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最期の奇術師  作者: 山本正純
前編
6/27

 午前十時三十分。喜田参事官はイタリアンレストランディーノにやってくる。店内は相変わらず閑古鳥が鳴いている。

「アズラエル。珍しいな。こんな時間に来るなんて」

店主の板利明に声を掛けられ喜田が頷く。

 喜田参事官のもう一つの顔。それはテロ組織『退屈な天使たち』のメンバーである。この場にいる全員は退屈な天使たちの幹部クラスとしてコードネームを与えられている。

「少しこの店に匿わせてほしい」

「警視庁幹部のあなたをこの店に匿うのか。別にここではなくてもアジトでもよかったのではないか」

「ここもアジトみたいな場所でしょう。ここはメンバーの溜まり場だから」

 

 喜田が板利に言葉を返すと、珍しく店の出入り口のドアが開く。そこに現れた二人の女性は江角千穂と日向沙織という珍しいコンビ。

 江角千穂も退屈な天使たちのメンバーの一人で、ハニエルというコードネームが与えられている。

 一方日向沙織は退屈な天使たちの正式なメンバーではない。

「珍しいですね。あなたがこんな時間に現れるなんて」

 江角千穂が喜田に声をかけると、日向沙織は喜田に会釈する。

「お久しぶりです。えっと。アズラエルさん」

「そっちも珍しいですね。いつもの相方はどちらに行かれたのでしょう」

「サラフィエルさんはレミエルさんと一緒にアジトに籠って実戦練習。ラグエルさんは仕事でしばらく戻りません。その間だけ日向さんと行動を共にするよう指示を受けました」

 

 江角千穂が喜田に説明すると、彼女は板利の顔を見ながらスマートフォンを取り出す。

「板利さん。この映像の解析をお願いします」

 江角が取り出したスマートフォンに映し出されていたのはニュース番組でやっていた集団誘拐事件映像だった。

「ニュース番組でやっていたやつか」

「これは動画サイトにアップされたニュース番組の映像です。実は探偵として人探しをしています。現在探している女性が集団誘拐事件の被害者の一人かもしれないんですよ」

 江角の話を聞き喜田が話に食いつく。

「どちらの女性ですか」

「探偵の守秘義務というのがあるので言えません。まだ確証もありませんし」

「これならどうですか。この映像に映っている小学生は私の孫です。警視庁も集団誘拐事件の捜査を行っているが、まだ情報が少ない。ここは情報交換をしませんか。互いの利害のために。その女性を救出しないと依頼は達成されません」

「分かりました。外で依頼人と電話してきます。依頼人の許可を貰い次第お話しますよ。私が探している女性について」

 江角千穂は店から出ていく。彼女は路地裏まで歩き、依頼人に電話する。


 それから五分後、江角千穂が再びイタリアンレストランディーノに戻ってきた。

「喜田さん。依頼人から許可を貰いました。これから依頼人の仕事場を訪問しますが一緒に来ますか。警察官として事件関係者かもしれない人物から情報が聞き出したいでしょう」

 喜田が縦に頷き、カウンター席から立ち上がる。一方江角千穂は日向沙織に声をかける。

「日向さんはこの店でお留守番をしてください」

 二人は店から出ていく。その後ろ姿を見ながら日向沙織が板利明に話しかける。

「暇ですね」

「暇で仕事の手伝いも依頼できない。ということで料理を教える」

 板利の言葉を聞き日向沙織が目を輝かせた。


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