8
翌日の夕方の六時頃。
佳乃は浴衣を着て、公民館へと向かった。
公民館が近づいてくると、盆踊りの音楽が聞こえてくる。
公民館の前では、智春と晃と栄治と里香が待っていた。
佳乃を見つけた里香が駆け寄ってきた。
「佳乃ちゃん、浴衣、大人っぽくて可愛い」
「ありがとう。里香ちゃんも水色の浴衣、似合っている」
五人は揃ってお祭り会場へと向かった。
お祭り会場は、公民館の駐車場で、中央に小さめの櫓が置かれ、それを囲むように露店があった。
やきそば、じゃがバター、焼き鳥、かき氷、飲み物を売っている。
大きな祭りではなかったが、村民たちが集まり、賑わいを見せていた。
里香が佳乃の腕を取り、言う。
「わたしと佳乃ちゃんで飲み物を買ってくるね」
五人は分担して露店で食べ物や飲み物を購入した。
しばらくお祭りの雰囲気を楽しんだあと、それぞれ好きな味のかき氷を買って、公民館を出た。
智春が佳乃に言う。
「これから川に向かうんだ」
かき氷を食べながら、しばらく歩くと、河原に着いた。
栄治が持ってきた大きいレジャーシートを広げて、買ってきたものを並べた。
他にも家族連れなどがちらほらと見受けられた。
川のせせらぎを聞きながら、五人は買ってきた焼きそばなどを突っつきはじめる。
里香が尋ねる。
「佳乃ちゃんは、いつまで深江にいるの?」
「それが、昨日、お母さんから連絡があって、八月三日に迎えに来るって……」
里香が笑顔で言う。
「じゃあ、それまでいっぱい遊ぼう」
智春が顔の前で手を振りながら言う。
「俺とこじかは自由研究と受験勉強で忙しいんだよ。こじかが帰るまでに終わらせないと。
――こじか、明日の午前中、じいちゃん、時間取れるって」
「本当? 頼んでくれてありがとう」
「寺の場所は分かる? 十時頃に来て」
佳乃は頷いた。
そのあとも五人はわいわいと話し続け、晃が中学二年生で、栄治と里香は中学一年生だと知った。
深江中学の生徒はこの四人だけだという。
智春が腕時計を見ながら言う。
「そろそろはじまるかな」
それが合図かのように、ぱぁんと弾けるような音がした。
佳乃は夜空を見ながら言う。
「花火だ!」
智春も花火を眺めながら言う。
「木で全部は見えないけど。沢田のお祭りの花火だよ」
十五分ほど花火が上がって、それが終わると解散になった。
佳乃は、四人とは方角が違うので、その場で別れを告げて、家に向かった。
秀久が姿を現して言う。
「綺麗でしたなぁ。あれは花火というのですか」
「秀久さんは、はじめて見たの?」
「はい。夜の空にそれは、それは、よく映えておった。お祭りも昔とは違って……」
秀久は楽しそうに話していた。
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