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最期の奇術師  作者: 山本正純
後編
20/27

20

 警視庁捜査一課三係のメンバーたちは情報交換を行う。

「俺は縦林法律事務所で聞き込みを行った。十一年前の瀬川左雪殺人未遂事件の弁護を所長の縦林智晶が行っていたことが分かった。写真の女の子の名前は縦林千夏。彼女は五年前の四月三日に亡くなっている」

 

 合田の報告を聞き神津が指摘する。

「縦林香澄が誘拐犯だとすると、横溝香澄を誘拐した動機が見えてこない。縦林千夏の死との関連性も分からない」

「そのことだが、縦林智晶の話によると、横溝香澄の兄横溝虎徹は、縦林千春の娘縦林千夏を轢き殺した。さらに横溝虎徹は五年前の宝石店強盗事件とも関わっている。つまり縦林千春と横溝香澄にはそれぞれ誘拐する動機がある。縦林千春は娘を殺された恨み。横溝香澄には兄を逮捕された恨み。どちらかが真犯人でも、あの集団誘拐事件の人質は偶然選ばれたわけではないことが分かる」

 

 その後大野が神津の指摘を補足する。

「さらに言うなら、霜中凛を殺害した動機も分からない」

 二人の意見を聞き木原が報告を行う。

「スラント・ティムについて面白いことが分かりました。スラント・ティムは包帯で全身を隠しているから顔は分からないが性格は無口。しかもスラント・ティムが暮らしていたのは、新宿シティマンション。部屋は瀬川左雪の隣。スラント・ティムの暮らしていた部屋を縦林千春が出入りしていたという証言を得ました。そして霜中凛も同じマンションで暮らしていた。何かがあると思いませんか」

「それは気になるな。大野たちは何か分かったのか」

 

 合田に促され大野が捜査の報告をする。

「警察病院での聞き込みは有力な証言を得ることはできませんでしたが、東京拘置所で霜中凛の面会記録を見せてもらったところ、横溝香澄が三か月に一回ペースで霜中凛と面会を行っていたことが分かりました。霜中は縦林千春と手紙のやりとりをやっていたようです」

「それで桂のアリバイはどうだった」

 合田が神津に聞くと、彼は手帳のページをめくりながら報告を行う。

「桂には鉄壁のアリバイがある。おそらく犯行は不可能だろう。監禁場所が青空運行会社の近くではない限り霜中を殺すことはできない」

「縦林智晶にも不可能なのだよ。監禁場所が東京拘置所の近くではないことを前提にした話だが」

 沖矢が縦林智晶のアリバイに言及すると、合田が呟く。

「まずは監禁場所を特定しなければ、アリバイの意味がなくなる。一刻も早くあの暗号を解読しなければならない」

 

 それから数秒の沈黙が流れ、警視庁捜査一課三係の部屋に北条が顔を出す。

「皆さん。丁度良かったです。マスコミに送られた映像に映っている人質Bの顔と縦林千春さんの顔写真が一致しました。人質Bは縦林千春さんと断言できます。あの映像を解析しても分かったのは人質の身元くらいです。映像には現場を特定できるような建物も映っていません。その上窓もないとなれば、映像から監禁場所を特定することは不可能でしょう」

「つまり暗号を解読しなければ、監禁場所を特定することができないということか」

 合田が北条に確認すると、北条は首を横に振る。

「あくまで映像からは監禁場所を特定できないということです。霜中凛の遺体の靴に微かですが、腐葉土が付着していました。人工的に作られた腐葉土です。監禁場所は腐葉土の研究所や農場ではないかと思います。まあ腐葉土は知識があれば誰でも人工的に作ることができるので、監禁場所特定の決定打にはなりませんが」


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