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カルテットスターと過ごす、とある夏の日 後編

とある成り行きで、カルテットスターと海に行くことに!!!


イケメンと過ごす、爽やかな夏はいかがですか?

「海パンよし! ゴーグルよし! 着替えよし! よし、ばっちり!」

「牙狼、タオル忘れてるよ。ああほら、水泳帽も入れとかないと」

「おいっ希! 下着を俺のバックに一緒に入れるな! わかんなくなるだろーが!」

「海楽しみですね、ユキ」

「きけよっ!」

4人それぞれがあわただしく話している。

それをみながら、私は思わず笑みをこぼした。

海に行くことになった私は、あれから実家にもどり水着などの水泳道具を取りに戻った。

例のごとく、妹達には悪ノリでからまれ、理由を作るのに必死だったけど。

戻ってきて数分経っているが、彼らは相変わらずの様子であまり準備が進んでいないようにも見えた。

なんだかはしゃいでいる小さな子供のようにも見えて、見ていてほほえましくなってくる。

本当に楽しみなんだなあ、みんな。

「メイちゃん、おまた~♪ ごめんね~みんな準備が遅くってさあ」

「お前のせいだろうが! 人の水着をタンスに隠し持ちやがって!」

「ええ~? なんのこと~? 覚えてないなあ」

「まあまあ二人とも落ち着いて」

「早くしないと、海が逃げちゃいます」

「よし。じゃあ彩月ちゃん、今からマジックのようなことをするけど、僕達だけの秘密だよ?」

竜駕君が人差し指を立てながら、口にもっていく。

なんだかいつもより意地悪そうな笑みを浮かべたので、何をするかすごい気になった。

竜駕君は鍵穴に自分の鍵を差し込んだかと思うと、ドアのぶの上にあるダイヤルを右に回した。

ダイヤルの中にある黒い針が、白から青に変わる。

彼がドアを開けた瞬間、視界が一気に開けた。

開けた先に広がっていたのは、広い広い砂浜と真っ青な海だった。

どこにでもありそうな、きれいな海だった。

でもなんでドアを開けたら海に? いったいどういう仕組みに?

「ふっふっふ~びっくりしたでしょ~?」

「こ、これはいったい?」

「あの部屋と同じ理念だよ♪」

あの部屋?

「僕達が住んでいるあの部屋が異空間につながっているのはご存知ですよね。それと同じで、ダイヤルを回すと異空間に作られたぷらいべーとしーにつながっているんです」

なんか、すごいな。色々と。

部屋もダイヤルも、全部美佳さんがやったのかな。

異空間にあるとは思えないほど、本物とそっくりだなあ。

「すごいんですね。本当の海みたい」

「まあ海はあんまかわんねえよな。しいて言えば、そこら辺にいる生き物くらいか」

「生き物もいるんですか?」

「ああ、あそこに」

雪風君が指をさす方向を、がんばって目を凝らす。

そこには小さなカニがいた。

一見普通のカニかなと思ったが、そのカニは金色で……って……

「金色!? そんなのいるんですか!?」

「現実にはいねぇよ。美佳の奴が遊び心で人間界にいるのと似せて作ったんだよ」

「ある意味すごいですね……珍しいってレベルじゃないです……」

金色のカニを目で追いながら、少しだけ笑ってしまう。

隣にいた雪風君が何かを言いかけたその時だった。

「つめてっ!!」

「よっしゃ、命中!」

冷たい水が私達二人にかかってきた。

「命中じゃねぇよ、何すんだ牙狼!」

「ユッキーばっかりメイちゃんと一緒でずるい! 抜け駆けしちゃう子にはオレからお仕置きだからね!」

「てめぇ……」

「なんなら今年もやっちゃう? 毎年恒例の遠泳勝負♪」

「望むところだ、この野郎!」

着ていた上着を脱ぎ捨て、雪風君は勢いよく海へと飛び込んでいく。

二人はそう言って、ものすごいスピードで海の彼方へと消えてしまった。

「まったく、二人は相変わらずなんだから」

「竜駕、僕も泳いできていていいですか?」

「いいよ。危ないから、あまり遠くには行かないでね」

「了解なのです」

希君はそう言って少し大きな浮き輪を体にはめて、「とうっ」とかと言いながら海へダイブする。

三人が楽しそうに海で泳いでいる。

私も負けてられない、と思わないのは自分が泳ぎがあんまり得意ではないからだ。

というか、体育と言う教科自体があまり好きではない。

海なんて来たの小学生以来だしなあ。泳ぎ慣れてないからどうすればいいかわからないし……

「彩月ちゃんは泳がなくていいの?」

私がずっと座ってみているせいか、竜駕君がそっと近くにやってきた。

彼は優しく微笑むと、私に飲み物を差し出してくれた。

「あ、えっと……あんまり海で泳いだことなくて……」

「そうなんだ。じゃあ僕でよければ、教えてあげようか?」

「えっ、そんな、悪いですよ」

「大丈夫だよ。僕は水をつかさどってる竜族の末裔だから、水の中でも息ができるんだ。だから、少しは役に立てると思うよ」

竜駕君はそういって、私の方に手を差し伸ばす。

戸惑いながらも、私はその手をゆっくりつかんだ。

「水の中に顔付けるのとか、平気?」

「だ、大丈夫、です」

「僕が合図するよ。顔をつけるところから始めようか」

優しく、丁寧に教える竜駕君の手はすごく心強い。

勉強を教えて食えた時のようで、なんだか恥ずかしくもなってくる。

竜駕君の手。大きくてあったかくて、男の子の手って感じがする。

私は幾度となく彼の手に助けられてきた。

いつも優しい、澄んだほほえみでー

「竜駕、ずるいです。ぬけがけ禁止なのです」

すると私達の間に、希君が割って入ってくる。

彼は浮き輪を手にしながら、ぷかぷかと浮いていた。

その様子はまるで、小さな子供のようにも見えた。

「違うよ、ノンちゃん。僕はただ、泳ぎは教えてあげようとしただけだよ」

「問答無用です。泳ぎだったら、僕だって教えられます」

「ノンちゃんは泳げないでしょ?」

「う、浮き輪の正しい浮き方を伝授できます」

希君がひしっと浮き輪に力を込める。

なんだかかわいらしくて、思わず笑みがこぼれてしまう。

「そうだぞ~ロン! 一人だけメイちゃんとイチャイチャするなんてずるい! オレだって泳ぎくらい教えられるもん!」

「牙狼が泳ぎを?」

「……教えられるんですか?」

「ノンちゃんひっどい!! オレだってできるもん! 泳ぐのに大切なのは感覚! 水を肌で感じることが大事なんだよ!」

自信満々に言う牙狼さんだったが、お世辞にもあんまり教え方がうまいとは思えなかった。

まあ、牙狼さんらしいっていえばらしいけど。

「お前の説明じゃ何時間あっても理解できねぇだろーが。おとなしくあきらめろ」

「じゃあユッキーはメイちゃんに教えられるの~?」

「はあ!? なんでこの俺がこんな奴に泳ぎ教えなきゃなんねえんだよ!!」

ほんの少しだけ、雪風君の顔が赤いのは気のせいだろうか。

なんだかいつの間にか、話が私を教えるのは誰にするかになっている気がする。

このままじゃだめだと思い、思い切って声をかけた。

「あ、あの、けんかはよくないです! 私はみなさんと泳げるだけでうれしいんです」

「彩月ちゃん……」

「泳ぐのもいいですが、皆さんの色々なお話が聞きたいです。毎年来てるんですよね、海」

私がそういうと、みんなは顔を見合わせる。

お互い微笑み合うと、竜駕君は私の手を握りながら陸へと上げてくれた。

「ここにきたのはちょうど、4人そろったときかな。親睦を深めるためにって、美佳ちゃんが作ってくれたんだよ」

「そうだったんですか」

「牙狼の奴が海が見たいだの、人間が住んでいるところが見たいだのわめいてたからな。ほんっと、うるさかった」

「ひっどいな~その言い方。ユッキーだって初めて来たときはすごくはしゃいでたじゃあん」

「なっ! そんなことしてねぇよ!」

「みんなでせーので海に飛び込んだ時も、おぼれかけてました」

「それはお前も人に言えないだろうが!」

小さい頃の4人は、どんなんだったんだろう。

今とあんまり変わらないのかな。

異種族だから年を取るのも少し特別だったりするのかな。

「あの、みなさん人間じゃないんですよね。年齢とかって私達と同じなんですか?」

「ううん、違うよ。人間年齢はそうだけど、実年齢はバラバラ。僕は人間と一緒だけど牙狼なんて、三十代なんだよ?」

「ええっ!?」

思わず驚きの声が大きく出てしまい、ちらりと牙狼さんを見る。

彼はえっへんと胸を張りながら、ウインクをして見せた。

「えっへへ~見えないでしょ~? オレってこう見えてみんなより結構な年上なんだぞ~?」

「威張るとこじゃない気がします」

「三十代の大人が高校生のテスト赤点取るのもどうかと思うけどな」

「ちなみに、ノンちゃんは十歳でユッキーが十四歳だよ☆」

ま、まさかの高校生でもない……

確かに希君は体が小さいから、納得がいくような気もするけど……

なんか、すごいな。

普通の高校生の私からじゃ、とても想像がつかない。

色々大変なんだろうな、みんな。

「じゃ、じゃあこの中で一番泳ぎが得意な人は誰ですか?」

「俺」

「僕じゃないかな」

「僕です」

「もちろんオレ♪」

見事にみんなの意見がバラバラで、思わすくすりと笑ってしまう。

仲がいいのに、こういうところは対抗心むき出しなんだな。

やっぱりちゃんとした、普通の男の子なんだよね。

そう思っていた、その時だった。

牙狼さんの携帯から、軽快な着信音が聞こえた。

ちょっと待ってね~などと言いながら、着信の相手を確認もせず画面をスライドさせる。

「もしもー」

『あなたたち! いったいなにをしていらっしゃるんですか!!!!!!!』

電話越しからでも聞こえる、大きな怒声。

他者を圧倒させるような凛とした声からおそらく、剣城ちゃんと言うことがうかがえる。

「ちょっとどうしたのつるちゃん。声大きすぎて何事かと思ったよ」

『それはこっちのセリフです! 今日は文化祭のことについて話すと前々から言っていたではありませんか!!』

「あれ? そうだっけ、覚えてないや」

『とにかく! 明日絶対に学校に来てくださいね! わかりましたか!?』

「あーはいはい、分かったから」

そういいながら、牙狼さんが私の方にウインクしてみせる。

皆は少し残念そうな顔をしながらも、帰ろうかと顔を見合わす。

剣城ちゃんには悪いことをしたなと思ったけど、私にとって忘れられない夏休みの思い出になりました。


話中にでてくる「ドアのぶの上にあるダイヤル」というのは、ある作品を参考に考えさせていただきました。詳しくは作った美佳ちゃんに聞いてください笑


次回から本編の季節関係のため、バラエティ要素満載のものを投稿しようかなと思っておりますので、お楽しみに。


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