017 道路作成とレンガ作り教室
行者ニンニクっぽい何かは大将の店で食った事のある酢味噌和えにしてみた。大将の店のように酢味噌を手作りしたわけじゃない市販品のチューブの酢味噌では味が違うけども、これは行者ニンニクだ。醤油漬けにして使おう。臭いが気になるから、日本に戻る当日や前日は食えないけど。意外と色んな野菜にも手を出していたんだと思うと面白い。
トマトも青臭いけど、これはこれで旨い。あー何か大将が『今のトマトは甘過ぎてアカン』とか言ってたな。と言う事は昔の品種なんだ。
夕食後、一度メールチェックの為に戻ったら、ちょうど女将さんから『聡子さんが店で「徹くんにいじめられたー」と大声で泣きながら飲んでるけど何したの』と。人前でそれも俺のバイト先で中々酷い事してくれてるなぁと思ったので、『顧客情報を第三者にペラペラ喋った事を齋藤さんに手酷く怒られた責任転嫁してるだけですよ』と返信して、聡子さんには直接電話。出たのはいい加減酔っ払い過ぎて何喋っているのかサッパリわからん。ここは無慈悲に
「齋藤さんに云うよ」
と一言云って、ガチャ切り。数分後、女将さんから『電話切った直後にタクシー呼んで帰ったけど、何したの』とメール。『聡子さんに言う事聞かせる良い方法を覚えたんで』と返した直後に聡子さんから延々と『ごめんなさいすいませんもうやりませんゆるしてください』が数画面分繰り返されている病んでるメールが来たので、『次は無いですよ』と返信した。どんだけ齋藤さん怖いんだ。……確かに怖いか。
さて、図面書きだが、ノートPCでCADソフトとか入れてなかったし、考えてる時間の長さを考えれば向こうで手書きの方がいい。確か親父の部屋に製図机一式があった記憶があるので、ちょっと酸化の進んだ紙束と一緒に諸々持ち出す。
で、転移。
あ、日本で30分がこちらの六時間か。こちらでは普通に深夜だから、寝よう。
朝の散歩から帰ってきたナナから餌の催促をされて起きる。既に外ではガヤガヤ農具を持ち出している音がする。特に特大アルマイトバケツが鳴る音がすごいな。
ナナには鶏の半身をあげて、自分はガラスープで作った雑炊に適当に野菜を投入して、適当な朝飯。
あー明日には教えておかないとダメだから、明日に教える相手を呼び出さないと。というか、今日中に図面書いて説明する資料を作らないとアカンのか。結構タイトなスケジュールだ。
ちょうど小さいバケツを運んでいるネネちゃんと無茶苦茶な速度で竹林を伐り倒している左之助さんがいたので、呼ぶ。
「農作業の合間で良いからやって欲しい事かあるんだ。だから、左之助さんの所で左之助さんの次に力の強い人と長老の中でも若い人、ネネちゃんはギギさんと手先の器用な人を二人ぐらい明日来てほしいんだけど、良いかな。夜明けと共に来なくても良いからね」
「「はい!」」
明確な返事をされて、さて準備せねば……。
図面というか説明図は頭の中にイメージがあるので殆ど手作業の時間だけだった。と言っても日干しレンガの作り方とかも含めて書くと昼までかかった。というかナナが時報の様に帰ってくるから昼にしている感じがあるな。
ボケェーと飯を食いながら小屋を見渡してみる。
それにしても、この小屋の家具が製図机しかない。あと、布団。殺風景極まりない。囲炉裏あるけど、冬になるまでに炬燵作りたいな。今のままでは毛皮の炬燵になりそうだが。繊維関連もなぁ。彼らは毛皮あるから余り気にしてない感じがするし。
どちらにせよ採石場になってるここのお陰で結構涼しいが、冬にはここを遮蔽しないとダメだな。
さて、午後からはとりあえず説明用の人間サイズの各種道具を作る。そして大体3倍の重量のタコやハンマーを作って行くが作っても持ち上がらない。ズリズリ引き摺って新しい採石場の外に放置。楔もちょっと大き目。先端がシリコンカーバイトになっているから、彼らが投げると岩に刺さりそうではあるが。
日干しレンガの下に敷く板もシリコンカーバイトの4m*3mの薄い板を大量に作っていく。と言っても三枚目から昨日まで鍬や槍を作っていた自動化したけども。一枚とってみても結構軽い。竹炭用の窯の中に棚を設けて一枚スルリと滑る様に入る事を確認した。中々よろしい。
レンガの型枠は10cm*5cm*20cmの型枠が五つ繋がっているものを用意。藁を切る為の裁断機も作ったが、彼ら藁とか保存してただろうか……もしかしたら食べてたりしないか?だって牛だし。まあ、最悪爺さんの納屋からあるかぎり持ち出そう。
で、結構な量の残渣から今まで使ってこなかったカルシウムというか消石灰を目一杯抽出して密閉容器を作って入れておく。
何か一気に残渣の量のが減ったな。亜鉛とかチタンとか鉄とかありそうだけど、今は良いや。下手に分解して流れ出して汚染することも無い。
開いたスペースに日干しレンガを陰干しする棚を複数設置しておいた。
採石場を出ると、もう竹林の掘り返しが終わって根っ子まで抜かれている。力任せに振り回せる道具が揃っておかしくなってるのか?まあ、こちらとしては仕事が早い分には何とも言えないけど、スゴイな。
で、多分竹の根っ子の下にあるんじゃないかと予想していたレンガに必要な物。粘土。おお、結構な量がありますなぁ。これは有望。
《大きなムカデいた!》と全力疾走しながら鶏咥えてるんじゃないよと思うが、先日の大蟻の事もあるからパニックになっても仕方ないわな。
「で、そのムカデどうしたんだ」
《猫の人が頭ブシュって刺してた》
おお、槍が役立ってるね。木の棒や石器で10倍の厚さの硬いキチン質とか正気の沙汰じゃないからな。
いつもの様に内臓と血をナナに与えてから、飯を作りつつ風呂を沸かして飯を食って、ちょっと震え気味のナナと一緒に風呂に入って、ペット用シャンプーで洗ってやる。意志の疎通ができる分それほど暴れないし、風呂の中ではクターと伸びている。昼間の野生は何処行った。
風呂上がりにブルブルと水を切ったと思ったら、即いつもの毛皮の上で丸くなってた。まだちょっと大きい虫は恐怖だよな。俺も怖いし。
さて、日本に帰って納屋の藁をこちらに持ってこなくては。都合、十数回行き来した気がする。置き場所に困ったから、とりあえず小屋の奥の採石場に置いたけど、明日作らないとなぁ。と思いつつ就寝……。
夜明け直後じゃなくていいと伝えたはずが、日が昇った直後の様な気がするのですが、何故彼らはこんなに朝早いんだろ。行動開始の基準が夜明けと同時だから、この時間に到着すると。早いよ。
とりあえず図で教えてから、手を動かしてやってみせて、牛の人用のハンマーとかで石とか割らせると教えるのがバカバカしくなってくる。タコで突き固めるのも、こちらが1cmぐらいしか下がらない所が、その上から5cmも凹むとか俺も凹むわ。とりあえず石を混ぜつつ盛り土をして3.6m(説明では12尺)幅の基礎を作る事をお願いする。……何かすごい勢いで作られていくのが予想されるので、レンガ作りの練る所も牛の人にお願いしよう。調合や藁を細かく切るのはウサギの人に任せて、土、粘土、消石灰、切った藁をバケツで大量に計量して、多少の水を加えて牛の人に混ぜてもらう。うーん、早い。重機要らずだ。
ウサギの人と練られたレンガの素を団子状にして、型枠を並べた所に投げつけて空気が入らない様にしつつ成型した生のレンガが並んでいく。結構な速度で3m*4mの板が埋まり、牛の人に頼んで窯に作った棚の上から積んでいく。ここが埋まったら、向こうにも棚があるからというもの教えていく。
力仕事は牛の人、細かい作業はウサギの人にと分業が上手くいくといいな。
ウサギの人がレンガを型枠に詰め込んでいる間に牛の人の作業を振り返りみると一人が支持を出しつつ左之助さんともう一人が息のあった感じでホイホイと作業してる。まあ、いいや昼飯の時にでも聞いてみよう。
でだ、左之助さん一人であれだけ食うんだから、三口ある竈全部使って寸胴で米を炊くという暴挙をしつつ、囲炉裏でも巨大なアルマイト鍋で野菜をたっぷり入れた味噌汁。あとはマスモドキを大量に獲って焼くか。
ホント、ここの魚は擦れてないから浅瀬に餌撒いて突くのが一番早いわ。10分掛からずに九匹。食べる内訳は牛の人が一人二匹で残りは二人で一匹というぐらい。捌いて串を打ってアルマイト鍋を載せている網の隙間に並べておく。ああ、人数分の食器無かった。作らなきゃ。
米の蒸らしを始めたぐらいで皆を呼んで、水場で足を洗って囲炉裏の周りに詰めて入ってもらって飯にするか。