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ヘル・オンライン 特別編  作者: 遠
愛剣との出会い
6/6

「愛剣との出会い」

放置されていたのを思い出し続きを書き足して一話にしました。 なんと書いてたのが5年前という遠い昔。 思いついたらなにか書くかも。

 ユウコは艶消しの黒い両手剣を正眼に構え一度深呼吸、目を閉じ開いて切れ長の目を真っ直ぐ相対するコウジさんに向ける。対するコウジさんは心底嬉しそうに口元を緩ませながらも目は笑っていない、おそらくイベントだからと気を抜くつもりはないのだろう。あの人の性格上そういう手抜きは絶対にしない質だ。

『そーれでは皆さんお待ちかねぇ! ギルド対抗レア武器争奪戦決勝!! 『エンカウント』 リーダーユウコ対 『ソル』 リーダー コウジ・・・・・・始めっ! 』

実況席に座るリリのアナウンスと同時に銅鑼が鳴り響くや否やユウコとコウジさんは一気に間合いを詰めてお互いの愛剣を打ち合わせる。甲高い金属音が響くと共に軽い衝撃波が二人の足元の砂利を吹き飛ばす。

 二秒ほど睨み合ったところで間合いを取り直しユウコが両手剣スキル『アクセル』を発動。対するコウジさんはスキルは使わずに迎え撃つ、青白いエフェクト光によって巨大な一本の槍のように見えるユウコの突撃をコウジさんは寸前で躱しつつ剣を右手だけで持ち、空いた左手で目の前を通過していくユウコの顎を思い切り打ち上げた。

「ぐぅっ!?」

たまらず悲鳴を上げながら後方へ仰向けの態勢で吹き飛ぶユウコ。その隙を逃さずコウジさんは追撃、ここでスキルを立ち上げる、使ったのは超至近距離でしか使いどころのない『スラッシュ』 それを仰向けのユウコへ跳躍する最中に発動させ空色の両手剣を振り下ろすもユウコは起き上がらずにそのまま横に転がって回避、空振りのコウジさんの一撃が地面に叩き付けられるとまるで砲弾でも落ちたかのような衝撃音と共に地面が砕け小さい破片が客席にまで吹っ飛んできた。

 スキル使用直後の硬直を狙って今度はユウコがスキルを使わずにコウジさんへ斬りかかった。上段からの振り下ろし、勢いをそのままに体を捻って回転し遠心力を乗せた中段と続きそのまま左足で蹴りつける・・・・・・が、最後の蹴りは余計だった。コウジさんは左手でユウコの左足の足首を取り力任せに引き寄せ頭突きを叩き込み無造作に放り投げた。

 空中で体勢を立て直し額を押させながら着地するユウコ、対するコウジさんは試合開始直後の嬉しそうなニヤケ顔のまま首を鳴らして剣を構え直す。

「楽しいですね、ユウコさん。久し振りの勝負は」

ここで口を開くコウジさん、表情だけでなく声も凄く弾んでいる。

「ててて・・・・・・、ええそうね。しっかしホント女の子のおでこに頭突きとかさすがにどうかと思うんだけどなぁ・・・・・・」

ユウコも額を擦りつつも笑顔で返す。盛り上がる観客、まぁそりゃこんだけハイレベルな対人戦を間近で見られる上に片方は身内贔屓に見ても相当な美少女がそれをやっているのだから。

 しかし、それはあくまで外見の話だ。

「ユウコのやつ、確かに楽しんではいるだろうが内心どうにかコウジさんに勝ってレア武器取る事しか考えてねえな」

 あの収集マニアがレア武器取れず勝負にも勝てずとあっちゃ後でどんな八つ当たりされるか分かったもんじゃねえ、すいませんがコウジさん。俺ユウコの応援します

ちょっとしたやりとりでお互いの今回の意気込みを感じ取れたのか、どちらともなく笑顔が消え、ボス攻略戦の時などに見せる真剣そのものと言った表情を浮かべ再び構えを取る両者。

 数秒、観客すら身動きをするのを躊躇われるほどの静寂。 それを破ったのはユウコだった。

「はぁぁぁっ!」

 勢いよく剣を最上段から振り下ろしコウジさんに叩き込むが、当然のようにコウジさんはそれを真正面から受け止め、剣の向きを変え力の流れをコウジさんから見て左に流し剣をユウコに向かって突く位置へユウコが流れていくかに思われたが、それを予期していたのかユウコから見て右に誘導され崩れた体勢へ流れる力すらも利用し右足を軸に左足で勢いよくコウジさんの胴へ蹴りを叩き込んだ。

「ぐうっ!?」

 筋力アビリティをガン上げの脳筋パラメータに仕上がっているユウコの蹴りはただの現役女子高生が見様見真似で放ったにしては中々の打撃恩を轟かせつつコウジさんの突きの体制を崩すには十分な威力を発揮していた。

 そこへ間髪入れずに左足を振り切りその勢いを利用し身体全体を一つの軸に見立て一回転し一撃目で流された剣を勢いのままに身体を崩したままのコウジさんへ叩き込んだ。

 そのあまりの威力にコウジさんは軽く数メートル吹っ飛び砂埃を上げながら数回転がって止まった。

「まさか、あんな体勢からでも攻撃を仕掛けてくるとは・・・・・・さすがユウコさんですね」

 コウジさんは剣が思いきりヒットした衝撃が酷かったのか胴を抑えながらゆっくりと立ち上がってユウコに向かって苦笑いを浮かべる。

「いやあだって、あのくらいの虚をついていかないと流石にコウジさんにダメージ入れられないと思って」

 対するユウコは笑いながら答えるが、そのままコウジさんに剣を向けたまま接近する。 どうやらこのままラッシュをかけてコウジさんを倒す算段らしい。

「はっは。 これだからユウコさんは面白いっ!」

 コウジさんは豪快に笑うと剣を思いきり地面に叩きつけて石畳の床を破壊し破片と砂埃がコウジさんを包んでユウコからは完全に見えなくなる。 が、ユウコは減速する素振りすら見せずに砂煙の中へ突入したが先に砂煙から出てきたのはユウコだった。

 「っ!」

 短い悲鳴を上げながらユウコが肩を庇うようにバックステップで再び間合いを取った。

 砂煙が晴れるとコウジさんがいつもの両手剣は左手に持ち右手に小さなナイフを構えて立っている姿が見えてきた。

 両手剣スキルを極めているコウジさんだが、様々な事態に対応できるように小回りの利く武器も使えるように持ち歩いているのは知っていたがここで使ってくるとはな。

 だが、おそらくだが基本的な立ち回りは出来てもスキルを発動させるほどの熟練度はないのだろうかコウジさんは再びナイフを仕舞い両手剣を構える。

「今の奇襲を勘で躱すとは・・・・・・」

「まさかのナイフで仕留めに来るとは思いませんでしたよ」

 肩から手を離し剣を両手で持ち構えるユウコ。

「万策尽きたのでそろそろ決めますね」

 と、コウジさんは静かに言い今までで一番の真剣な顔になった。

 それに触発されてユウコも同じく感情を削ぎ落したような顔になりコウジさんに向けて剣を構え直した。先ほどから、ハイレベルすぎる戦いに観客のみんなは無言、拍手もなにもなく実況者もただただ目の前のトッププレイヤーのバトルに見入ってる。 勿論俺もだ。

 それが今終わろうとしているのを惜しいと思うのは俺だけだろうか、自分には出来そうにもない動き、一瞬で攻防が入れ替わるハイレベルすぎる駆け引き。 それはまるで最高に面白い映画に出会ってもっと見ていたいと思っていてもエンディングになりスタッフロールが流れだしてしまうのを残念に思うようなそんな気持ちだった。


 張り詰めた空気、互いを好敵手と認める二人の剣士がどちらともなく駆け出し間合いをゼロへ。

 ユウコは剣を前方に突き出し上手く狙えば数人巻き込んで大ダメージを与える両手剣上位スキル『フューリー』を発動させ対するコウジさんは大上段から接近してきた相手を切り伏せる両手剣上位スキル『チョッパー』を発動させユウコを迎え撃つつもりだ。

 やがて彼我の距離はゼロになりお互いのスキルがヒットし爆発染みたエフェクトを撒き散らしつつHPが今まで少しずつ減って来ていたものが目に見えて減少していき残ったのは・・・・・・。

『勝者ぁぁユウウウコォ!!』

 実況の声に痛みで仰向けで唸っていたユウコだったが勢いよく飛び起きると自分を喜びを爆発させ飛び跳ねる。その傍ではコウジさんが同じように仰向けで寝転がったまま拍手を送っていた。

 その後、観客から盛大に拍手をもらいながら優勝商品である武骨なデザインの両手剣を授与され、後にこれを馴染みのクラフト系の友人に頼んガンガン強化し続けて、このゲームがクリアされるまで苦楽を共にしユウコのトレードマークともいえる存在になるのだった。

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