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カルテットスターから、ときめきと愛をこめて 

いよいよ迎える文化祭本番!

はたしてカルテットスター&彩月の運命はいかに!


今回は文化祭の魅力をより感じてもらえるように、前後編なしの一話完結です!

『姫……大事な話がある。聞いてくれないか? ……今宵、満月の夜。あなたをお迎えにあがりたい』

マイクで拾われた彼のりりしい声が、体育館中に響き渡る。

あまりのことに私は、何も言えなかった。

今日は待ちに待った相座高校文化祭。

そして今、三年生である牙狼さんの舞台真っ最中だ。

さすがは有名校相座高校と言うべきか、お客さんは満員御礼だ。

生徒たちも、カルテットスターである牙狼さんに釘付けである。

牙狼さんは王子役なのか、着ている服も彼をイメージしたものでまるで白馬の王子様って感じだった。

相手役の女の子も、お姫様って感じですごくきれいだった。

なんていうか牙狼さんって、演技うまいんだな。

練習の時の彼は、本気だった。

まるでその姫のことが大好きだというように―

「すごいね、牙狼は」

「あ、竜駕君」

「お疲れさま、彩月ちゃん」

ふとそばには竜駕君がいた。

彼は相変わらずの笑みを向けながら、私に言った。

「ダンス、完璧だったよ。さすがだね」

「そ、そんな。私なんてまだまだで……」

「でも大成功だったじゃない。彩月ちゃんは十分頑張ったと思うよ」

褒められているのがすごく恥ずかしくなり、思うように言葉が出てこない。

牙狼さんの劇の前にやった私たちのダンス発表も、無事に何も起こらずに幕を閉じた。

私はというと、自分的にはうまくいったのか言ってないのか微妙なところだ。

ダンスを踊ったあと、山内さんにやるじゃんって褒められたっけ。

少しはみんなの役に立てたのかな、私も。

「この後は昼休みだよね。せっかくだから、色々見てきたら? ユキもノンちゃんも、いると思うから」

「そういえば二人は何をしてるんですか?」

「行ってからのお楽しみ、ってノンちゃんは言ってたよ? ユキはめんどくさいとか、そういうことしか言ってなかったような……」

まったく違う二人の答えに、思わず笑ってしまう。

本当あの二人は、仲がいいのに正反対だなあ。

それは牙狼さんと竜駕君もなんだけどね。

牙狼さんのステージを見ながら、私は改めて彼らの中の良さをうらやましく思うのだった。


いつもの教室が、一気にたくさんの人でにぎわっている。

それを見渡しながら、私は思わず微笑んでしまった。

さすが相座高校、すごい人盛り……

生徒の親御さんらしき人はもちろん、他校の生徒がたくさんいる。

そういえば私もカルテットスターにあこがれてた時は、文化祭行ってみたいなとか考えてたっけ。

もともと住んでいた場所からは遠くて、夢に終わったけど。

今じゃそんな高校に通ってるんだもんなあ。人生、何が起こるかわからないってこのことだよね……

「あっれぇ~~~~湊さぁん、久しぶりぃ~♪ 文化祭楽しんでるぅ~?」

こ、この声って……

恐る恐る振り返りながら、思わず顔を曇らせてしまう自分がいる。

そこにいたのは予想通りの島崎さんだった。

彼女はウエイトレスのようなかわいい服を着ていて、何かたくらんでいるような笑みを浮かべた。

「お、お久しぶりです……島崎さん……島崎さんのクラスは喫茶店、ですか……?」

「そうなのぉ~かわいいお洋服でしょ~? パパが茉凛のために作ってくれたんだぁ~☆ これでカルテットスター様も茉凛に、い・ち・こ・ろよっ❤︎」

確かにかわいい洋服だな。

お嬢様だからって、洋服作ってもらえるってすごいな。

「ところで湊さぁん。竜駕様とダンス踊ってたわよねぇ。いいなぁ、うらやましいなぁ」

嫌な予感がする。

気が付いた時には、一歩のけぞった私がいた。

だが彼女はそれを察知したのか、すっと私に顔を近づけた。

「生徒会室に出入りしてることと言い、竜駕様にダンス教えてもらったりぃ……ほんと、よくやるよねぇ」

「そ、それは……」

「あ~そうだあ。茉凛の喫茶店来る? 湊さんだけに、大サービスしたいんだけどぉ」

逃げなきゃ。早く。

そう思うのに、体が思うように動かない。

また、あの時と同じようなことになるのかと思うと……

「店員が客に押し売りか? くだらねぇことやってんな、お前」

え?

「よぉ。女二人で仲よさそうだなあ」

そう言ったのは、茉凛さんの後ろにいた雪風君だった。

口調は怒っているというのに、なぜか表情は笑っていた。

「キャ―――――――! 雪風様ぁぁぁぁ❤︎ この格好、どうですかぁ? 茉凛の喫茶店のお洋服なんですけどぉ」

「あ―似合ってる似合ってる、かわいいかわいい」

「本当ですかぁ? 茉凛感激❤︎」

「店の連中がおまえを探してたぞ、早く戻ってやれよ」

「はぁ~い❤︎ 雪風様も、よかったら茉凛の店に来てくださいねっ♪」

「へーへー、気が向いたらな~」

小さく手をふる雪風君に、小走りで去っていく島崎さん。

彼女がいなくなって安心したせいか、はあっとため息をついた。

「ったく、めんどくせぇ奴だな。一日のうちに何回手を焼かせるんだよ、お前は」

頭をかきながら、呆れ気味に雪風君が言う。

想えば、彼に助けられたのは今回で二回目だっけ。

なんだか、助けられてばっかりだなあ……

「ゆ、雪風君。どうして、ここに?」

「竜駕からお前が展示見に来るって聞いたから。あの女や人間に変装した俺の仲間に狙われてねぇか、探してたんだよ」

「そうだったんですね……助けてくれて本当にありがとうございます」

「か、勘違いするんじゃねぇ! 別にお前のためじゃねぇからな!」

あ、あれ? なんか私、変なこと言っちゃった?

逆に怒らせちゃったかなあ。私って本当だめだなあ……

「それで、あの……雪風君のクラスは、何を?」

「説明するより、見たほうが早いだろ。ついてこい」

そういって雪風君は強引に私の腕をつかんだ。

私はどうすることもできず、彼に連れて行かれるまま歩いていく。

しばらく歩くと一つの教室につき、そこには信じがたい光景が広がっていた。

教室の天井いっぱいに、広がっている星。

何人かの生徒が準備のため、駆けまわっている。

青く映し出されたその星空は、まるで本物のようだった。

「す、すごい……プラネタリウム、ですよね?」

「担任が理科大好きでよぉ。俺が色々作れるってこと知って、前々からやりたかったらしい」

「きれいですね……」

「つっても上映時間はまだなんだけどな。お前だけ特別にみせてやってんだ、感謝しろよ?」

そういって笑った雪風君の笑みは、いつにもましてかっこよく見えた気がした。

雪風君って、こんなふうに笑うんだ。初めて見たような……

「な、なんだよ。じろじろ見てんじゃねぇよ」

「雪風君の笑顔って素敵ですね。かわいい、っていうか」

「はぁ!? おまっ、かわいいとか言ってんじゃねぇよ!!?」

照れているのか、雪風君の顔は真っ赤だ。

あまり見ない彼のかわいい一面を見て、なんだかうれしくなる。

少しずつ仲を縮めれてるのかな、雪風君とも。

「そういや希のとこはもう見に行ったのか?」

「いえ、まだですけど?」

「なんかすげぇって評判みたいでな。俺はこの後上演の手伝いあるからいけねぇけど」

「そうなんですか。じゃあ私、行ってみます!」

「いいか、なんかあったら言えよ。すぐ駆け付けるから」

いつにもまして真剣な顔つきに、ドキッとしてしまう私がいる。

雪風君はそれだけ言うと「じゃ、じゃあな!」と言って、準備している人たちの近くへと行ってしまった。

頼もしいな、雪風君は。

でも守られてるだけじゃだめだよね。私も、しっかりしなきゃ!

さて、希君はどこで何をしているのかな。

何組か知らないし、かといってこの人ごみの中を探すのもなあ。

「湊さんっ、湊さんっ」

探しに行こうとした時、どこからか声が聞こえた。

値を見渡すが、周りには誰もいない。

おかしいな。今、希君の声が聞こえた気が……

「こっちです、湊さんっ」

くいくいっと下から、服を引っ張られる。

下を向くと、すぐそばに希君がいた。

何やら白い布を頭までかぶっていて、片手にチラシのような紙が入ったバスケットを持っている。

「希君! そんなところにいたんですね、気が付きませんでした」

「大丈夫です。湊さんこそこんなところで、何をしていたんですか?」

「えっと、雪風君のクラスを見てて……ちょうど希君のクラスをのぞきに行こうと思ってて」

「では湊さんも入りますか? 中に」

「中?」

何のことかわからない私は、ただ首を傾げた。

希君が教えるように指をさした方向には、お化け屋敷の地のような赤い色で塗られた看板があった。

「……もしかして、希君のクラスって……」

「2組プレゼンツお化け屋敷、なのです」

「雪風君が評判だって言ってましたけど……」

「では試しに一回、やってみますか?」

そういうと希君は、両手をお化けのように前に出し、

「うらめしや~」

といって私の顔を覗き込んで見せた。

正直、怖くはあまりなかった。

逆に行動自体がかわいらしく見えて、なんだかほほえましいな。

「……湊さん、怖いですか?」

「え? えーっと……」

「竜駕にもらった本の通りにお化けを再現しているのですが……なぜでしょう……」

どうやら希君は、本気で怖がってほしいらしい。

希君がやると、何でもかわいく見えて仕方がない。

そう思っていると希君はぽんと納得したようなしぐさをすると、意見を主張するように手をあげた。

「湊さん、少しかがんでもらえますか?」

「? こう、ですか?」

私がかがんだ、その時だった。

希君が私の額にキスをしたのは。

びっくりして、素っ頓狂な声をあげてしまう。

「の、のののの希君!?」

「驚きましたか? 希サプライズです」

「こ、怖がらせるのと驚かすのとは違う気が……」

「文化祭の最後に、生徒会企画があります。お化けも企画も頑張ります。湊さんも、ぜひ見て行ってくださいっ」

そういってぺこりと浅くお辞儀をすると、希君は楽しそうにスキップしながら私のもとへ去っていったのだったー


「彩月、ちょっといいですか? あなたに見せたいものがあるんです」

午後の部が始まってしばらくたったころ、剣城ちゃんが私に話しかけてきた。

よくわからないまま、自分の席を外れる。

舞台は最後ともいえる舞台発表中で、たくさんの人が盛り上がっていた。

「どうしたの、剣城ちゃん」

「もうすぐ生徒会企画でしょう? 彩月には生徒会のお手伝いでお世話になって言うので、私からのプレゼントです」

そういって彼女に連れられた場所は、体育館の二階だった。

前の人で見にくかったものが、一気に舞台全体まで見える。

上から見ると、今まで見えていたものが何だか違う風にも見えとても新鮮に思えた。

「う、うれしいけど……いいの? 私だけ」

「もちろん。こうでもしないと、彼らは満足してくれませんからね」

「彼らってカルテットスターのこと?」

「彩月に特等席で見てほしい、みんなそう言ってましたよ」

嬉しいような、照れくさいような複雑な気持ちでいっぱいになる。

私、迷惑かけてばっかりなのに……

今度皆の好きなものでも作ってあげよう。少しでも、みんなが笑ってくれるように。

『えー皆様! 大変お待たせいたしました! 間もなく生徒会企画の開始です!』

まるで実況のような放送の仕方をした女の子―文化祭で放送係となっていた山内さんが、マイクに向かって話し出す。

生徒会企画となった途端、会場の盛り上がりはいつも以上に盛り上がった。

『なんと! 今年から生徒会、いわばカルテットスターに何をしてほしいかの投票制になりました! もちろんっ、みんなかいたよね!? その結果、なんとあの4人が! コスプレして登場しちゃいます!』

なんだか、アイドルのライブを見ている気分だな。

それくらい皆が人気なんだろうけど。

コスプレか。することは知ってたけど、みんな何の格好をするんだろう……。

『では行ってみよー! まずは! 女子を落とした回数は数知れず! メンバー1のモテモテ男! 四宮牙狼さん!』

そういうと同時にスポットライトが真ん中に当たる。

そこにいたのは、警察官の格好をした牙狼さんがいた。

彼がウインクをして見せると、たちまち観客がわく。

牙狼さんは相変わらずと言っていいほど通るところの女子に手を振りながら、舞台へと歩いていく。

「ど~も~みんなが大好きっ、四宮牙狼だよん♪ 君の心をノックアウト、しちゃ~うぞっ♪」

ばんと銃を撃つようなしぐさをしながら、満面の笑みを浮かべる。

なんとも楽しそうに、舞台上で手を振っている。

やっぱりかっこいいだけあって、警官服似合うなあ。

『続いて! 優しい笑みでみんなを包んでくれる! この学校で一番の天才! 夜刀竜駕君!』

スポットライトが、また別の場所を照らす。

そこには竜駕君がかっこいい白衣を着て、立っていた。

まるで、本物のお医者さんのように。

「具合、悪くない? 君の病気を、僕が直してあげるよ?」

たちまち黄色い歓声が沸くのを、竜駕君はまたにっこりと笑って見せる。

相変わらず竜駕君の笑みはきれいで、思わず見とれてしまった。

それにしても竜駕君、白衣似合うなあ。

雰囲気にぴったりと言うか、なんというか……

『続いて行ってみよー! かわいい顔にはご用心! カルテットスターのマスコット、菱田希君!』

また別の場所にスポットライトが照らされる。

その先に、希君が立っていた。

なんと彼は猫の顔と耳がのっているパーカーを着ていて、おしりにはしっぽまでついていた。

それはそれはもう、本物の動物みたいで……

「にゃんっ」

ぴょんとはね、猫のような動作を取る希君にボルテージが一気にマックスになった。

なんていうかその、あれだ。

すごくかわいい! さすが希君!

「彩月ったら、ステージに釘付けですわね」

「だ、だってあまりにもすごすぎて……」

「当然です。私が用意した衣装なのですから」

「ええ? そうなの?」

「たくさんあったのでくじ引き方式で選んでもらったんです。次が一番すごいと思われますよ?」

えっと、まだ出てきていないのは雪風君だよね。

一体何の格好をしたんだろう……

『最後はやっぱりこの方! かっこかわいいルックスで、今回はまさかのあれに挑戦! 黒井雪風君!』

そういってスポットライトがあてられたその瞬間―

「えっ……雪風、君!?」

そこにいたのは雪風君とは思えないほどの、美女がいた。

黒髪のロングヘアを、二つに縛っている。

頭にはカチューシャとリボン、着ている服はメイド服で……

「あ、あんたたちっ」

驚いている私達に、雪風君はびしっと指さしてー

「あ、あんまりじろじろ見ないでよねっ!!」

図太い歓声と、黄色い歓声が一気に沸く。

雪風君の顔は、タコのようにまっかっかだった。

「あはっ、ユッキーまじうける!」

「すごく似合ってるよ? 女の子みたいで」

「かわいいですね、ユキ」

「あからさまに笑いこらえてんじゃねぇよ、お前ら!」

4人がステージ上でわいわい楽しそうに笑っている。

初めての文化祭、初めての生徒会企画。

色々な意味で、忘れられないものになりました!


(続く・・・・)

話中に披露しているコスプレは、私個人が似合いそうと思って着させてみました。

次回から一人一人に焦点を当てた、きゅんきゅん連続の展開となりますのでよろしくお願いします!

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