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最期の奇術師  作者: 山本正純
前編
5/27

 午前九時四十分。喜田参事官はタクシーに乗り警視庁に戻ろうとしていた。そんな喜田の携帯電話が鳴る。電話番号は非通知設定となっているため分からない。

 喜田が携帯電話に耳を当てるとボイスチェンジャーで声を変えた不気味な声が聞こえてきた。

『喜田参事官だな。お前の孫喜田祐樹を誘拐した。嘘だと思うのなら、テレビを見ろ。マスコミ各社に映像を送った。その映像がお前の孫を監禁している証拠』

 犯人の声を聞き喜田はタクシーに付けられたカーナビを見る。

「運転手さん。そのカーナビはワンセグ機能付きですか。もしそうならばニュース番組を見せてください」

「いいですよ」

 タイミング良くタクシーは赤信号で止まる。その隙に運転手はカーナビを操作してテレビを映す。

『速報です。昨夜発生したバスジャック事件の犯人と思われる人物から映像が届きました』


 ニュースには、三人の男女が映る。三人の両手足は縄で拘束され、口にはガムテープが張られていた。その映像のバックでボイスチェンジャーを用いて出された声が流れる。

『俺は喜田参事官の孫喜田祐樹と二人の女を監禁している。俺の要求は一つ。午後六時三十分までに朝風前進衆議院議員を俺の元へ連れて来い。そうすれば人質を解放する。俺がいるのはこの場所だ。山羊が柵を飛び越える度に刻まれた烙印。山羊は少しはみ出している。飼い主は心配しない。いつものことだと。虫がお気に入り。虫の近くには必ずそれがある。五番目の惑星へと続く道は遠い。四つの星が集まった幽霊の住処に迷い込んだ。山羊は二度と海を見ない』

 

 ニュースが終わり喜田は再び犯人に声をかける。

「なぜ私の孫を誘拐したのですか。私に恨みがあるのなら、私が人質になります」

『人質交換か。ダメだ。人質は朝風前進衆議院議員と交換する。タイムリミットは八時間。音声だけでは解読に手間取ると思うから、今から同じ暗号文をメールしよう。それまでに暗号を解読して、朝風前進衆議院議員を俺の元に連れて来い。タイムリミットまでに要求が叶えられなければ、人質を全員殺す』


 電話が一方的に切ったタイミングで喜田参事官の元にメールが届く。アドレスは喜田祐樹の物。本文はニュースで伝えられた暗号文と同じ。メールを確認した喜田参事官は千間刑事部長に電話する。

「千間刑事部長。テレビは見ましたか」

『バスジャック犯が喜田参事官の孫と二人の女を監禁したというニュースだろう。こっちではマスコミ関係者が警視庁の出入り口に集結して、喜田参事官の帰りを待っている。しばらく帰らない方がいいだろう』

「分かりました。私の携帯電話に犯人から暗号メールが届きました。内容は報道と同じです。今からそちらに転送します。ところで暗号解読はどうしますか。やり方によればSATに監禁現場所に突入させることも可能ですが」

『そうだな。暗号の解読は捜査員に任せよう』

「ありがとうございます」

 喜田は電話を切ると、運転手に新たなる行き先を伝える。

「イタリアンレストランディーノに向かってください」


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