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最期の奇術師  作者: 山本正純
前編
10/27

10

 その頃江角千穂と喜田参事官は横浜中央大学犯罪心理学部を訪れる。

 教室では花菱後六がチョークを握っている。そんな彼に江角千穂が声をかける。

「花菱後六さんですね。探偵の江角千穂です」

 花菱後六は江角の顔を見ながら驚いたような顔になる。

「君が探偵の江角千穂か。電話とメールでやりとりをしていたから驚いたよ。まさかこんなに可愛らしい方だったとは。横溝香澄が見つかったという報告かな」

「半分正解ですね」

「それは興味深い。ところで君の隣にいる男は誰かね」

「警視庁の刑事さんです。ある事件についてあなたに聞きたいことがあるそうです」

 喜田が頭を下げる。その後で彼は花菱後六に聞く。

「現在集団誘拐事件が発生しています。実は横溝香澄さんが集団誘拐事件の人質の一人であることが判明しました。なぜ誘拐されたのかに心当たりはありませんか」

「分からない。あれは愉快犯の可能性がある。だから横溝香澄が誘拐されたのに理由は必要ない」

「なるほど。犯罪心理学の権威としての意見を聞かせてほしいです。部下の刑事たちに伝えて捜査の参考にします」

 喜田に促され花菱後六がペラペラとプロファイリングを伝える。

「犯人は男。無秩序型で自己顕示欲が強い。典型的な愉快犯。ニュース報道だけの情報でのプロファイリングはこれが限界だね」

「なるほど。参考にします」


 すると喜田の携帯電話に電話がかかってくる。喜田は花菱後六に対して頭を下げてから電話に出る。

『喜田参事官。月影です。こちらは様々なことが分かりました。集団誘拐事件の犯人は霜中凛。覚えているでしょう。十一年前の瀬川左雪殺人未遂事件の犯人です』

 電話から漏れて聞こえてきた名前を聞き花菱後六は顔を曇らせる。

「分かりました。こちらは集団誘拐事件の人質で自称弁護士と名乗る女性の身元が分かりました。名前は横溝香澄さん。二十八歳。縦林法律事務所に勤務する弁護士です。二日前から行方不明。横浜中央大学犯罪心理学部教授の花菱後六が探偵に人探しを依頼しています。現在私は探偵さんに同行して捜査しています。そちらに写真を送ります」

 喜田が電話を切ると、江角千穂は横溝香澄の写真を渡す。喜田は写真を携帯電話のカメラで撮影。その写真をメールとして月影に送る。

 喜田は再度花菱に謝る。

「ごめんなさい。仲間の刑事からの電話でした」

「構わない」

「花菱後六さん。あなたは先ほどの喜田参事官と仲間の刑事との電話の最中に動揺していましたね。もしかして聞き覚えがある名前に反応したのではありませんか。霜中凛さん。瀬川左雪さん。どちらの名前を知っているのでしょうか」

 江角千穂に聞かれた花菱後六は笑いながら答える。

「どちらも知らないな。兎に角犯人は無秩序型で自己顕示欲が強い愉快犯。性別は男。だからあの二人のことを詮索しても時間の無駄」


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