけど、今まで味噌汁のネギも食ってるし、爺さんの畑にあるから存在は知ってるだろ。見切り発車でやってしまおう。

 

 ナナが鶏咥えて戻ってきたので、外に出て、

 「みんなご飯だよー」と告げて、ドアを開け放つ。

 血と内臓をナナの餌皿にあけて、最近は炊飯に使われていて埋まってしまっている寸胴の為に冷蔵庫に突っ込んでおく。午後からはラーメン屋が使う様な特大スープ用の寸胴をナノマシン結晶で作ってやろう。

 

 泥だらけの皆が、一度滝壺で手足を洗い、更に小屋の洗い場で手足を洗い流してから、席につく。

 ホットプレートの蓋を開けて軽く酒の香りが上がる状態で皆に一匹ずつ配る。アルコール臭でちょっと警戒した感じになったが、一口食べたらあとは瞬殺だった。頭の結晶を取り出して欲しかったんだけど。

 相変わらずバクバク食う牛の二人を横目に食べる量が少ないウサギの三人にホットプレートを扱わせて、ほぼ素焼きに近い塩焼きを焼かせてみる。予想通り問題なくホットプレートはナノマシンという概念がなくても動作出来たと。ちゃんと抜け道はあったと言うことだ。

 温めたホットプレートの上にヤマメモドキを入れて、裏表に焼き色がついたら、少しの水で蒸し焼きにして、蒸気が消えて完成。指図だけで十分使える。まあ、丸焼きと同レベルだからか。ただ煮炊きで薪を使わなれば、山の木の伐採も減るし、同様に暖房も薪や炭を使わなくてもいいのは大きい。まあ、住宅では使うだろうけど、微々たる物だ。

 ウサギの三人は自分たちで「料理」が出来た事に感動だか戸惑いだかよくわからない表情をしていた。今度は頭から結晶を探しながら食べてもらったが、牛の二人は見つからなかったと言い張った。うん、飲み込んだね。

 

 食事後一服していると、ホットプレートを欲しがったが、ある程度の数をまとめて配給しないと喧嘩の素だからダメと断る。第一籾殻ついたまま食っている人達に精米して炊飯教えないと始まらない。というか、精米機作らないと、や、精米機じゃなくて籾摺り機か。健康の為に下手にいきなり白米とか食わせない方が良さそうだし。が、籾摺りってどうやるか知らん。帰ったら調べておこう。

 それと明日の朝には帰るので、ご飯は出ない事を告げる。次は七日後だと思うので、その時来てねと。あと、レンガ作りは陰干しする時間が掛かるので、そんなに急がなくてもいい事と、それよりも河原にあるような小さな結晶を集めて欲しい。このヤマメの結晶がぐらいので。でも、雨や雨の後に河原に入っちゃダメだと念を押す。牛の二人は飯が出ない事に落胆してたけど、道が出来てこういう物が沢山運べる様になったら良いよね、と言ったら鼻息荒くヤル気を出してくれた。脳内で毎日白米食ってる妄想をしているんだろう。わかりやすい奴は使いやすくて便利ですわ。

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