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最期の奇術師  作者: 山本正純
中編
12/27

12

 正午が過ぎた頃、監禁場所の廊下を霜中凛が歩いている。その背後で黒い影が様子を伺っている。

(この場所にいる人々はおにぎりに混入しておいた睡眠薬で眠っている。だからこの犯行に目撃者は存在しない)

 黒い影は心の中で呟きながら、霜中凛の首筋にロープを引っ掛ける。霜中凛は驚き背後を振り返る。そこにいたのは意外な人物。

「どうして。お前が。裏切ったのか」

 黒い影は霜中の問いに答えることなくロープを思い切り引っ張る。

 霜中は息苦しくなり自分の首を引っ掻く。首を絞めているロープを外そうとするが、力が入らない。霜中の力は徐々に弱っていく。やがて霜中の瞼が落ちていき、彼は廊下にうつ伏せの状態で倒れた。

 黒い影はうつ伏せに倒れた霜中の背中に腰を落とし、霜中の首を絞める。呼吸が止まるまで。

 

 五分後霜中凛の死亡を確認した黒い影は霜中の死に顔を見ながら沈黙を貫いてきた口を開く。

「あの苦しみながら死んでいく顔は忘れられない。霜中凛。私が裏切ったというのは勘違い。最初から殺すつもりだったから。辞世の句が勘違いだとは、本当の大馬鹿野郎だった」

 黒い影は霜中凛の遺体を担ぎ、監禁場所の近くにあるガレージに停車している自動車に遺体を乗せる。その自動車には、監禁している人々の私物も乗っている。

「警察が私の身元を特定している頃だろう。身元特定に繋がる遺留品を残すのは尺だが時間がない。五時間三十分以内に朝風前進を殺さなければ計画は失敗する」

 

 霜中凛を殺害した殺人犯は自動車を走らせる。その行き先は東京都新宿区にある新宿ホワイトキングシティホテル。経営困難により廃墟となったホテルの近くは鉄パイプが置かれている。

 黒い影は鉄パイプに囲まれたスペースに自動車を止め、霜中凛の遺体を運転席に乗せる。

 丁寧にシートベルトを締めると、黒い影はその場から立ち去る。

 黒い影が回りを見ると、そこには誰もいなかった。

「目撃者は誰一人いない。後はいかにして誰にも気づかれずに監禁場所に戻るか」

 黒い影はポケットからメモを取り出す。そこに書かれていたのは都内の地図。防犯カメラやNシステムの位置。それらが細かく書き込まれている。

 黒い影はこの地図を元に遺体をこの場所に運んだ。黒い影は霜中凛にも地図を見せ、三人の人質を監禁場所に運んだ。

 単純に考えれば来た道を戻ればいいが、現在黒い影の元には自動車がない。さらに監禁場所からこの場所は遠く離れている。

 タクシーで元の場所に戻れば、運転手に顔を覚えられる可能性がある。レンタカーを借りればアリバイトリックが無駄になる。かといって歩いて帰れば時間がかかり、あの場所にいる人々が起きる可能性がある。

 散々悩んだ黒い影は路肩に停まっている自動車を見る。

「あれは」

 黒い影が自動車に近づくと、その自動車のドアが開いていた。黒い影は咄嗟に自動車へ乗り込む。黒い影は盗難車を走らせる。


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