「星降る夜に 3」
ユウコの後を追って俺たちは砂丘を乗り越えた先に目に飛び込んできたのは巨大な長方形の石を横倒しにして蜘蛛のような節足動物型の足、顔はカエルに無理矢理牙を植え付けたような横長な作り。そして長方形の体の後ろにはナイフのような鋭利な刃物を思わせる尾が付いたモンスターだった。視界に映るそのモンスターの上にある個体名は『メテオイーター』となっていた。そしてその巨体の周りを取り囲むようにして『円卓』の連中が先陣を切って戦っている真っ最中だった。
その様子を見るや否やコウジさんとユウコはメンバーに声をかけると同時にアーサーの元へと向かっていった。俺は後ろに回って攻撃しようとしている連中に混ざろうとするが頭上から何かが飛来する音が響いてきてその音の正体が気になり視線を上に向けると先の尖った金属のような光沢を持った何かがこちらに向かってきていた。
「なんだありゃ!?」
俺が声を上げていると『円卓』の人が声を張り上げた。
「あれはこいつの背中から打ち出されたトゲミサイルだ。追尾性は流石にないが当たるとかなりのダメージだ! とにかく当たらない方がいい! それと着弾すると結構広範囲に爆風が広がるから巻き込まれないようにな!」
「了解!」
片手剣に盾持ちの前衛プレイヤーが俺に助言をくれたのでその通りに大げさなくらいに避けて走り抜けると同時に後方で着弾、背中に爆風を感じながら俺は尾の近くに辿り着いた。
後ろ右足に的を絞り俺も体術スキルを発動させ少しでもボスの体力を削ろうと試みるが、視界の隅に一瞬だけ見えた黒い何かが俺の体を吹き飛ばした。
満タンだったHPが一気に一割近くまで減少するのが確認できた。その様子を見て慌てて円卓の人が俺の前に駆け寄り盾を構えて回復の時間を作ってくれた。
「ありがとうございます!」
すかさず俺は回復アイテムを取り出し一気に全快する。
「気をつけろ、こいつは色々とやべえ。固いし早いし攻撃はあんたが食らったようにアホみたいに強力と来たもんだ」
そう言って盾を構える円卓のその人の顔は頬が引き攣っていた。周囲を見れば似たように強力な敵を目の当たりにして怖気づいてしまっている人たちが見て取れた、このままでは恐慌状態に陥り前線が崩れるのも時間の問題かと思われたが
「ちょっとみんな、なにビビってんの! これだけ強い敵なんだから倒したらどんな強力な素材、武器とか防具どっちかわからないけど絶対凄いのがドロップするはずだよ! ここで燃えないゲーマーなんてここにいるの!?」
そう言って両手剣スキル『アクセル』で上空から急降下してトゲミサイルを打ち出していた辺りの背中に剣を突き立てつつユウコが笑顔でみんなに叫ぶ。
「強い敵からは強力なアイテム! これでもしなんの役にも立たないアイテムだったら私が代表してGMをぶん殴ってやるわ!」
剣をそのまま引き抜かず刺したまま尾の方へ駆け出すユウコ。比較的柔らかい部位だったようでメテオイーターの体力が一気に減少する。たまらず暴れだした拍子に振り落とされたユウコは空中でクルクルと宙返りを決めて着地を果たす。
「どうかな!? みんな!!」
再び背中に挑戦しようと駆け出しながらユウコはみんなに呼びかける。
「ユウコさんの言う通りっす!」
「ユウコちゃんには敵わないなぁ」
暗くなっていた戦場の空気が一気に変わる、みんなユウコの飾らず腐らずこのデスゲームを楽しむ姿に心を開いて後ろ向きの気持ちが切り替わっていってるのが目に見えた。
「あんた、あのユウコと幼なじみなんだって?」
「え? あ、はいそうですけど・・・・・・」
「時間ある時でいいから彼氏いるか聞いといてくれないか?」
良かったなユウコ、みんなあんなに怯えていたのにもうこんな事言えるようになってんぞ? ここにも新たなユウコファンが増えたぞユウコ。いい加減お前の相談受けるの俺嫌なんだぞユウコ・・・・・・。
「時間ある時聞いときますけど期待しないでくださいね」
今まで何度も繰り返してきたお決まりの返事、向こう側に居た時にもここでも数えるのがアホらしく思えるくらいにこの言葉を繰り返して来た。少しだけ気落ちするがそんな事より目の前のこいつを倒してから考えよう、うん絶対それがいい。
「そんじゃ、ま俺も行きますか!」
わざとらしいくらいに大きな声で気合いを入れると俺も再びメテオイーターの足を狙いに駆け出した。
投稿ペースが上がる事はないんだろうなぁ・・・・・・。
特別編第三話。意見感想待ってます。