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曽祖父の遺産に惑星一つ  作者: ゴート
11/28

011 皆さんの立場を訊いた

 昼飯を食べながら、各々の立ち位置を聞いてみる。

 

 ササさんは、単純にウサギの民の中で最長老で、36歳。ネネちゃんが孫で11歳。ウサギの民は沢山産まれるけど、子供の頃に半分以上が死んで、それを過ぎると大体11歳から13歳で結婚して、30歳ぐらいで亡くなるのが普通とか。死因は栄養失調もあるけど、子供の頃は特に大蟻にやられたり、先程のような大トンボに連れ去られたりというのが結構多いらしい。

 地球の動物のウサギの平均寿命とか知らないけど、30歳で亡くなるのが普通とか流石に技術を磨くとか難しいから、使い捨ての単純作業を割り当てられてる可能性があるのかも。確かに成熟が早いから早く死ぬ可能性は否定できないけども、この世界なら何か抜け道ありそう。が、今の状態でウサギだけ地に満ちても役に立たないのが現実か。ササさんはもうお爺さんだからそんなに手が器用じゃないだけかも知れないけど、ちょっと思い詰めた雰囲気が心配だ。

 

 白露さんは、猫の民で一番狩りの上手い雌がまとめ役になっているそうだ。現在32歳で二男二女の母とか。16歳ぐらいでつがいを得て子供を産むけど、誰の種とかあまり関係なく皆がまとまって子供の世話をするとか。ただ戦いで命を落とす事も多く、40歳まで現役で戦うのが限界ぐらいで、それ以後は集落の中で子供の相手をするらしい。現在の最長老は52歳とか。何だ結構オバちゃん猫だったのかと一瞬思ったけど、その瞬間に白露さんの瞳孔が細く絞られたのをみて、意識を逸らす。

 地球の猫と同じ様な女系家族だけど、群れを成してるのか。で、戦いで死ぬのを除けば平均寿命もペットで飼ってる猫の倍以上になるのかな。スリングショットを得て遠距離攻撃や槍の様な中距離武器を得れば生存率上がりそう。今までの武器を訊いたら、シャキンと爪を伸ばしたのにはドン引きしたけど、木の棒とか石ナイフが主流らしい。それも一対一で。どちらにせよ脳筋バカだ。三人一組の体制を教えないと折角の遠距離攻撃が無意味だ。

 

 左之助さんは、牛の民で毎年大きな岩を持ち上げる祭りの優勝者とか。28歳。一応の代表者だけど、牛の民のやる事等の方向性は長老達の経験と判断を仰ぐのが普通らしい。正直居なくても長老達がみんなやってくれるとか。

 脳筋と思いきや一番まともな集団だった。ただ大飯喰らいがネックか。16ぐらいで子供を産んで集団で育てて病気も怪我も無く40歳位まで普通に生きるとか。最長老が65歳。ただ身体が大きすぎて、田植えで田んぼにに沈んだり、屈んで米や麦、野菜の収穫が辛いので、ウサギと共依存という形になっているとか。それでも彼らの力は多分鍵になる。

 

 何処も何らかの問題があるけど、とりあえずは爺さんの畑を開放すれば、当面の食料事情は解決するのかな。さっき、竹を伐り倒したとかいったから、飯食ったらとりあえず畑までは見に行こう。

 朝飯の時のようながっついた食い方はしなかったけども、寸胴で作った味噌汁と寸胴で炊いた米が無くなり、マスモドキのムニエルだけじゃ足りずに、鶏肉とキャベツの炒め物も作って、昼飯を終えた。

 お茶を飲んで一休みしている時に一服。何か説明したり物を作っているよりも、彼らの飯を作っている時が一番疲れる様な気がするなぁと思いつつ溜息ついてたら、ササさんが

 「先の賢者様がよく煙を吐きながら溜息をついてました」

 と。そりゃそうだよなぁ。山ほど農機具を持ち込んでも12倍の速さで錆びついて行ってしまう世界。鉄を持ち込むとか愚かだよ。一応まだ退学も除籍もされてないので材料工学科の学生だから珪素系の化合物を思い出して出来そうな一歩を踏み出しただけだもの。ましてや折角あるナノマシンを上手く使えなかったら無理ゲー過ぎる。よくもこう何枚も毛皮を溜め込むほど爺さんは狩りが出来たんだろ。

 《義信様は無意識に取り込んだナノマシンで身体を若く維持し、時に強化されていました》

 あ、そうか。こちらの世界で12倍速で時間が流れるなら、それだけ歳も食う訳だけど、逆に見た目若い位で飲み歩いていたんだから、そういう事も出来るのか。じゃあ、このド近視の視力も治せるという事か。

 《正確なイメージさえあれば可能です》

 そのうち治そう。ん?爺さんがナノマシンを取り込んでいたなら、遺骨に結晶が残っている可能性があるかも知れないのか。幸い骨壷は仏壇前にあるから、確認する事も不可能ではないな。火葬で無くなっていなければだけども。

 ま、まだ老化を考える程ではないから時間はある。ゆっくりと謎解きしましょうか。

 

 昼食後、左之助さんに頼んで切り拓いてもらった竹林を抜けて、皆を引き連れて爺さんの田んぼと畑を回る。

 田んぼは水が抜かれた状態でひび割れているが、水門を開けると川の左右に一辺約30mの正方形の田んぼが段々で五枚並んで水で満たされた。その奥には麦らしき穀類が野生状態で生えている。その奥にも野菜畑があり、低木の木々、背の高い木々と一辺30mの正方形で整然と並んでいる。それぞれの間にはあぜ道があり水路が完備されていて、背の高い木々の奥からも水が湧き出している様でチョロチョロと真ん中の川に流れ込んで水量を増やしていた。

 麦は小麦だったり大麦だったりライ麦だったりと野生化して一枚の中で混ざり始めている始末。背の低い木々に近付いてみると、お茶の木だったりミカンやキウイだったりとりあえず色んな種類が、背の高い木々も基本的に何か食べれる物をがなるという前提で植えられていた。

 「あー田んぼは代掻きすれば使えそうだね。麦も混ざっている事を無視すれば食べれない訳じゃない。というか、鶏が沢山いるのは麦を食ってるからかな。何処かに巣があるかも。卵を獲ってきて、飼育して卵を食べるというのもありだね。野菜も勝手に生えてるから、収穫するもよし、種が出来るまで待つも良し。木々は基本的に食べれる実がなる物ばかりだから、里にない種類は種をとって、栽培が出来るようになってからだね。溜池にしちゃうのは」

 色々と見て回るうちに、某Gじゃない大きな甲虫が地面に落ちた枇杷の実を貪っている所に遭遇。よく見てみるとコガネムシっぽい。白露が刺そうとするのを制して、

 「こいつらは空飛べるの?」

 「トンボや蝶程上手く飛べないが、畑の作物をよく食べる。今まで木の棒で叩いても潰せなかった。ひっくり返して脚を折るぐらいしか報復が出来なかった。だけど、この槍なら……」

 「……、じゃあ、どうぞやって」

 頭の硬い部分だと思うが、サクッと突き刺さり動きを止める。ついでに自分も杖代わりに持っていた槍で縦に切り開いてみると確かに昆虫だ。が、1cm近いキチン質が硬い。それに結構な重量だ。よく飛べるな。

 「こういう硬い殻の虫で空を飛ぶのは大きい虫は他に何かいる?」

 「テントウムシ!カナブン!」

 「ホタルも結構硬いな」

 「カブトムシやクワガタムシは飛ばないの?」

 「奴らは地面を這うだけだけど、叩いてもビクともしない」

 重量的に飛べない境界はある様だな。元々羽の比率の大きいトンボと蝶(もしかしたら蛾も)飛べるようだ。不思議な力で飛んだりはしないのは安心。

 「大きい蜂とかいる?」

 「あれは空飛ぶ悪魔。巣を見付けたら藁や干草を積んで焼き払う」

 あっ、火は使えるんだ。だけど、調理したり土器を作ったりはしないと。あくまで蜂退治で爺さんが教えただけかな。ホントに歪に成長しているなぁ。といっても、土器も青銅器も鉄器もセラミックも通り越していきなりシリコンナイトライドやシリコンカーバイト製の道具をバンバン渡すつもりな俺が云う事じゃないな。

 

 一通り見て回った後に小屋に戻って、備中鍬のサイズ違いを左之助さんの特大サイズを入れて四サイズ。斧も数サイズ作ったけど、これは後回しになるという前提。

 包丁というかサバイバルナイフと槍は全種族共通で渡すつもりだったので、色んなサイズを作った。

 あと、水撒きと衛生管理の為にもバケツを色んなサイズ作った。ここに居る皆は、いくらなんでも水浴びしたんだろうけど、いつも洗っている訳じゃないので、ちょっと獣臭い。

 里の住人全員に行き渡る事はない量だけど、自分が使いやすいサイズを選んで集計して教えるの様にと伝えた。

 スリングショットはネネちゃんを筆頭にウサギの民で里の為に物を作って貢献するのと、採取の間に狩りが出来るようにする。皮はあるみたいだし。

 

 日暮れ少し前になって、これ以上滞在すると夜になるという事で、みなさん里に帰っていった。鍬や槍、バケツを大量に背負っている姿は少し滑稽だった。

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