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曽祖父の遺産に惑星一つ  作者: ゴート
10/28

010 道具使用説明

 とりあえず昼も近い事なので、獲物を獲りますか。小さめの銛を三本と長いのを一本、槍は特大サイズとネネちゃんに渡したのと同じサイズと少し短いのを二本。それと解体用の包丁を人数分。それぞれに渡して滝壺の横に移動。

 まずは銛を構えてもらって、冷蔵庫でダメになりかけているマスモドキの内臓を刻んで少しずつ浅瀬にバラ撒く。簡単にバシャバシャと浅瀬に出てくるマスモドキを皆に刺して貰って慣れてもらう。死ななかった奴を〆たりはらわた抜いたり。マスモドキはマスと同じ様で鱗とらなくても大丈夫みたいだし。白露さんは取り出したはらわたをそのまま食ってたけど、虫怖くないのかな。肉食系の本能みたいなものとして好きにさせる。台所の水場で血を流して、とりあえず冷蔵庫に。

 次は槍を試してみるけど、上手く出来るかな。身体のサイズに合わせて槍を皆に渡す。ネネちゃんには前に渡した奴より一回り小さい物に変えてもらう。

 「おーい、ナナ。鶏捕まえなくていいけど、群れを追い込んでくれー出来るか?」

 《やってみる!》

 頼もしい。かなり遠くから左右に回り込みながら吠えて近付いてくるのが聞こえる。そんなのやったことないだろとか思うけど、こちらのイメージが直接伝わっているのかね、全く。

 暫く待つと、滝壺の対岸の竹林から二羽の鶏が飛び出してきた。音もなく白露さんが飛び出して一羽の頭を切り落とし、石突でもう一羽の頭を粉砕していた。一瞬の出来事だった。一跳びで滝壺の対岸に渡るのもすごいし初めて使う槍という武器を自然に使いこなしてる。

 と、思っていたら、こちら側の竹林から二羽飛び出してきたので、俺が何とか一羽の首を切り落とし、左之助さんがブンブン振り回しているうちに柄の部分が胴体に当たって、鶏が爆散してた。遅れてナナが飛び出したが間違えて斬りつける者はいなかった。

 「まあ、飯にはこれで十分だろうけど、大きな虫とかもいるから、多少は練習しようね。あ、白露さんはすごいね。猫の民ならみんなそのぐらい出来そうなの?」

 「大半はこの位簡単な事だと思います」

 平静を保ちながらも槍についた血を振って飛ばしている尻尾がゆらゆら動いている。ドヤ顔なんだろうか。猫の顔では微妙過ぎる感情表現がわからない。

 一方、ウサギの二人はちょこっと何かが苦手らしく一歩引いていた。でも、身を守るにはこの位は必要じゃないのだろうか。とりあえず逃げるタイプなんだろう。

 「左之助さんはこういう素早い対応は出来ないみたいだけど、凄い力だね。鶏が消し飛んじゃったよ。そんな力で木鍬なんか扱ったらすぐ折れちゃうよね」

 「普段は加減してる。それでもよく折れる」

 「それなら折れないような鍬とかがいいね。あと、畑の水やりも担当してるんだよね。んーちょっと待って」

 竹炭を片手に小屋の奥の石切場に入り、刃先だけシリコンカーバイトで残りの部分と柄までシリコンナイトライドで、体型に合わせてかなり長く太い大き目の備中鍬を作ってみた。作ったけど、これ重いわ……。一体何kgあるんだろ。

 あと、珪素の残渣の山からアルミニウムを取り出して、ペール缶の半径1.5倍高さ1.5倍。容量的には60リットルという大きさのアルマイト加工した化物サイズのバケツを作成。持ち手はシリコンナイトライドで伸びないと思う。

 特大サイズの備中鍬を引き摺りながら、バケツを背負って小屋を出る。

 「左之助さんぐらいだと、このぐらいの物がいいんじゃないかな」

 と、二つを手渡す。

 「その鍬でこう振りかぶって、その辺りの地面に突き刺して耕してみて」

 ブンッと空気が鳴って、踏み固められた小屋の前の地面にいとも簡単に鍬が刺さり、ボコッと土が盛り上がる。左之助さん本人も驚いているが、踏み固められた土の下にあった石も綺麗な断面が出ていたのには、俺も驚いた。

 「これなら力一杯畑が耕せるね。次はその桶というかバケツっていうんだけど、それで水を汲んで、向こうに向かって水を撒いてみて」

 まだ、驚いた感じだけど、表情がよくわからない牛の顔だけど、云われるがままに特大バケツで滝壺から水を汲んで、満杯のまま竹林の方にぶちまける。遠心力で壊れるかと思ったけど、意外に大丈夫だった。

 「ちょっと大きくしたけど、重過ぎたりしない?」

 「け、トール様!これ、くれるのか!」

 「ああ、里の牛の民が皆そのサイズが良いのかわからないけど、働き手分は作る予定だよ」

 「ありがとうございます!」

 と、巨体が土下座して平伏してる……。

 「これから働いて貰う訳だし、道具ぐらいはね。で、みんなそのぐらいのサイズでいいのかな」

 「俺にはわかりません……。ただ、俺は一番力が強いから……」

 「そっか、帰る時に何サイズか作るから、持って帰って里で確かめて」

 

 「さて、次は白露さん。狩りしてるんだよね。その槍が気に入ってるみたいだけど、遠くの獲物や飛んでる獲物はどうしてるの?」

 「遠くの獲物は近付いて仕留める。飛んでる獲物は降りてくるのを待つ。降りて来ないなら石を投げる」

 うむ。モノの見事に近接脳筋だな。

 「強い獲物だったらどうするのよ」

 「負ける」

 「あーそれは危ないよね」

 「それが役割」

 「いや、それはダメでしょ。あーちょっと待って」

 まだまだある毛皮から毛を抜きとり、縁側で皆に見せながら毛皮を細く切って紐状にして、三つ編みを作って真ん中辺りに広い皮を編み込んでスリングショットを作ってみせる。

 この段階ではまだ何の事かわからないか。三つ編みの片側を手首に巻いてから、河原の小石を拾ってスリングショットの真ん中に置いて片方を握って振り回して、遠くの竹を狙って手を離す。

 ……狙った竹とは違う竹に当たったが、竹に弾にした小石がめり込んでいた。

 「これはスリングショットっていう飛び道具。じゃ、練習してみて」と、さも狙った所に当たったかのように自信満々な感じで白露さんに渡した。

 石を投げる以上に遥かに強力で、飛んでいる獲物を狩る事が出来る。強い獲物に近寄らずに倒せるという事がわかった様で、黙々と練習を始めた。

 身体能力が凄いのはわかっていたけど、いきなり同じサイズの小石で竹を貫通してたりするのは、ちょっと怖い。が、納得いかない様子なので、まだ狙った所に正確に当たってはいないようだ。

 槍のサイズを訊きたかったが、あまりに真剣なので、後回し。

 

 「さて、ササさん。彼らに比べると明らかに非力な今のあなた達の仕事は収穫採取だから、その包丁と護身用の槍で良いと思うけど、今、白露さんが使っているスリングショットなら十分に力になれるし、手も小さいから上手く作ることだって出来ると思う。そういう事は出来ないかな。物を作って里に役立つんだ」

 「……やってみましょう」

 再び縁側でスリングショットを見せながら作る。ササさんは悪戦苦闘していたが、ネネちゃんが予想以上に器用なのと記憶力がある様で先程の見せながら作ったのを殆ど記憶していてあっさりと作ってしまった。

 ササさんに教えるのはネネちゃんに任せて、昼飯でも沢山作りますか。あ、一人暇してる左之助さんに見た目通りに似合いそうな大きな斧作って渡して、爺さんの畑までの竹を幅3m(説明では十尺)伐り倒す事をお願いしておく。

 

 朝の消費速度を考えて、寸胴で味噌汁とご飯を炊くか。マスモドキは捌いてムニエル、鶏肉は捌くだけ捌いて足りなかったら焼けばいいか。ナナの分の内臓は別にしとかないとな。

 飯が出来上がり、皆を呼ぶと、ササさん以外はニコニコしていた。

 

 「トール様!あの斧というのも凄いな!あれなら南の木々も伐り倒せる!」

 大斧構えたその姿はホントにミノタウロスですわ。

 「トール様!二十間(約36m)先の的にも当てれるようになりましたし、空から降りて来ないトンボも落とせました!」

 と、両手広げたぐらいの頭の吹き飛んだ巨大なトンボ。ナナとか食われるだろ、この大きさは。巨大昆虫はちょっと積極的に根絶しないとヤバそうだ。マジでドラゴンフライという英単語を思い浮かべてしまう。

 「たくさんできたよ!」

 と、ネネちゃんの両手には束になるほどのスリングショット。編み目も均等で長さもほぼ同じ。無茶苦茶器用なんじゃないのか、この子。

 「……」

 ササさんの手には数本のスリングショット。ただし三つ編みがキチンと出来てないから、ガタガタ。えーっと不器用キャラクタなんだろうか。

 「あーみなさん。サッサと足を洗って囲炉裏の所に座りなさい」

 ゾロゾロと座っていく三人とは別に配膳を手伝おうとするネネちゃん。この子は自分が何をすればいいのかいつも考えているのかな?の、割にササさんのフォローはしないんだ。もしかして身内でいつもは甘やかされてる関係なのかな。

 「あー、ササさん。ネネちゃんはササさんの娘さんですか?」

 「いえ、孫になります、トール様」

 お爺さんだったのか、ササさん。

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