カルテットスターと過ごす、とある夏の日 前編
ここから、第二章! といってもカルテットスターと彩月ちゃんが夏を満喫したり、あるイベントであんなことやこんなことをしたり‥‥遊び中心に盛り上がってるだけだったりします笑
まだまだ暑い夏が続く中! 彼らの夏休みはいかほどに!
「あっぢ~~~~~ロン~~~アイスちょ~だ~い」
牙狼さんがうちわであおぎながら、だるそうに声をあげる。
その様子を見ながら私―湊彩月は苦笑いを浮かべた。
相座高校に転入してきて早二か月半がたった。
季節はすっかり本格的な夏となり、明日からいよいよ夏休みです。
相座高校は普通の高校と違い、少し夏休みが長い。
その代わり宿題が山のように出るため、意味ないんだけど。
「さっきも食べたでしょ? アイスは一日ひとつまで。そんなに食べたらおなか壊しちゃうし、次の日の分がなくなっちゃうでしょ?」
「え~~~~~~アイス~~~~」
「仕方ないなあ。じゃあ僕のジュース、半分あげるから」
「マジッ!? ロンありがと~~!」
にっこりと笑顔を浮かべながら、竜駕さんがジュースを渡す。
それを嬉しそうに牙狼さんは一気飲みし、「ぷはー」っと声をあげた。
「それにしてもユッキー、ま~だ~? うちわだけじゃもたないんだけどぉ」
「うるっせぇな! もとはといえばお前がいじくるのが原因だろうが!!」
「暑いのはみんな一緒です。我慢してください」
右手にねじ回し、左手にねじなどの工具を持った雪風君が思うがままに怒りをぶつける。
それを隣で、じいっとみつめている希君がいる。
ここーカルテットスターだけの専用部屋では、いつも通りの日々を過ごしていた。
先日牙狼さんがクーラーをいじくっていたのが原因で破損してしまい、それを雪風君が直しているという状況だ。
「ったく、こんのくっそあっつい時期にクーラー壊しやがって。これで何回目だよ!」
「え? オレ、そんなに壊してる?」
「まあ……結構な頻度でね……」
「毎年一回は必ず壊しているかと思います」
「そんなに!?」
「でも回数的には竜駕も言えない、です」
えっと声が漏れる。
私が驚いたように竜駕君の方を見ると、彼は苦笑いを浮かべた。
「昔のやり方に慣れちゃったせいか、あまり機械になれなくてね。僕も牙狼のこと言えないんだよね、あんまり」
「そうなんですね……」
「意外っしょ? ロンって意外と弱いとこあったりするよねえ」
「お互いさま、なのです」
「だからって壊しては俺に直させるの、どうにかしろよ……」
雪風君が呆れながら言うのも、牙狼さんは笑ってごまかす。
いつもの何気ない、四人の風景。
ここに来てからずいぶん経ったけど、本当色々あったなあ。
皆が人間じゃないって知ったときは、びっくりしたけど。
一つ一つの出来事が懐かしいな。
「よし! ここはユッキーのためにも、メイちゃんが夏バテしないためにも! 奥の手を使おう!」
「奥の手、ですか?」
「どう考えても、俺のためじゃねぇよな?」
「え~ひどいなあ、そんなこと言わないでよぉ。クーラーないと暑くて体壊しちゃうかもじゃん? だ・か・ら、海行こうよ! 海!」
牙狼さんがいつにもまして、きらきら輝いた笑顔を浮かべる。
彼の笑顔の誘いを受けたからか、希君がバッと体を乗り出した。
「海って、あの海ですか?」
「そう! オレ達のプライベートシー!!」
「行きたいですっ、海っ。行きましょう、みんなでっ」
希君が竜駕君と雪風君の周りを、ピョンピョン跳ね回る。
その様子が何だかかわいらしくて、つい目で追ってしまった。
「ノンちゃんは本当にあそこが好きだね。確か去年はいかなかったんだっけ」
「ああ……俺と希の受験勉強があるからって禁止してたんだよな」
「そーそー! ロンが夏休みは受験勉強だってつって、オレまで外出禁止くらってさあ」
「お前は禁止中も所かまわず遊んでただろうが!」
「あ、あのぉ、ぷらいべーとしーって?」
ずっと気になっていたことをおずおずと聞いてみる。
私に気が付くと、竜駕さんがいつもの優しげな笑みを浮かべた。
「ごめんね彩月ちゃん、説明してなかったね。僕達はね、毎年夏休みになったら決まって海に遊びに行くんだ」
「海に、ですか?」
「そ♪ でもねぇ、オレ達、カルテットスターな上に見た目が目立つから、かなあり人が増えちゃうわけ。そこで、昔美佳ちゃんが用意してくれたのが、オレ達四人だけのプライベートシーなんだ♪」
彼らの口から美佳と言う言葉を、いったい何回聞いただろう。
彼女のことは名前と、世話してくれたという情報だけでどんな人かは全く分からない。
今わかっているのは私をここに誘った、あの女の子に似ているということ。
美佳さんって何者なんだろう。そんなこともできるなんて。
「海行くのはいいけど、今から行くのはさすがにムズイだろ。湊とかどうすんだよ」
「大丈夫! メイちゃんはかわいいから、どんな水着でも似合う!!」
「そういうことじゃねぇよ!!」
「確かに男4人の中に、女の子一人で行くのって勇気いるよね……彩月ちゃん、大丈夫そう?」
えっと、どうしよう。
ここははいっていいたいんだけど、私みたいな人が彼らの中にお邪魔しちゃっていいのかと言うのもある。
スタイルもよくないから、水着なんてもってのほかだ。
それに海まで一緒に行けるなんて、ファンとしてはかなりレベルが……
「湊さん、海行きませんか?」
「希、君?」
「湊さんと一緒がいいです。湊さんが一緒じゃなきゃ嫌です。ダメですか?」
かわいらしい瞳が、私の方に向けられる。
ここまで言われると、なんだか断りづらい。
どうしてここまで、希君が私と一緒にいたがるのかはわからないけど。
「分かりました。私でよければ、一緒に行かせてください」
「いいの!? よっしゃあああああああああ!」
「うるせー牙狼! 言っとくけど、余計なことしたらただじゃおかねぇからな!」
「みんなで海っ、海っ、海っ」
「じゃあ準備をしようか。彩月ちゃんも手伝って」
心なしか皆の顔がうれしそうにも見える。
やっぱり行くって言ってよかったな。
そう思いながら、準備のために私は立ち上がった。
(続く・・・)