想いを一つに、文化祭への猛特訓 前編
お待たせしました! 本編再開です!
秋と言えば文化祭、ということで文化祭のお話になります!
ラブあり、コメディありとなってますので、ちょっとでも四人にときめいてくれたら
嬉しいです♪
「ってことでぇ、私達一組の出し物が決まりましたぁ。全員でダンスってことで! 曲は後日発表します! 以上、終わり!」
文化祭実行委員が、黒板に書いたものに丸を付ける。
その様子を見ながら、私はため息をつくことしかできなかった。
夏休みが明けてからと言うもの、相座高校はすっかり文化祭一色に染まっている。
多数決と言う形で出し物を決めていこうとなったのだが……まさかのダンスに決まってお先真っ暗ってところです。
どうしよう。私、ダンスなんてやったことない!
せめて劇の裏方とか、そっちの方がよかったなあ……
大丈夫かな、私にできるかな……
うう……練習が大変そう……
「ダンスとは随分難しいものに決まっちゃったね、僕達」
いつの間にいたのか、隣には竜駕君が苦笑いを浮かべていた。
「竜駕君はダンスとか得意ですか?」
「ん~……あんまりなあ……そういうのは牙狼専門だから」
確かに牙狼さんは身軽そうだし、そういうのかっこよくこなしちゃうんだろうな。
「みんなの出し物も気になるし、生徒会室に向かおうか」
「あ、はい。そういえば、生徒会も何か出し物をするんですよね」
生徒会室に向かいながら私はずっと気になっていたことを、彼に聞く。
竜駕君はいつもの笑みを向けながら、私に説明してくれた。
「そうだよ。毎年恒例でやってるんだけど、なぜか一番盛り上がるんだよね」
「当たり前ですよ。生徒会とはいえ、カルテットスターの皆さんでやるんですし」
「あはは、それもそうか。牙狼曰く今年はさいっこうのステージにするって言ってたから、ちょと覚悟決めておいた方がいいかもよ?」
覚悟って何だろう。
それについても聞きたかったが、あっという間に生徒会室にたどり着いたせいで何も聞けなかった。
生徒会企画って、何をするんだろう。
ただでさえダンスで手一杯な私が、生徒会のお手伝いができるかな~
「お疲れさま~みんな、いる~?」
「ロンちゃああああああああああああん!!!!!」
竜駕君がドアを開けた、その瞬間だった。
ものすごいスピードで、牙狼さんが彼にしがみついたのは。
「ちょっ、どうしたの牙狼。驚かせないでよ」
「だって……だってみんなが! みんながさあ!」
「何かあった? とりあえずいったん落ちつこ、ね?」
いきなりのことで驚きもあるだろうに、竜駕君の声色はいつものように優しい。
優しく頭をなでながら、牙狼さんを落ち着かせようとしているのが分かる。
牙狼さんははあっと深呼吸しながら私に気が付くと、竜駕君から離れた。
「あれ、メイちゃんも一緒だったんだ。ちょっと恥ずかしいとこ見せちったなあ。ありがとね、ロン」
「大丈夫? クラスでなんかあったの?」
「それがさあ聞いてよ! オレなんにもいってないのに主役にされちってさあ! 女子が争奪戦始めるわ、先生は途中放棄するわでもう大変だったんだよ!」
すっかりいつもの調子に戻った牙狼さんの悩みは、文化祭のことだった。
主役っていうところを聞くと、劇か何かするのかな。
そりゃカルテットスターが主役なら、ヒロインをやりたくなるのは当然だよね。
「三年生は劇だっけ。主役やるんだね、牙狼」
「んー勢いに身を任せたってやつ? オレ文化祭とかそういうのあんまり好きじゃないんだよねえ。ダンスとかもうちょっと体を動かすことしたかったよぉ」
さすが体育会系、と言うべきか。
正直変わってほしいなと思っちゃったな、うらやましいくらい。
「お疲れー……って、なんだよ。もう三人来てたのか」
「お待たせしましたっ。菱田希、参上っなのです」
そこにやってきたのは、同じ一年の希君と雪風君だった。
彼らが来ると同時に、さっきの元気のなさはどこへいったのか、牙狼さんが相変わらずの調子で口を開いた。
「おっつ~ユッキー、ノンちゃん! 文化祭で何するか決めたぁ~?」
「まあ、一応な」
「一年生は展示なので、ことのほか早く決まりました」
そういう二人の顔は対照的で、どんなことをするのか全く分からない。
希君はなんだか目を輝かせているようにも見えるし、雪風君はめんどくさそうにため息までついている。
「そーいや行くとこ行くとこ女子に聞かれたが,今年の生徒会企画って何すんだよ」
「たくさんの方が、目をキラキラさせていました」
「そりゃうちの文化祭の目玉って言われるくらいだしねぇ。今年から投票制になったから、オレもどんなことするか楽しみなんだ~♪」
「投票制?」
その言葉が気になり、思わず繰り返してしまう。
私に対して竜駕君は優しく、丁寧に教えてくれた。
「クラス全体でカルテットスターに何をしてほしいか、生徒に希望を取ることにしてね。彩月ちゃんは書かなかったの?」
そういえばそんなことあったな。
私はかなり4人といるのが多いしあんまり変なこと書いたら、迷惑かけるかもと思ってやめたんだっけ。
ファンクラブの子が、あれかこうこれ書こうとかで騒いでいたっけ。
「すみません、お待たせしました。HRがことのほか長引いてしまって」
ちょうどその時だった。風紀委員の剣城ちゃんが顔を出した。
彼女の手には、ある紙切れが何枚か握られている。
「投票の結果、3つほど候補に絞られました。皆さんでお好きなのをお選びください」
「よっしゃ、待ってました! みしてみして~」
そういって、牙狼さんと竜駕君が一枚ずつ同時に取る。
添えを横から、年下の二人がのぞき込んでいる。
どんなことが書いてあるのかな。
教えてくれることを待っていると、だんだんと4人の顔色が曇っていった。
「なんていうか……女の子ってすごいこと考えるんだね……」
「……どう考えてもおかしいだろ……頭ん中どうなってんだ……」
「楽しそうですが、大変そうです」
「ん~なんかいまいちしっくりこないなあ」
4人の反応からして、何が書いてあったのかすごく気になるのは私だけなのだろうか。
しばらくじいっと待っていると、牙狼さんがよしっと言って立ち上がった。
「この際だし、一つ一つやっていってちゃおう! オレのはちなみに~歌を歌ってほしい。ギターとか弾いてる4人が見てみたい!!」
「却下」
「難しいかな~」
「僕弾けないです」
ギターってことは、軽音かな。
確かにかっこいいし、4人組だからちょうどいいかもな。
でも楽器がひけないと、そういうのってかなり難しそうだなあ……
「え~いけると思わな~い? ベースがオレで、ドラムがユッキー。キーボードがノンちゃんで、そしてオレがギターボーカル!」
「楽器なんて弾いたことないでしょ? それに今からじゃとても無理だよ」
「パソコンをカタカタ鳴らすだけで音楽ができるんですか? 初めて知りました」
「希、そっちのキーボードじゃねぇから。大体牙狼がボーカルしたら、体育館つぶれる」
「ひっどい!!!!」
あまりのことに何も言えなくなる。
私はただ、苦笑いを浮かべるしかなかった。
「じゃあロンのはなんて書いてあったの? いけそうなやつ?」
「うーん……あんまりいいとはいいがたいというか……これにはホストって書いてあるんだよね~」
ホスト????
聞いたことはあるけど、どんな人たちのことか全然わからないな。
どんな人のことを言うんだろう。
「なるほど、理解しました」
すると何を思ったのか、希君がすくっと立ち上がって私に歩いてきて……
「朝までに何回キスしてほしいか、決めといてください。湊さんの唇は僕だけのもの、ですよ?」
!!!???
「……こういうことですか?」
「ずるい! ずるいよ、ノンちゃん! 手早すぎ!」
「ノンちゃん、すごいね~」
「えっへんなのです」
「どっからその知識手に入れたんだよ……」
「どうだった? 彩月ちゃん」
「い、いやあなんといいますか、そのぉ……たぶん多くの人が死ん……気絶しちゃうかと」
まだ心臓がどきどきしている。
私みたいなファンにはかなっりきついと思うな、これ。
ホストってこんなんなの……?
「まったく、あなた方は! もう少し真剣に取り組んでください!」
「そんなこと言っても女の子たちがさあ」
「誰が文句言おうと、これで候補は残り一つです! 時間もないんですから、これで決定します! よろしいですね!?」
「いいけど、内容何?」
「残りの一枚の内容は……ずばりコスプレです!」
「ええええええええええええええ!?」
4人の叫びが空しく響き渡る。
なにやら文化祭、大変なことが起こりそうです!
(続く・・・)