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怠惰なドラゴンは働き者  作者: 不健康優良児
15/16

最終話

これにて最終回です。

ここまでのお付き合い、本当にありがとうございました。

『全機、敵ヲ殲滅セヨ。目標ハ前方ノ原始惑星生命体タイダノスロウス』


 ○ススターから無数の円盤が次々と放出されていく。数えるのも面倒になるくらいだ。だが、足りないねえ。この程度で神龍をどうにかできると思っているなら、それは思い上がりってもんだ。


 異世界ガイアにおいて、神龍は最強の存在だと認知されている。まあ事実そのとおりだけど。


 じゃあなんで神龍は最強なのか。それはマナを自由自在に操れるからだ。


 人間もマナを操って魔術を行使するが、あんなの俺たちからすればリーマン予想に挑むために数字を覚えたようなレベルだ。


 ただし、俺たち神龍はガイアでは絶対に本気を出すことはない。厳密には本気を出せない。神龍の本気なんて、大陸一つを簡単に消し飛ばすし、何よりも消費されるマナが尋常じゃない。


 マナは過剰にあふれれば毒となるが、同時にガイアの命でもある。マナが枯渇した大地は荒れ果て、到底、生命の生きていける環境ではなくなる。


 ガイアの守護者である俺たちが、ガイアを害するような真似をしちゃ本末転倒だ。だから俺たち神龍は、ガイアの地では本気で戦うことはない。


 だが、この無限のマナがあふれる宇宙なら話は別だ。加減を間違って壊してしまうようなものはない。何よりも、どれだけ大技をぶちかましても、マナが枯渇することは決してない。つまり今の俺は、所謂MP無限状態だ。

さて、最初の一撃はドラゴン定番のアレで行きますか。


「すぅうーーーーーっ」


 宇宙空間に漂うマナを軽く吸い込む。取り込んだマナを体内で圧縮し、練り込み、一気に吐き出す。


「GAHOOOOO!!」


 咆哮と共に放たれるのは高密度のマナの光線。所謂ドラゴンブレスだ。

真空の宇宙じゃ炎は効率が悪すぎるので、マナに物理的な破壊力を持たせてみたんだが、見た目は完全に某機動戦士の作品群に出てくる粒子砲だな。


 先行していた円盤の一群が直撃を受け、次々と爆散していく。さらにブレスは後方の円盤郡の一部を貫通し、デ○スターにも直撃した。が、さすがに距離がありすぎたか。目に見えるほどの損傷は負わせられなかった。だが、警戒心を煽るのには十分だったらしく、残存の円盤が慌ただしく動きだし、母船のデ○スターからも追加で円盤が発進してきた。


 いやいや。どんだけいるんだよ。マジで面倒だな。受身に回ると数の暴力でごり押されそうなんで、積極的に行きますか。

障壁を展開して、突貫。進行上にいる円盤を跳ね飛ばし、母船との距離を詰めていく。


 円盤たちは光弾を発射するが、全て障壁に阻まれる。見たところレーザーとかの類だな。上級火炎魔法以上の火力があるが、その程度だ。仮に直撃したところでちょっと日焼けする程度だ。


『《スライサー》出撃』


 母船から一回り大きく、外周部分が青白く発光する円盤が飛び出してきた。あれがスライサーか?


 スライサーは回転しながらこっちに突っ込んでくる。特攻兵器か。とりあえず、障壁で防いでおくか。と思ったら、障壁があっさりと切り裂かれた。


「マジか!?」


 顔に迫る円盤を首をひねってかわす。僅かに首筋にかすり、鱗が裂けた。


 全力じゃなかったとはいえ、神龍の障壁を切り裂いて鱗を傷つけるとかどんだけ切れ味いいんだよ。


 振り返ると円盤が反転し、再び襲い掛かってくる。


「舐めんな!」


 全力の障壁を出すのも手間と、青白く発光する外周の内側を両前足で挟み込んでがっちりキャッチ。


「どっせえええい!」


 そのまま円盤の群れ目掛けてスライサーをぶん投げる。スライサーは味方の円盤を両断しながら飛んで行き、数百機ぶった切ったあたりで粉々に砕けた。


 それを確認しつつブレスを横なぎに吐き出し、俺を包囲しようと展開していた円盤を次々に撃ち落とす。

「がっ!?」


 突然、背中に衝撃が走った。羽ばたいて体勢を立て直そうとしたが、うまくいかない。なんでだと首を回して背中を確認すると、左の真ん中と下の翼が根元からちぎれ飛んでいる。


『誤差修正右10度。第2射、撃テ』


 戸惑う暇もなく、視界の端が眩しいくらいに赤光している。


「ちぃっ」


 残った4枚の翼で何とかその場から飛び退く。直後、極太の真っ赤な光線が通過していった。見ると母艦から突き出た砲塔が赤熱している。今のは母艦からの砲撃か。


 って、しまった。いつの間にか円盤に囲まれちゃってるし。


『全軍、一斉砲撃開始』


 母船からの号令と共に、周囲を取り囲む無数の円盤が、母艦の砲塔が次々に光弾や光線を放ってきた。この程度、万全の状態なら躱すのは造作もないってのに、翼がやられているんじゃ避けきれない。


 咄嗟に障壁は展開したが、ダメだ薄い。防ぎきれねえ。少なくない光弾や光線が直撃し、俺の身体を削っていった。


「GAAAAAA!!」


 やっと砲撃が収まった頃、俺の身体は無残な有様だった。


 翼は軒並みちぎれ飛び、四肢はかろうじて原型をとどめているのは左の後ろ足だけ。顔も半分ぐらい融解しかけている。


 あー、効いたぁ。めっちゃ効いた。っていうか、こんななってもまだ生きているとか、我ながら呆れた生命力だな。神龍マジパねー。


『我ラ優良種ニ歯向カウ愚行。ソノ身ヲ持ッテ思イ知ッタカ』


 母船から胸糞悪いセリフが聞こえてきた。無機質な機械音声のクセして、妙に勝ち誇ったような感じがするのが余計に癪に障るわ。


「……確かに、思い上がれる程度の力はあるらしいな。正直、ちょいとなめてたわ」


『ナラバ、己ノ愚カサヲ悔イナガラ、滅ビルガ……』


「じゃ、そういうわけで第2ラウンド開始と行きますか」


『……何?』


「聞こえなかったか? 第2ラウンド開始しようぜって言ったんだよ」

 相手の大体の力量はわかったし。3割増で行けば充分対応可能だわ。


『理解不能。知的生命体タイダノスロウスハ絶命寸前。戦闘続行ハ不可n……』


 優良種が絶句する。そりゃあボロ雑巾みたいな状態から、巻き戻すかのように俺の身体が復元していくのを見りゃ無理もないか。


 前にも言ったが俺たち神龍は、前世の記憶を持った人格がコアとなって、マナをドラゴンの形にまとった存在だ。つまり、無限のマナが満ちている宇宙なら、いくら身体を削られようが、即座に修復できる。俺は宇宙ならばMP無限のHP高速回復だ。


『不可解』


 無機質な機械音声に、動揺の感情が混じる。


『不可解不可解不可解不可解!!』


 その動揺に呼応するかのように、円盤たちが一斉に襲い掛かってくる。


 俺は再生したての前足に、早速マナを流し込む。5本の爪に高密度のマナを

纏い、一気に振り下ろす。爪の軌跡に沿って、5本の金色の斬撃が放たれる。この前、勇者くんに伝授したブレイブスラッシュの強化版だ。五つの斬撃は円盤郡を切り刻み、ついには母船にも深々とめり込む。


 この距離ならこっちの攻撃も届くな。ならば、納豆ミサイルと双璧をなす男子の憧れ行ってみようか。


 俺は数十個のマナの光弾を作り出し、それを一気に射出する。光弾はそれぞれ直進したり、ジグザグに曲がったり、螺旋を描いたりと独自の軌道で飛んでいく。大量の円盤を撃ち落とし、光弾は母船に次々と突き刺さっていく。


 おっ。結構いいとこ当たったかな。母船のそこら中から小規模の爆発が起こっている。


『不可解! 全砲門一斉発射!』


 母船から無数の光線が放たれる。けど、そいつの威力は大体わかったし。今度は全力で障壁を展開する。


 光線が障壁にぶつかり、火花が散った。ほんの僅かな拮抗の後、光線ははじかれ明後日の方へ飛んでいった。強度は充分だな。だったら突撃だ!


 障壁を円錐状に展開し、円盤をブチ抜きながら母艦に突っ込む。途中、スライサーも向かってきた。今度は余裕で競り勝ち、スライサーは障壁を破れずひしゃげて潰れる。


『危険危険危険! 全砲門一斉掃射!』


 母船から幾本もの光線が発射される。尽くを弾き返し、母船に障壁ごとぶつかり、内部へ掘り進んでいく。ついでに回転も加えてやる。俺の障壁は、デススタ○を貫く障壁だ!


 メカメカしい母船の内壁を貫き、縦横無尽に飛び回る。動力機関みたいな主要施設でも見つけられれば、それをぶっ壊してカタがつくんだけど。無駄に広すぎるわこの船。


 おまけにそこら中からセントリーガンみたいな撃退装置が飛び出てきて、鬱陶しいことこの上ない。


 障壁で全部跳ね返せてるから実害はないが、ウザったくてしょうがない。


「……や~めた。めんどい」


 早々に主要機関を探すのを諦め、俺は脱出を図る。まあやることは変わらない。壁を適当にぶち破って外に出るだけだ。


「ん?」


 途中、この船の船員らしい人間サイズの生物の集団がいた。2~3体捕まえてみたら、バタバタギャーギャーと落ち着きがない。


 なんていうか、甲殻類と爬虫類の間の子みたいなルックスだな。別に美的感は所違えば色々なんだろうが。どうにも小物臭漂う外見だ。こんなんでよくもまあ優良種とか思い上がれたもんだ。


 グシャリと握りつぶすと、青黒い体液が飛び散った。ウエっ。ばっちい。


 なんてことをやっている間に、外壁を突き抜けて外に出た。


 振り返ってみると、母船はさっきにも増して内部から爆発を起こし、一部では崩壊しているところもある。主要機関は見つけられなかったけど、あれはあれで効果があったらしい。


『危険危険危険! 主砲、発射用意ッ!』


 母船の一部が展開し、中から特大の砲口が現れた。まだ奥の手を隠していたというべきか、今頃になって奥の手を出してきたというべきか。いずれにせよ、クライマックスは近いねえ。


 主砲の発射には時間がかかるらしく、母船は隙だらけだ。今がチャンスと一気に決めても無粋ってもんだな。最後は様式美に従って、大技の打ち合いと行きますか。


「すぅううううううーーーーーーーーっ!!」


 初っ端にブレスを叩き込んだのと同じように、俺はマナを体内に吸い込む。ただし今度はより多く、より深くマナを取り込む。


 吸い込んだそばから圧縮、精製を繰り返し体内の許容限界までマナを蓄積する。


『エネルギー充填完了!』


 奇しくも、俺と母船の準備が整うのは同時だった。


『主砲、発射!!』


 主砲から、特大の光線が放たれる。射線上の円盤を昇華させながら光線が迫ってきた。結構な威力だ。直撃すれば神龍でもやばいかも。だが、こっちも負けてねえぞ。


「GAAAAAHHHOOOOOO―――――――――ッ!!!!」


 溜めに溜めた高密度、高濃縮のマナを放出する。宇宙でしか使えない超特大のドラゴンブレスだ。


 母船の光線と、俺のドラゴンブレスが激突し、周囲に尋常じゃない熱量が拡散していく。余波に巻き込まれ、わずかに残っていた円盤は軒並み消滅していく。


 さすがにあれだけの巨大さ。内包するエネルギーはかなりのものだ。俺の全力のブレスに僅かとは言え競り合ったんだからな。だが、そろそろ終わらせようか。


 吐き出すマナの出力を上げる。それだけで激しく競り合う2つの高エネルギーに優劣がついた。


『……得ナイ』


 俺のブレスが、徐々に母船の光線を押し返し始める。


『有リ得ナイ』


 一度傾いた流れは、消して戻らず勢いを増していくのみ。ブレスは光線を圧倒し、母船へと襲いかかる。


『有リ得ナイ有リ得ナイ!』


 優良種(笑)が泣き言を喚いているが、俺は容赦なく出力を最大にしてありったけのマナを吐き出す。


『有リ得ナイ有リ得ナイ有リ得ナイ有リ得ナイ有リ得ナイ有リ得ナイ!!』


 母船も主砲の出力を上げたのか、ギリギリのところで踏みとどまり、押し返そうと足掻く。だが、無理な出力アップに傷ついた船体が耐えられなかったのか、先程にも増してそこら中から小規模な爆発を起こしている。


 さっき中を適当にぶっ壊したのも無駄じゃなかったな。


 どこか重要な機関がイカれたのか、主砲の出力が目に見えて低下していく。


『有リ得ナイ有リ得ナイ有リ得ナイ有リ得ナイ有リ得ナイアリエナイ有り得ないarienaiアリえない有り得ナイあリエない!!』


 優良種(笑)がバグったみたいに支離滅裂にわめきたてている。


 はいはい。ここまでの長旅ご苦労さんでした。じゃあ最初に宣言したとおり、細胞1つ残さず消し飛べや!!


 体内に貯めたマナをありったけ搾り出し、最後のダメ押しとばかりにブレスに追加する。一回りほど太くなったブレスが、主砲の光線を完全に凌駕し母船に直撃する。


『くぁwせdfrtgひゅじこlp;@:!!??』


 最早、意味をなさない優良種(笑)の断末魔の叫びと共に、母船は完全に消し飛んだ。


 綺麗さっぱり母船が消滅した宇宙を見つめる。海外映画でお約束の、最後の敵を倒したと思ったら、そいつはただの斥候だった、とかいうオチはないな。……ないよな?


「ふううーーーーっ……」


 しばらく身構えるが、特に増援が来ることもなくその気配もなかったので大きく息を吐いた。


 あ~っ疲れた~。喉もガラガラだし。こんな面倒事、二度とゴメンだぜ。プライドの野郎には労災下ろさせてやるからな。


 猛烈な疲労感と眠気、それとほんの少しの達成感を伴いながら帰路につく。


「寝る。寝るぞ。絶対寝るぞ。誰になんて言われても爆睡するぞ。50年は惰眠を貪ってやる」


 荘厳な決意を固め、俺はガイアへと帰還するのだった。


 最後に出力上げすぎたブレスで、キマイラ座の頭の星が消滅してその補修をプライドのやつに言い渡されるのは、その5分後のことだった。グスン(泣)。

ここまでお読みいただきありがとうございました。


最後に閑話を1本上げる予定ですが、とりあえず「怠惰なドラゴンは働き者」これにて閉幕です。作中でも主人公が指摘しましたが、脳内設定だけが先走り、ろくなプロットもつくらずノリと勢いだけで描いた稚拙な作品にお付き合いいただき本当にありがとうございました。

次回作どころか、このまま書き手を続けていいものかもまだ決めていませんが、もし奇特な方がいらっしゃいましたら不健康優良児の次回作に、ホドホドにご期待下さい。

過度な期待は勘弁してください。ホントマジで。


誤字脱字、設定の矛盾などありましたらご指摘いただければ幸いです。

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