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最期の奇術師  作者: 山本正純
前編
7/27

 喜田参事官は江角千穂が運転する自動車の助手席に座る。運転席に座った江角千穂は喜田に無精ひげを生やした男性の写真を見せる。

「依頼人は横浜中央大学犯罪心理学部教授の花菱後六さん。五十歳」

 江角千穂は続けてもう一枚の写真を喜田に渡す。そこに映っていたのはショートヘアの女性。自称弁護士で集団誘拐事件の被害者の一人だった。

「彼女の名前は横溝香澄さん。二十八歳。縦林法律事務所で働く弁護士。大学内で花菱さんと大学の卒業生横溝香澄さんが交際しているのではないかという噂が絶えません。依頼内容は二日前から失踪した横溝香澄さんを探すこと。彼女の自宅には盗聴器が仕掛けられた形跡がありましたよ。ところであなたの自宅には盗聴器が仕掛けられていなかったのですか。犯人は盗聴器を使ってあのバスにあなたの家族が乗車することを知ったのかもしれませんよ」

「あり得ない。私はテロ組織の幹部ですよ。盗聴には気を使います。孫とも同居しているから、自宅に盗聴器が仕掛けられていたというのはあり得ない」

「分かりました」

 江角千穂は依頼内容を伝えると自動車を走らせる。その行き先は横浜中央大学。

 

 その頃合田警部は青空運行会社の応接室で桂右伺郎に話を聞いていた。桂はコーヒーカップに注がれたコーヒーを一口飲みながら欠伸する。

「悪いな。本来なら仕事が終わっている時間に事情聴取を行って」

 合田が気遣った声をかけると、桂はコーヒーを一口飲んでから声を出す。

「青空運行会社のバスがジャックされたあげく全く関係ない一般人が集団誘拐事件に巻き込まれたんでしょう。家に帰るべきではありませんよ。刑事さん。何でも聞いてください」

 桂右伺郎は寝不足を隠すかのように笑って見せる。

「お言葉に甘える。この男に見覚えがないか」

 合田は桂にバスのドライブレコーダーが記録したバスジャック犯の画像を見せる。

「この男は顔が隠れているでしょう。誰かなんて分かりませんよ」

「それならこのバスに不審な電話をかけてきた人はいるか」

「そういえば一週間くらい前に若い男が電話してきましたよ。その男は私に会いたがっていたようです。その時は生憎福岡に出張中でアポは放棄しましたが」

「その男の名前は分かるか」

「確か霜中凛と名乗っていました。職業はルポライターのようです」

「朝風前進衆議院議員と青空運行会社には関係があるのか」

「ありませんよ。私は東都出版社に勤務していたこともありますが、朝風前進衆議院議員とは面識がありません」


 それから数分後、桂の事情聴取が終わった合田は北条に電話する。

「単刀直入に言う。霜中凛という人物を調べてくれ。もしかしたら前科者かもしれない」

『了解』

 北条は警視庁のコンピュータで霜中凛という名前を検索する。すると前科者リストにその名前がヒットした。

『ヒットしました。霜中凛。三十七歳。十一年前法務省職員瀬川左雪殺人未遂の容疑で逮捕されたようです。当時霜中を現行犯逮捕したのは喜田参事官。目撃者は朝風前進。十一年前は法務省に勤務していたようですね。さらに霜中は五年前東京拘置所を出所しています』

「なるほど。それなら喜田参事官の孫を誘拐した理由も納得できそうだ」

『つまりこの集団誘拐事件の犯行動機は喜田参事官への復讐』

「だがまだ分からないことがある。霜中が犯人だとすると、なぜ関係ない二人の人質を監禁しているのか。その理由を調べないと事件は解決しない」

 合田は電話を切ると、今度は木原に電話で報告する。


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