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怠惰なドラゴンは働き者  作者: 不健康優良児
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第8話

読みづらい。文章のあいだをあけたほうがいいとの意見をいただきましたので、改行ごとに一行分空白を入れてみました。

 俺が転生した異世界ガイアは、剣と魔法とドラゴンな王道RPGを地で行く世界だ。諸兄らは王道RPGと聞いて、まず何を思い浮かべるだろうか。そう、勇者と魔王だ。


 という訳でこの世界にも勇者と魔王がいまーす。


 はー……。いるんだよなぁ魔王。来るんだよなぁ勇者。


 面倒な神龍のお仕事の中でも、ダントツに面倒な重労働を想像して、今日は朝から気が重い俺なのでした。


 気分転換も兼ねて少しこの世界の勇者と魔王について説明しよう。


 まずこの世界における魔王とは、魔界から世界を侵略しに来る傍迷惑な野郎共のこと。前世では日本の隣国みたいな連中で、この世界の魔界ってのは所謂、地底世界のことだ。


 地表とマントルの間には100キロ程度の厚みがあり、そこには大陸1つがすっぽりと収まるほどの巨大な空洞が存在している。この空洞に地上の動物が何かの拍子に紛れ込んだり、元々そこに生息していた原生生物が独自の進化を遂げて地上とは異なる文明を築いていった。これが俺たちの言う、魔界だ。


 あ、ちなみにガイアは地球と同じ惑星だ。ファンタジー作品にありがちな真っ平らな大地がどこまでも広がって、なんてトンデモ世界じゃありません。万有引力の法則は存在するし、上に向かって飛び続ければ成層圏を突破して宇宙にだって出る。


 ここが地球から何万光年も離れた、文字通り星の数ほどある惑星の1つなのか、はたまた他次元宇宙なのかは分からんが、地球と同じ理屈で成り立つ世界であることは間違いない。


 その理屈で身も蓋もない言い方をしてしまえば、魔王と、そして魔王が率いる魔族ってのは、要するに地底人だ。

 

 資源が乏しく、弱肉強食の生存競争を繰り広げていた地底人が、豊富な資源を求めて地表の侵略に乗り出す。その先鋒が魔王ってわけだ。


 地上の人間たちは魔王なんて大げさに騒いでいるが、こいつらは前世の軍隊で例えるなら強行偵察部隊。地位もいいとこ少尉や中尉ってとこかな。主な役目は地上の一部地域を武力支配し、侵略の前哨基地を築くことにある。あれ? 魔王やけに立場低くね? とか思うだろうがこれにはワケがある。


 以前、この世界の地下には膨大なマナの奔流、マナストリームがあると説明したよな。魔族たちは地下に生息しているため、地上のモンスターよりもこのマナストリームの影響をモロに受け、より強靭に進化している。


 だが逆に高密度のマナが満ちている環境に適応してしまったぶん、地上は連中にとってマナが薄く生存が困難な環境になっている。皮肉なことに魔界で強者であればあるほど地上は過酷な環境となり、下手すれば地上に出てものの数日で衰弱死に至るだろうな。


 そこで魔界のボス、わかりやすく大魔王とでもしておくかね、大魔王はまず侵略の足がかりとして、地上を自分たちの暮らしやすい環境へ作り変えを行う。


 地上でも活動ができる程度には弱く、だが地上のモンスターよりはそこそこ強いレベルの配下、つまり魔王を送り込み、地上のテラフォーミングを行わせるってわけだ。


 ゲームなんかでも序盤のボスがよく言ってるよな。「お前たち人間の絶望が大魔王様の降臨に云々かんぬん」って。あれって要するにそういうことなのさ。


 まあこの世界じゃ、別に現地の人間が絶望するのは結果論で、魔王が直接やってるのはマナストリームをぶち破って大量のマナを地表に放出させたり、大量の人間をとっ捕まえて無理やりマナを絞り出したりってのがパターンだ。別に人間が絶望したところで、大魔王降臨には直接の関係はない。


 ついでにゲーム終盤のステージになると、普通にエンカウントする雑魚モンスターが序盤のボスよりも強いのはそういうわけ。魔王なんて大仰に持ち上げられたところで、所詮連中は中間管理職一歩手前の下っ端ってわけさ。


 だが下っ端でも世界を乱す不届きものには違いない。そこで登場するのが我らが希望の星、勇者さまってわけだ。


 え? なんで俺ら神龍が解決しないのかって? 馬鹿言っちゃいけない。俺らはこの世界じゃ最終兵器みたいなもんだぞ。自分の領土に敵国が偵察部隊を送ってきたからって、そいつら目掛けて核ミサイルをぶっぱなすか? そんなことしたら過剰防衛で自国民からも非難轟々だ。んな面倒なことは御免こうむる。


 それに冷たい言い方かもしれないが、魔界の侵略で誰が一番被害を被るかといえば、それは人間だ。ならばこれは人間の手で解決するべき問題だ。人間の、勇者の手でな。


 さて話を戻すと、この世界の勇者。実は俺たち神龍が生みの親だったりする。


 言っとくけど勇者の正体がゴーレムやホムンクルス、俺たち神龍がニャンニャンして誕生した龍人ってわけじゃないぞ。


 ちょっとマナストリームに細工して、素質のある人間にマナが多量かつ適切に供給され一般人よりも早く、強く成長できるようにしただけだ。ゲーム的に表現するなら取得経験値倍増ってところだな。そしてその恩恵を受けられるのが、この世界の勇者ってわけだ。


 数千年前、大魔王が最初に魔王を派遣してきたとき、俺たち七大神龍が直接魔王を片付けるべきか、人間の手で魔王を倒すべきか意見が割れちまった。おかげで対処が後手にまわり、人間たちにも結構な被害が出たんだよなぁ。


 そんな時に考えられたのが、俺たち神龍が加護を与えた人間に魔王を倒してもらおうというものだった。提案者は俺な。


 当時はまだ魔王とか魔界とかって呼称がなかったから気づきにくかったが、これってよく考えれば地球の某RPGまんまな内容じゃね? そう思ってダメ元で提案してみたが、これがすんなり受け入れられた。


 そこから先は早かったな。故郷を滅ぼされ、復讐に燃える人間に加護を与え、勇者が現れて魔王を倒すから各国はそれに協力しろって神託を世界中に送った。


 ちなみに勇者には某有名RPGのメディアミックスの主人公みたいに、額に神龍の紋章が浮かぶ仕様になってるんで、すぐに見分けがつく。まあ、あのチート主人公と違って、こっちのはただの飾りだけどな。


 こうして各国の協力を得て、初代勇者とその仲間たちは魔王を倒すことに成功したのでした。めでたしめでたし。


 これが、俺たち神龍が作った勇者誕生の仕組み。通称システム・ブレイブ! うん。中二病乙と言いたくなるわ。当時変なテンションになって名づけた自分をぶん殴ってやりたい。


 まあとにかく、魔族の進行は退けられたわけだが、その後も大魔王は手を変え品を変えて地上への侵略を繰り返してきた。


 俺たちはその度に人間に加護を与え、勇者を生み出してきた。俺たち神龍もシステムを改良して、より強い勇者が育つようにしてきた。してきたんだが。


(おかげで仕事が増えたんだよなぁ~……)


 俺はため息を我慢しつつ、訪問者を見下ろす。


「勇者アルス=ロート! 神龍の試練に挑みに来たっす!」


「よくぞ来たな今代の勇者よ。其方の力、試させてもらうぞ」


 働きたくないでゴザル! 絶対に働きたくないでゴザル!!

ここまでお読みいただきありがとうございました。

誤字脱字、設定の矛盾などありましたらご指摘いただければ幸いです。

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