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ヘル・オンライン 特別編  作者: 遠
星降る夜に編
5/6

「星降る夜に 5」

 ユウコの無茶苦茶な作戦は結局の所、これ以上持久戦に持ち込んでも回復アイテムの残量、長時間の戦闘での集中力の低下などの不安要素が多々あるということで過半数の票を集め実行に移される事になった。

「よーし、それじゃ打ち合わせ通り頼むわね。リリ、コツさんに他の打撃武器持ちの皆さん!」

屈伸しながらユウコは笑顔でリリたちに話し掛ける。

「ユウコちゃん、ホントにやるの? アタシたちは別に構わないけど実際に飛び込む担当の人たちはかなり危ないと思うんだけど・・・・・・」

「大丈夫、先陣切って私が飛び込んで大技叩き込むから」

「リリ、何言ってもこいつはもうやる気満々だよ。素直に諦めようぜ・・・・・・」

俺はリリに話し掛けながらやれやれとでも言うように手をひらひらさせる。

「ですよねー」

若干緊張していた場を和ませられたかは分からないがこのまま『星喰い』を放っておいてもせっかくの一年に一度のスペシャルクエストを無駄にすることになる。

「みんな、行くよ!」

全員が気持ちを新たに声を上げ『星喰い』へと駆け出す。


一旦離れてはいたがつかず離れずの距離を保っていてくれたロナードさんたちと交代して前線に戻りリリたちに目配せするとリリたちの元へ一気に走り寄ってタイミングを合わせる。

「走り高跳びな感じでいくといいんかな? まぁいいや行くよっ! リリ!」

「いってらートモっち!」

リリが振るったハンマーの面に丁度足を乗せ勢いのままに俺の体は天高く打ち上げられた眼下に広がる砂漠と『星喰い』の巨体。周りを見ると俺と同じように打ち上げられたユウコとコウジさん、他比較的軽装な前衛メンバーがいた。

「棘ミサイルに注意しつつこのまま突撃ぃぃぃ!!」

落下しながら声を張り上げユウコは両手剣スキル『アクセル』を立ち上げ一気に加速しながら『星喰い』の背中目掛けて迫る、他のみんなも各々スキルを立ち上げ落下速度を上げて突っ込んでいく。

「俺もやるからにはしっかりと決めてやる!」

俺も体術スキル『流星脚』を発動させて落下する、視界が狭まり目の前にどんどん『星喰い』の背中が近づく。

棘ミサイルがこちらに戦争映画とかに出てくる対空攻撃シーンみたいに飛んでくるが先頭のユウコのアクセルの余波で吹き飛ばされていき撃ち終わったばかりの無防備な甲殻の内側の柔らかそうな内側の肉へ俺たちは次々にスキルを叩き込んでいく。

「これでどうだああああ!」

ユウコが勝ち誇ったように剣を突き立てたまま腕を振りミサイルの射出口を塞ごうとしていた甲殻の付け根を切り飛ばした。

たまらず体を大きく仰け反らせ俺たちを振るい落とす『星喰い』だったがかなりのダメージが入ったようでHPバーが残り一本になっていた。もう一度打ち上げ攻撃を決められれば決着かと思われたその時だった。

「パターン変化注意、みんな盾持ちの後ろに後退して!」

ユウコの指示で俺たちは一度間合いを取る。

 様子を窺っていると『星喰い』の背面の甲殻が瘡蓋かさぶたが剝がれるようにボロボロと落ちていき俺たちが大ダメージを与えた柔らかい部位が丸見えになりそこから最初から生えていた尾よりは短いが尾と似たような鋭利な突起が付いている触覚のような物が左右合わせて6本飛び出した。

「おいおい、あんな数で壁続けたら盾の耐久値なんてあっという間に消し飛ぶぞ・・・・・・」

いつも冷静なロナードさんが呆然と目の前の光景を見て口を開く。

「ああ、あんなもんいつまでも受け続けられるわけがねえ・・・・・・」

新たな姿となった『星喰い』が睥睨すると標的を定めたようで手近な盾を構えていたプレイヤーへ襲い掛かる。

「う。うわぁ!」消耗していたそのプレイヤーを庇うようにリリが触覚を弾く。

「こうなったらもう一回飛んでもらって一気に片づけちゃおうよ! 速攻でね!」

側面から円卓のリーダーアーサーが触角を捌きながら

「ああそうだな、我々もその意見に賛成だ。ユウコさん、もう一度頼めるかい?」

一度目を閉じ深呼吸をするとユウコは

「うん、わかった。コウジさんちょっといいかな?」

コウジさんを呼び寄せ何事か話すと「おいおい、マジかよホントにするのか?」

と、コウジさんが珍しく渋い顔を浮かべるが対するユウコはいつもの笑顔で

「うん、お願いね! それじゃさっき跳んだ人たちはもう一度私と一緒に行きましょう!」

と答えて打撃プレイヤーたちの構える元へ駆けていく。

「どうなっても知らねえぞまったく」

コウジさんはなにやらボヤキながらユウコよりも若干先に跳んだ。

一体何を言われたのか気になったが時間が惜しい今はそんなこときにしてる場合じゃないと自分を叱咤して今回はコツさんのハンマー目掛けて跳ぶ。

 再び一瞬の空中浮遊、先に跳んだコウジさんが剣を構えているのが見えた。

「え? なんでそのスキルを!?」

驚いたのはコウジさんが発動させているのは下から上に切り上げるタイプの両手剣スキル『ヘブンズ』でそこへユウコが飛び込んでいく。

「ったくよ! 無茶ばっかするよなぁキミは!」

「だって色々試したくなるじゃない? こういうのはさ!」

お互い周りの風の音に負けじと声を張り上げながら一瞬の会話と交差のあとユウコはコウジさんのほんの少し上の位置に到達すると同時に足を空へ剣を水平にした状態で真下、つまり地面に向かって構えるそこへコウジさんが先ほど立ち上げておいたスキルをぶつける、その衝撃でユウコは更に高く跳んでいく。

「トモ君、よそ見してる場合じゃないぞ! 俺たちは俺たちでやることはきっちりやろう!」

「はい!」

一瞬目が点になっていた俺はコウジさんの声で我に返ると先ほどと同じように地上へと落下する。

『星喰い』へスキルを叩き込むと同時に空を見上げるとユウコの立ち上げた両手剣スキルのエフェクト光が目に入った。再び大ダメージを食らい暴れる衝撃で払い落とされながら光に包まれながらこちらに落下してくるユウコの姿はまさに流星そのもののようでとても美しかった。


 ユウコの常識外れの高さからの落下速度が追加された『アクセル』を食らった『星喰い』の残りHPは見事に吹き飛び粒子になって消えた。

 その後、報酬で手に入った素材で作った武器防具たちはヘル・オンラインの最後の日までユウコや俺たちの力強い味方となって支えてくれたのだった。



またまたお待たせしました。今更読んで下さる方がいるかわかりませんが「星降る夜に」編のラストです。まだもうちょい書きたい話があるので番外編は一応は続けるつもりでいます。いつになるのかそもそも書くかは気分次第なんではっきりとは言えませんが。意見感想待ってます。

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