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最期の奇術師  作者: 山本正純
前編
2/27

 四月四日。午前七時。合田たち捜査一課三係のメンバーが御宅山の中腹にやってきた。

 山の中腹に停車しているバスを朝日が照らす。そのバスの出入り口はダンボール箱が積み上がっており塞がれている。警察官たちはダンボール箱を一つずつ撤去してバスの車内に入ろうとする。

 その様子を見ながら合田は通報者の老人に話を聞く。

「運動として御宅山を登っていたんじゃ。そしたら中腹にバスが止まっていてな。おかしいと思った。昨日この山を登った時にはバスなんて止まっていなかったから」

 一方木原と神津はバスのナンバーを確認する。

「合田警部。このバスで間違いありません。昨夜から行方不明となったバスは」

 木原からの報告を受け合田は聞き返す。

「それで乗客たちは無事か」

「まだ分からない」

 神津が呟いた時、出入り口を塞いでいた最後のダンボール箱が撤去された。その後警察官たちがバスの車内に入る。乗客たちと運転手は眠っていた。バス車内の床には睡眠ガスのスプレーが落ちている。

 ダンボール箱の撤去作業を行っていた大野が出入り口から出て合田に報告する。

「合田警部。乗客及び運転手は眠っているだけで外傷はありません。それとバスの床には催眠ガスのスプレーが落ちていました。鑑定に回します」

「乗客及び運転手を病院に搬送する」

 合田は大野に指示を与えると、このことを月影管理官に電話で報告する。

 

 警視庁の刑事部長室にいた月影管理官は合田からの電話を受け、千間刑事部長に報告する。

「千間刑事部長。ブルースカイバスジャック事件の人質たちが発見されました。どうやら催眠ガスで眠らされ、御宅山の山中に放置されていたようです」

「犯人は逮捕されたのか」

「いいえ。犯人は御宅山の山中に人質たちを放置して逃走したものと思われます。現在不審車両や不審者の目撃者たちを探しています」

「警察組織の威信にかけてバスジャック事件は解決しないといけない。あの夜行バスには喜田参事官の義理の娘と孫が乗っていたようだから」

「なるほど。だから喜田参事官がこの場にいないのですか」

「喜田参事官は病院に向かうよう指示した。そんなことよりバスジャック事件の目的は何だ。なぜ要求がなかった。なぜ人質を放置して逃走した」

「愉快犯でしょうか。もしくは物取り。犯人の目的に関しては合田たちが捜査しています。犯人の行方と共に」

 千間刑事部長はため息を吐き、立ち上がる。

「捜査本部を設置した方がいいかもしれない」

「捜査本部ですか」

「嫌な予感がする」

 その千間刑事部長の予感が的中することになるとは。この時は誰も予想できなかった。


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