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最期の奇術師  作者: 山本正純
前編
9/27

 その頃合田警部は十一年前の法務省職員殺人未遂事件の調書を読んでいた。

 

 平成十五年五月三日。午前九時三十分。

 非番だった喜田参事官は新宿シティマンションの前を歩いていると、野次馬たちが集まっているところが見えた。そのマンションは五階建てと都内のマンションにしては低かった。

 喜田は異変を感じ野次馬たちに合流する。その野次馬たちの中心にいたのは黒いスーツを着た朝風前進と仰向けの状態で倒れている女性。

「警察です。何があったのですか」

「突然屋上から同僚の瀬川左雪が落ちてきた」

 朝風前進は近くに倒れている女性を指さす。

「つまりあなたは目撃者ということですね。後でお話を伺います」

 喜田が屋上を見上げると人影が見えた。

「警察と救急車を読んでください」

 喜田参事官が屋上に向かうと霜中凛という男が佇んでいた。

「警察です。先程この屋上から女性が転落死しました。少々お話を聞かせてください。なぜあなたはあの女性を殺したのか」

「違う。俺は殺していない。俺は彼女に呼び出されただけだ」

 それが喜田と霜中凛との出会いだった。その後警視庁は霜中凛に対して任意の事情聴取を行う。その間に霜中凛が瀬川左雪のストーカーだったことが発覚。

 

 目撃者の朝風前進は瀬川左雪に電話で呼び出され、屋上から落ちてくる瀬川左雪を目撃したことが分かった。

 事件発生から一週間後。瀬川左雪の自宅から霜中凛直筆の脅迫状が発見される。その脅迫状には屋上に来るようにと書かれていた。

 それと同時期に東京警察病院のベッドで眠っていた瀬川左雪が目を覚ました。彼女は幸いにも命を取り留めた。後遺症もなく、一か月程度リハビリを続ければ社会復帰できるという。

 彼女は刑事に語る。

「霜中凛が私を突き落しました」

 脅迫状という物的証拠。被害者の証言。現場の状況。それらが重なり霜中凛は逮捕される。


 逮捕から数か月後。霜中凛の裁判が東京地方裁判所で始まった。だが瀬川左雪は検察側の証人として法廷に現れることはなかった。

 瀬川左雪は東京警察病院から退院後消息を絶った。

 

 改めて調書を読んだ合田の脳裏に仮設が浮かぶ。その仮説を確かめるために合田は北条の元へ向かう。

 鑑識の部屋にいた北条は清原ナギと共に集団誘拐事件に関する鑑識作業を進めていた。

 そんな時に合田が鑑識の部屋に顔を出す。

「北条。調べてほしいことがある。瀬川左雪と監禁されている二人の女性の顔を照合してくれ。瀬川左雪の顔写真は十一年前の殺人未遂事件の調書に乗っている。瀬川左雪が集団誘拐事件の人質の一人の可能性がある」

「分かりました」

 北条は早速マスコミに配信された犯行声明の映像と瀬川沙雪の顔を照合する。だがその結果は合田の予想を裏切った。

「ダメです。一致しません。一応顔認証システムでバスの防犯カメラの映像とも照合してみます」

 しかし瀬川左雪の顔と誘拐された二人の女性の顔は一致しなかった。バスジャック事件の人質だった二十四人の顔写真とも照合したが結果は変わらない。

 その結果を受け北条が合田に報告する。

「バスジャック犯の顔と霜中凛の顔が一致しました。これで犯人が霜中凛であることは確定です」

「だが分からない。なぜ霜中凛は瀬川左雪を誘拐しなかったのか。喜田参事官の孫と共に監禁されている二人の女は何者なのか」


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